Scapula Dyskinesia:肩関節と肩甲骨に対する介入方法

介入方法

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Scapula Dyskinesia

『肩甲骨の運動異常=Scapula Dyskinesia(スキャプラ ジスキネジア)』とはなにか?を論文を元にご紹介します。

今回が第4弾となりますが、特に肩関節周囲の疼痛に対して肩甲骨の運動異常(Scapula Dyskinesia)に対する介入の手順をご紹介していきます。特に肩関節・肩甲骨に着目した内容となっています。

一般的に、「肩甲骨の動きが悪い」「肩甲骨が硬い」と言われる、思い込んでいるという方は多いかと思いますが、本当にそうなのでしょうか?今一度、肩甲骨について考える良い機会になればと思っています!

こちらの記事でそれぞれ、”①肩甲骨の解剖学と運動学・機能””②肩関節・頸部・姿勢と肩甲骨の関連””③Scapula Dyskinesiaの評価方法”をご紹介していますので併せてご参照ください!

こちらが参考文献になりますので、ぜひご興味ある方はこちらの記事をご覧ください!
Scapula dyskinesia, the forgotten culprit of shoulder pain and how to rehabilitate:Andreas Christos Panagiotopoulos, Ian Martyn Crowther, SICOT-J, 2019

Scapula Dyskinesisへの介入

肩甲骨への介入は、それぞれの患者の機能的なニーズと、肩や首などの隣接する構造の同時的な欠点に対処するための、肩関節複合体に対するプログラムであることが重要です。構造的損傷の外科的修復後の調整、または患者の症状管理に対するアプローチになります。

介入における主な目標は、頸椎・胸椎・肩関節からまでの様々なレベルにおける、運動連鎖の改善となります。評価において腰椎・股関節の問題が見つかれば、そこに対しても介入する必要があります。

臨床的評価は、scapular dyskinesiaが軟部組織モビリティの問題か、あるいは筋活動の問題(モーターコントロール)かを特定する必要があります。
評価方法に関しては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
→Scapula Dyskinesiaの評価方法

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モビリティの問題に対する介入

モビリティ(可動性)の不足に対する主な治療法は、影響を受けている構造をストレッチングすることです。

胸筋群のストレッチングは、安静肢位から肩関節90°他動外転位にて行いのがオススメされ、セルフでは『壁の角などを使ったストレッチング』が有効だと考えられます。
また、胸椎・胸郭として複合的にストレッチングする必要もありますので、側臥位での『windmill stretch』も有効です。

肩甲上腕関節の後方関節包は、『All-fours Posterior Stretch(APS)』や『cross body stretch』のようなストレッチングオススメです。『Sleeper Stretch』は有名ですが、肩関節に加わるストレスが大きいのと、先述2つのストレッチよりも可動性の改善度合いは低いとされているため、個人的にはオススメしていません。

筋活動パターンに対する介入

筋活動パターンに対する介入の3段階を順番にご紹介していきます。

3 step

  1. 自発的な意識制御
  2. 日常生活での強化と制御
  3. 運動能力の制御

これらの中で特に関与する筋は、前鋸筋と上中下の僧帽筋になります。

上記のようなプログラムの平均規定期間は、研究によると12週間で満足のいく機能的結果が得られると考えられています。バレーボール選手のなどのニーズの高い特定のグループにおいては、約3ヶ月の長いプログラムを受ける必要がある可能性があります。

自発的な意識制御

肩甲骨周囲筋組織は、正しい活動パターンへ修正するために再教育する必要があります。僧帽筋下部は、他の四肢からの触覚フィードバックのもとで筋の目標とされた再教育を促進する “肩甲骨の特定方向へのエクササイズ” で改善することが期待できます。研究においては、筋の意識的なトレーニングにより運動連鎖が明確に改善することが示されていますが、結果は逆転する可能性があります。

また、筋のリハビリテーションに加えて、周囲の構造が関与する必要があります。特に、脊柱の安静肢位に対処する必要があります。患者は、様々なレベルで脊柱の彎曲を重要視し、いかにニュートラルな脊柱の位置を維持するかの指導を受ける必要があります。このトレーニングは腰椎から始め、次に胸椎、最後に頸椎と続けていくと良いでしょう。効果としては、ニュートラルな脊柱の肢位を維持するための傍脊柱安定化筋を再教育させることにあります。

日常生活での強化と制御

この段階の主なコンセプトは、日常生活で行うための筋の同時活性化です。この処方は、“open-chain”と”closed-chain” 両方の活動を含めた方が良いでしょう。エクササイズは、異なる体重負荷条件のもとで繰り返し行うと良いでしょう。

“open-chain”では、菱形筋を再教育させる『low row』『inferior glide』『lawn mower』や『robbery』のエクササイズが含まれます。

“closed-chain”では、空間における関節の認識(固有受容感覚)と回旋筋腱板の強調を促進することを目的とします。また、筋力の強化は、強い筋の活動を最小限に抑えながら、不足している筋を再教育することで達成できます。しかし、これには正確な評価が必要になってくると考えられます。

運動能力の制御

スポーツと個人の機能的なニーズに応じて、筋力強化エクササイズの詳細な処方は、『scapular control(肩甲骨のコントロール)』『task specific muscle strength(課題特異的な筋力)』の原則を遵守する必要があります。

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まとめ

まずは、モビリティを獲得することから始めると良いと考えられます。その上で、”獲得されたモビリティを使いこなす”ようにモーターコントロールエクササイズをしていくのが良いのではないでしょうか。

どこかのモーターコントロールが適切に機能していない場合、その代償としてモビリティを生成できない可能性もありますので、これはエクササイズを進めていく中での治療的評価をしていく必要があると考えています。

介入の流れとしては、まず最初に足りない部分の筋収縮を促すことが多いですが、個人的には『動作の中で力を抜いてもらう』ことも非常に重要なポイントと考えています。その上で、筋を鍛えていくことと、動作を改善していくことの両方をうまく織り交ぜる臨床展開をしていけるよう常に心がけています。

参考文献

  1. Scapula dyskinesia, the forgotten culprit of shoulder pain and how to rehabilitate:Andreas Christos Panagiotopoulos, Ian Martyn Crowther, SICOT-J, 2019
  2. 投球障害肩における肩関節2nd内旋制限に対するセルフストレッチ方法の比較:川井 謙太朗, 舟崎 裕記, 林 大輝, 加藤 晴康, 沼澤 秀雄, 理学療法科学 31(1):13–17,2016

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