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大腿筋膜張筋とは
大腿筋膜張筋は、上前腸骨棘から腸脛靭帯にかけて走行しており、上殿神経(L4〜S1)に支配されています。
股関節屈曲・外転・内旋に作用し、腰部・骨盤帯・下肢において問題となりやすい代表的な筋になります。
大腿筋膜張筋が過剰に活動することでの弊害としては、大腿骨頭が前方へと引き出されてしまうことです。
これは、股関節の前方つまり感・インピンジメント症状を引き起こす可能性があります。また、付着部の関係から、弾発股や腸脛靭帯炎を引き起こす可能性もあります。
こちらの記事では、股関節の前方つまり感・インピンジメントの評価方法をまとめておりますので、ぜひご参照ください。
大腿筋膜張筋が問題となるケースは多いですが、なぜ大腿筋膜張筋が問題となってしまうのでしょうか…?
それは、腸脛靭帯に付着を有する二関節筋として扱われることが多く、動作の中で使用されてしまいやすい筋であるからです。これにより、股関節・膝関節の固有筋群が機能しなくなってしまうため、各関節周辺での症状が引き起こされると考えられます。
つまり、大腿筋膜張筋が活動することで動作の安定性を補完していることが考えられるため、大腿筋膜張筋そのものが悪い訳ではなく、”活動が過剰になりすぎている”ことや”他の筋機能が低下している”ことに問題があるということです。
”大腿筋膜張筋をストレッチングすれば良い”という話では済まない、ということがお分かりいただけたかと思います。
そこで今回の記事では、『大腿筋膜張筋以外にどの筋を使用するべきか』についてまとめていきます。
大腿筋膜張筋以外にどの筋肉を使用するべきか
では大腿筋膜張筋の活動を抑制するためには、どの筋を使用するべきでしょうか。
寛骨に付着する筋から考えていきたいと思います!
腹筋群
大腿筋膜張筋は上前腸骨棘に付着しているため、寛骨に付着する腹筋群などの影響を受けます。
腹筋群が活動することで寛骨は後傾しますので、大腿筋膜張筋は伸張位になり活動は抑制される位置関係になります。
ここで特に重要なのは、腹横筋・内腹斜筋です。
外腹斜筋や腹直筋はコンタクトスポーツなど強度の高い場面においての活動が重要ですが、普段の生活においては過剰な活動は必要ないでしょう。
その理由として、この2つの筋は体を固めることは得意な筋ですが、『呼吸をしながら柔軟に動けるか?』ということを考えた時は不適切になってしまうからです。
ハムストリング
腹筋群と同様、寛骨を後傾させるためにハムストリングの活動は大切です。
臨床的によく問題となりやすいハムストリングですが、寛骨が前傾している場合は伸張位になっており、適切な収縮機能を果たしていない可能性があります。
そのため、一見筋が短縮しているような評価結果が得られたとしても、実際は伸張位で高緊張状態にある可能性もありますので、無理なストレッチングは良い効果を得られない可能性が高いです。
一度収縮させるようなエクササイズを行い、それによる効果判定をしてみても良いのではないでしょうか。
ただし、ハムストリングは二関節筋になりますので、活動しすぎてしまうのは望ましくはないでしょう。以下の股関節周囲筋も同時に使用すると、より良い筋バランス・動作を行えると考えます。
大殿筋
よく言われるのは、腸脛靭帯に付着を有する大殿筋です。
大腿筋膜張筋は股関節屈曲・外転・内旋の作用を有するのに対し、大殿筋下部線維は股関節伸展・内転・外旋の作用を有しています。そのため、この2つの筋は全く逆の作用(拮抗)になります。
※大殿筋上部線維は、股関節伸展・外転・外旋の作用を有しています。
大殿筋下部線維が活動することで、相反抑制により大腿筋膜張筋の活動を抑制させることができます。
内転筋
大殿筋と同様に、全く逆の作用を有しているのが、大内転筋の後部(下部)線維です。
内転筋なので股関節屈曲・内転・内旋の作用をイメージしている方も多いかと思いますが、大内転筋の付着部が広いこともあり股関節伸展・内転・外旋の作用を有しています。
これも相反抑制を生じさせることで、大腿筋膜張筋の活動を抑制することに繋がります。
中殿筋
先ほどまでは逆の作用を有する筋でしたが、似たような作用を有する筋が活動していないと、動作においては大腿筋膜張筋が動員されやすくなってしまいます。
特に股関節外転・内旋の作用を有する筋として、中殿筋前部線維が重要になります。
