胸郭回旋動作を改善するために考慮するべきポイント

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胸郭の回旋

胸郭の回旋動作は、日常生活レベルでもスポーツ・競技レベルでもあらゆる動きの中で必要不可欠なものとなります。身体機能を最大限高めるためには必須の動きと考えて良いでしょう。

あぐらで体幹回旋する女性

胸郭の動きの問題が生じている場合、それは腰椎や頸椎の機能不全肩甲骨・肩関節の機能不全呼吸の機能不全など、様々な身体機能に影響を及ぼすことが考えられます。そのため、胸郭の機能を改善・向上させることは、身体の痛みや機能障害を改善することに繋がります。

胸郭を回旋させる動作は、単に軸回旋をさせるというよりも、屈曲・伸展や側屈運動などの組み合わせによって行われることが多いのではないでしょうか。
おそらくこの記事を読んでくださっている方も、患者・クライアントさんに紹介している胸郭回旋エクササイズをいろんな回旋の方法で案内していることと思います。

「いや、普通に胸郭を回旋させているだけですが…」という方でも、その回旋が屈曲側に比重を置いているのか、それとも伸展側に比重を置いているのか、動作で見ると意外と差があったりします。ただ単に、その違いに着目していないだけでしょう。
この記事を読んだ後には、エクササイズを提供する際に少し違った捉え方ができるかもしれません。

今回の記事では、胸郭の回旋運動を“屈曲・回旋運動”“伸展・回旋運動”に分けて話をまとめていきます。

各関節運動のまとめ

胸郭運動の際の、胸椎椎間関節や肋骨の動きを復習しましょう。

胸郭・頸部の骨模型

胸郭屈曲の場合、下位椎体に対して上位椎体が屈曲し、胸椎椎間関節は両側とも前上方滑り、肋骨は内旋・前方回旋していきます。反対に伸展の場合は、下位椎体に対して上位椎体が伸展し、胸椎椎間関節は両側とも後下方滑り、肋骨は外旋・後方回旋していきます。

屈曲動作
・下位椎体に対する上位椎体の屈曲
・両側椎間関節の前上方滑り
・両側肋骨の内旋・前方回旋
伸展動作
・下位椎体に対する上位椎体の伸展
・両側椎間関節の後下方滑り
・両側肋骨の外旋・後方回旋

胸郭右回旋の場合、下位椎体に対して上位椎体が右回旋し、胸椎椎間関節の左側においては前上方滑り、右側においては後下方滑りが生じています。この時、左側の肋骨は内旋・前方回旋、右側の肋骨は外旋・後方回旋の動きが起こります。

回旋動作
・下位椎体に対する上位椎体の回旋
・同側椎間関節の後下方滑り
・対側椎間関節の前上方滑り
・同側肋骨の内旋・前方回旋
・対側肋骨の外旋・後方回旋

胸郭屈曲・回旋運動と胸郭伸展・回旋運動は、これらの組み合わせによるものと考えていただけると良いでしょう。

胸郭の運動についての詳細は、こちらの記事をご参照ください。

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胸郭の屈曲・回旋

胸郭の屈曲・回旋動作は、胸郭を屈曲側に動かした状態での回旋運動になります。

胸椎椎間関節を開き、肋椎関節・肋横突関節も開き、胸郭後面が拡張するような動作になります。関節が開くということは、関節包・靭帯による制限が少なく、関節の動きを引き出しやすい状態にあります。そのため、純粋な胸郭回旋運動に制限が生じている場合だと、屈曲・回旋の動作を練習していただくことが推奨されます。

下記の写真のように、胸郭を屈曲側に動かしながら片側の回旋動作を実施することとなります。

胸郭屈曲・回旋動作

筋肉を活動させて動かすというよりも、身体の過剰な緊張を抑制させたり、柔軟性を高めたりする動作と捉えて良いかもしれません。

特に胸郭後面の筋の過剰な緊張は、胸椎を伸展させたり肋骨を外旋・後方回旋させるため、関節が閉まる方向へ誘導され、胸郭の可動性を制限させます。そのため、後面の筋の過剰な緊張を生じさせにくい関節位置へ身体を動かす、いわゆる胸郭の屈曲・回旋の位置へと身体を動かしていくことが必要だと考えています。

胸郭の伸展・回旋

胸郭の伸展・回旋動作は、胸郭を伸展側に動かした状態での回旋運動になります。

胸椎椎間関節は閉まり、肋椎関節・肋横突関節も閉まり、胸郭前面が拡張するような動作になります。関節が閉まるということは、関節包・靭帯の緊張が増し、それによる制限を受けやすい状態にあります。そのため、関節周囲の軟部組織の制限が生じている場合に胸郭伸展・回旋動作を行ったとしても、関節の動きを広げることは難しいかもしれません。

単に椎間関節・肋骨の滑り運動に制限が生じている場合や、柔軟性はあってもその可動範囲を自分の力で制御できない(モーターコントロール機能不全)場合であれば、伸展・回旋動作を練習することで、胸郭の機能を高めることが可能だと考えられます。

下記の写真のように、胸郭を伸展側に動かしながら片側の回旋動作を実施することとなります。

屈曲・回旋動作と違って、適切な筋肉の活動を引き出せなければ動作を遂行することが難しく、そもそも最低限の柔軟性がなければ動作を遂行することはできません。

身体の過度な緊張を高めてしまうことや、現在の代償的動作パターンを強めてしまう危険性があることは念頭に置いた方が良いでしょう。

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エクササイズの順序

胸郭の屈曲・回旋動作と伸展・回旋動作を踏まえて、どのようにエクササイズの順序を考えていくか(エクササイズ・プログレッションしていくか)がとても大切です。

ここまで読んでくださった方は何となくイメージできるかもしれませんが、私の考えとしては『まず屈曲・回旋動作の機能を高め、その上で伸展・回旋動作の機能を高める。』ということです。

ワールド・グレイテスト・ストレッチ

屈曲・回旋の機能が担保されていなければ、そもそも胸郭を動かせる範囲が制限されている可能性があるためです。屈曲・回旋動作によって、胸郭後面の筋の過剰な緊張を抑制し、胸郭後面の各関節が開いた位置にしていき、胸郭の柔軟性を広げていくことが必要です。

反対に、胸郭の可動性が制限されている場合に、胸郭伸展・回旋動作を行っても胸郭の柔軟性を高めることは難しいと考えています。胸郭後面の関節は閉まる方向に動いていくため、そもそも制限があっては閉まっているものをさらに閉めようと動かしても動くわけがないのです。

ただし、胸郭後面の関節の動きには問題がなく、後面の筋の過剰な緊張がなかった場合、胸郭の可動性の制限は胸郭前面による影響が考えられます。これに関しては、胸郭伸展・回旋動作を練習していくことで、胸郭の柔軟性を高めることができると考えています。

そして、それでも胸郭の可動性に制限がある場合、それは胸郭を回旋させる腹部や背部の筋の発火・タイミングなどのインバランスが生じている(いわゆるモーターコントロール機能不全)であると考えられるため、それらの筋が関与する関節(腰椎・骨盤帯や頸部など)を評価して介入していく必要があると考えています。

補足
・柔軟性:筋肉や関節の伸張性・動きの可動範囲全体(他動運動な可動範囲)
・可動性:身体部位を制御して動かせる範囲(自動運動の可動範囲)
※柔軟性が高くてもその可動範囲全てを制御して動かせる(可動性を有している)とは限りません。

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