ハムストリングの肉離れの症例:3ヶ月以上持続する大腿後面の痛み・違和感

介入方法

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症例

今回は、ハムストリングの損傷後1ヶ月間介入し、その後に2ヶ月の間隔が空いたところで再度介入させていただいた症例をご紹介します。

個人が特定される内容は控えさせていただきますので、症状とその介入による結果のみの掲載となります。

症状をまとめていきます。

症状

  • 歩行時の大腿後面の違和感・ツッパリ感
  • 前屈時の異様なツッパリ感
  • 運動後の大腿後面の疼痛

受傷は、前かがみの姿勢で重たいものを持ち上げたことがきっかけとなっています。

評価

受傷3ヶ月後の評価結果をまとめていきます。

評価

  • 歩行:患側の立脚後期における患側への骨盤回旋代償
  • 片脚立位:不安定性↑(特に外側への動揺)
  • ASLR:健側70 / 患側60
  • 股関節屈曲:100 / 100
  • 股関節内外旋は特に問題なし
  • 患側の腓腹筋・ハムストリング・腰部起立筋の過緊張

損傷後1ヶ月の介入では、ハムストリング(特に半腱様筋)の筋硬結は改善され、ASLRや前屈の可動性は一時的に改善されていました。しかし、その後も日常的に大腿後面に違和感・痛みは継続していたということです。

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考察

損傷後1ヶ月の介入で筋硬結は改善されていましたので、2ヶ月が経過して再度硬くなっているということはありませんでした。しかし、ハムストリングの筋緊張は高く、健側と比較しても緊張している状態でした。

損傷後3ヶ月が経過しているため、ハムストリング自体の問題はほとんど改善されていると考えられます。
これを踏まえると、評価結果では筋緊張が高く可動性の制限もありましたが、ハムストリング以外の要素を考える必要性が高いと考えられます。

そこでまず、腓腹筋・腰部起立筋に着目しました。
腓腹筋・腰部起立筋はハムストリングとの連結を有しており、Posterior Chain(ポステリオールチェイン)として機能しています。

Posterior Chainは、腰部・殿部・大腿後面・下腿後面の筋を含む一連の筋連鎖のことです。スポーツ活動などにおいては、これらの内1つの筋だけが発火するのでは不十分であり、鎖のように連なって力発揮をする必要があります。

特に今回の受傷機転となった『前屈姿勢での重たいものを持ち上げる動作』では、このPosterior Chainの関与が非常に大きいことが考えられると思います。

腓腹筋の緊張が高くなると、それに伴いハムストリングの緊張も高くなります。また、腰部起立筋の緊張も高くなることが考えられます。つまり、腓腹筋や腰部起立筋の緊張を緩和させてあげることで、ハムストリングの緊張も緩和することが期待できます。

また、このPosterior Chainの機能を改善するためには、”デッドリフト”のようなClose Kinetic Chainのトレーニングが有効になります。

違う視点で考えると、骨盤のコントロールの問題が考えられます。骨盤前傾の動作が適切に行えず骨盤が後傾してしまうと、腰部の筋緊張は高くなります。
また、重心位置は後方に位置するため、歩行などにおいて重心を前方に移動させるための推進力を生み出すために腓腹筋を過剰に使用することも考えられます。

介入

先ほどの考察をもとに、今回の症例に対する介入のポイントをまとめていきます。

介入

  • 腓腹筋・腰部起立筋の緊張を緩和させるアプローチ
  • 骨盤前傾動作の練習

ハムストリングへの軟部組織アプローチは行わなくとも、腓腹筋・腰部起立筋への介入で症状はほぼ消失されました。
ASLRや前屈の可動性も改善され、片脚立位の安定性も向上しました。

可動性が改善されたところで、症状の持続的な改善と動作の修正を目的に骨盤の前傾動作のトレーニングを行ってもらいました。

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まとめ

ハムストリングの損傷は、プロ・アマ問わず運動・スポーツをされる方では多い疾患です。

どのように受傷したかにもよりますが、多くは損傷しやすい動作を日常的に行なっている可能性があります。
また、怪我をしたことによって、ハムストリングが直接関与する股関節・膝関節・骨盤だけではなく、脳・神経系の変化が生じることで身体全体の動作に影響することが考えられます。

怪我をする前と比較し、怪我をした後では、何かしら動作に変化が生じてしまいます。怪我をした部分だけではなくその他の部位にも生じてしまう代償動作を見つけ、その動作を良い方向へ促す必要があります。

これは、怪我をした当の本人では気付きにくい部分であるため、専門家がしっかりサポートをしていく必要があります!

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