中殿筋前部線維を適切に刺激するには、寛骨が前傾しないように腹横筋や内腹斜筋を活動させた上で、股関節内旋の動きを強調すると良いかと思います。
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まとめ
大腿筋膜張筋以外に活動していてほしい筋は以下の5つになります。
- 腹横筋・内腹斜筋
- ハムストリング
- 大殿筋下部線維
- 大内転筋後部線維
- 中殿筋前部線維
いきなり全ての筋を同時に活動させるエクササイズは難しいと思いますので、2〜3つの筋を活性化させるようなエクササイズから徐々に段階を上げていくと良いでしょう。
エクササイズの最終ゴールは立位・片脚立位で行うことです。
非荷重位から始めて収縮感を得られるようになってきたところで、レベルを上げて荷重位するのも良いかと思います。
コメント
[…] 大腿筋膜張筋を抑制するために必要な5つの筋肉の活動大腿筋膜張筋が過緊張・短縮の状態にあると、身体にとって様々な問題が生じることになります。大腿筋膜張筋を抑制させるために […]
身体のことを勉強している大学生です。
こちらのサイトを拝見させていただいていて、いつも参考にさせていただいております。
1点質問があり
大腿筋膜張筋が過剰に活動することでの弊害としては、大腿骨頭が前方へと引き出されてしまうことです。
との記載がありましたが、こちらがどうしてもイメージできません。
文章で可能でしたらご教授いただけると幸いです。
よろしくお願いします。
コメント頂きありがとうございます。また、当サイトを参考にしていただきありがとうございます。
ご質問の「大腿筋膜張筋の過活動による大腿骨頭の前方変位」についてですが、完全に私の説明不足でございます。申し訳ございません。
大腿筋膜張筋が直接的に大腿骨頭を前方へ引き出すというより、大腿筋膜張筋の機能不全により他部位の影響が生じて前方へ変位すると考えております。この間の部分を端折って記載してしまいました。
解剖学から考えると、股関節後方には多くの筋が存在していますが、前方を横・斜方向に走行する筋は存在しないため、大腿骨頭はどちらかと言えば前方へ変位しやすいことが考えられます。
骨運動・関節運動を考えます。
大腿骨頭が前方変位する、つまり関節包内において大腿骨頭が前方滑りしているということになりますが、これは股関節伸展や股関節中間位での股関節外旋動作で生じる動きになります。
臨床上よくある例として、股関節屈曲時の前方つまり感・疼痛(股関節前方インピンジメント)があります。股関節屈曲動作の理想は、股関節の関節包内では大腿骨頭が後方滑りすることで、大腿骨が屈曲方向に動く際も臼蓋に衝突せず動きが遂行されることです。しかし、病態や評価を行っていると、大腿骨頭が前方に変位しており、後方滑りが行えていないことが多く見受けられます。
寛骨前傾・大腿骨内旋しており大腿筋膜張筋が短縮位で過活動している場合、股関節屈曲に伴い股関節内旋が生じますが、この時、外旋筋は伸張位になるため筋出力が低下する肢位となります。特に、深層外旋六筋や中殿筋後部線維、大殿筋は、大腿骨頭を求心位で安定させる機能を有していますので(筋線維の走行から考えて)、これらの恩恵を受けることは難しくなります。大腿骨頭を後方へ引き込む作用が得られませんので、結果的に前方へ変位してしまうと考えられます。
寛骨後傾・大腿骨外旋しており大腿筋膜張筋が伸張位で過活動している場合、伸展・外旋筋は短縮位で緊張している可能性があります。股関節後方組織の短縮が生じると、大腿骨頭が後方へ滑る動きが起こりにくくなり、相対的に大腿骨頭が前方へ押し出されてしまうことが考えられます。
後方組織の影響だけではなく、前方組織の影響もあります。股関節屈曲の単関節筋だと腸骨筋がありますが、この筋の適切な機能は大腿骨が前方変位しないよう押さえつける作用を有していると考えられます。肩関節でいうと三角筋と棘上筋の関係をイメージしていただけると分かりやすいかもしれません。
この他にも寛骨前傾・大腿骨外旋や、寛骨後傾・大腿骨内旋のパターンも考えられますので、これに関しては今後記事にまとめて投稿していきたいと考えております。
これまでの内容でいかがでしょうか。
分かりにくい部分、理解し難い部分がありましたら、追加でご質問ください。
このような質問を頂けて非常に嬉しいので、今後もご指摘頂けますと幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。