肩峰下インピンジメントに対する評価方法:3つのスペシャルテスト

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肩峰下インピンジメントの評価

肩峰下インピンジメントは、肩関節の病態の中でも臨床で出会う機会が多いと感じます。

特に誘引なく肩関節の症状を訴える場合は、インピンジメントが生じていると考えられます。

しかし、『インピンジメントに対してどのように評価して良いのか分からない』『肩の側面を痛がっているし…なんとなくインピンジメントかな?』と捉えていることが多いのではないでしょうか?

適切な評価をしていれば自信を持って病態説明・介入することができますし、何よりも症状が改善するまでの経過に大きく影響してきます。

そこで、スペシャルテストを用いたスクリーニング検査を行い、適切な病態把握・介入を行えるようにしていく必要があります。

今回の記事では、様々なスペシャルテストを複合的に考慮し、最も信頼性のあるスペシャルテストの組み合わせをご紹介していきます。

感度・特異度・尤度比

肩峰下インピンジメントに対する評価方法は多く存在していますが、それぞれのテスト単独では感度・特異度・尤度比が低く出てしまうため、複数のテストを組み合わせることがオススメされます。

以下の表は、感度(Sensitivity)・特異度(Specificity)・尤度比(Likelihood Ratio:LR)のまとめになります。
※LR+:陽性尤度比 / LR-:陰性尤度比

Sensitivity Specificity LR+ LR-
Hawkins or Neer or Painful Arc or Subacromial Crepitus 84 76 3.5 0.21
At Least 3 of 6:
Hawkins, Neer, Horizontal Abduction, Speed, Yargason, Painful Arc, Drop Arm
84 44 1.5 0.36
Hawkins-Kennedy Test
Painful Arc Test
Infraspinatus Test
NT NT 10.56 0.17
3 or More Positive of:
Hawkins, Neer, Painful Arc, Empty Can, ER Weakness
75 44 2.93 0.34

陽性尤度比・陰性尤度比の値に着目した時に最も良い値が示されるのは、Hawkins-Kennedy Test・Painful Arc Test・Infraspinatus Testを組み合わせた評価になります

上記の他の結果から言えることは、数多くのテストを行いそれらが陽性だったとしても、肩峰下インピンジメントである可能性は高くないということです。つまり、ただ闇雲にいろんな評価しても、良い結果が得られないということです。

また、一番上の項目においては、Subacromial Crepitus(肩峰下の捻発音:関節雑音)も評価に含まれているのは面白いと思います。陽性尤度比は3.5と、一応3以上なので使える評価になります。
肩甲上腕関節での変形・OAが無い場合でも関節雑音が生じることがありますので、これも考慮していく必要性がありそうです。

ではそれぞれの評価方法を解説していきます。

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Hawkins-Kennedy Test

Hawkins-Kennedy Testは、一般的に肩峰下インピンジメントの可能性を特定するのに用いられます。

テスト方法

  1. 座位or立位にて肩関節屈曲90°・肘関節屈曲90°の位置をセラピストが保持します
  2. 他動的に肩関節内旋を加えます
  3. 内旋により疼痛が生じる場合は陽性です

肩関節屈曲90°に達しない場合、評価を行えないということになりますので、肩峰下インピンジメントではなく肩関節拘縮の疑いが高くなります。

このテスト単独での感度・特異度の研究結果は大きく異なり、信頼性は高くありませんので、以下の評価と組み合わせて使用しましょう。

Painful Arc Test

Painful Arc Testも、一般的に肩峰下インピンジメントの可能性を特定するのに用いられます。

このテストでは、肩関節よりも手が遠い位置に達するタイミングで疼痛を誘発する可能性があります。それは、モーメントアームが長くなるため、肩関節の周囲組織に加わる負荷が強くなるためだと考えられます。

患者さんにActiveで行ってもらうテストなので、簡便に用いることができます。

テスト方法

  1. 座位or立位にて肩関節外転を肩甲骨面上で行うよう指示します
  2. 外転している間に、関節内およびその周辺で疼痛が生じた場合はセラピストに伝えてもらいます
  3. 外転120°以上で疼痛が減少していく場合は陽性です
  4. 外転動作終了後、内転してもらい元の位置に戻します
  5. 動作途中から疼痛が生じる場合も陽性です

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Infraspinatus Test

Infraspinatus Testは、特に棘下筋に対する評価になります。

腱板損傷が存在する場合、動作中に痛みや筋出力の低下(脱力感)が確認されます。

テスト方法

  1. 座位or立位にて上肢下垂位にて肘関節を90°屈曲させます
  2. 肩関節外旋方向に動かすよう指示します
  3. セラピストは内旋方向に徒手抵抗を加えます
  4. 疼痛や脱力感が確認される場合は陽性です

いきなり抵抗を加えて評価するよりも、まずはActiveで行ってもらうことで可動範囲を確認し、その後に抵抗を加えて評価する方が、患者さんにも安心感を与えられるためオススメです。

まとめ

”Hawkins-Kennedy Test”・”Painfu Arc Test”・”Infraspinatus Test”は、肩峰下インピンジメントに対する評価だけではなく、腱板損傷に対する評価としても用いられます。

これらの評価に加えて”Drop Arm Test”を行うことで、肩峰下インピンジメントと腱板損傷に対するスクリーニングを行うことができます。比較的簡単に行えるため、臨床的に導入しやすいでしょう。

また、この3つ以外の他のテストに意味がないという訳ではありません。まず最初に評価するものとして3つを使用していただき、陽性であった場合に他のテストを行うことで、より適切な評価を行えるのではないかと考えます。

無駄なテストを行うことがなくなるため、セラピストの評価時間を短縮すること、そして何よりも患者・クライアントの身体的・心理的負担を軽減することにもつながります。

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参考文献

  1. Physical examination tests of the shoulder:a systematic review and meta-analysis of diagnostic test performance:Gismervik et al. BMC Musculoskeletal Disorders 2017
  2. Combining orthopedic special tests to improve diagnosis of shoulder pathology:Eric J. Hegedus, Chad Cook, Physical Therapy in Sport16, 2015
  3. Orthopedic Physical Examination Tests: Pearson New International Edition: An Evidence-Based Approach: Chad E. CooK, Eric Hegedus, 2013

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