胸椎と肋骨の動き・バイオメカニクス

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胸郭

ヒトは常に呼吸をしています。

息を吸うと空気が体内に取り込まれて肺が膨らみ、息を吐くと空気が体内から出ていくため肺が萎みます。肺は肋骨に覆われており、呼吸の度に肋骨の動きが生じています。

上位胸郭はポンプハンドルモーション、下位胸郭はバケットハンドルモーションとそれぞれ動き方が違ってきます。これに関しては、ご存知の方が多いと思います。

胸郭を下から見た写真

肋骨は後面では胸椎と関節を構成し、前面では胸骨と関節を構成します。
肋骨・胸椎・胸骨を複合して胸郭としますが、呼吸に併せて胸郭は動いています。そして、身体の活動において屈曲・伸展・回旋・側屈と3次元的に動いてくれるため、非常に大切な部分でもあります。

今回の記事では、胸郭における胸椎と肋骨のバイオメカニクスを解説していきます。

胸椎の動き

胸椎の動きを理解していないと肋骨の動きを理解しにくいため、まずは胸椎の動きから解説していきます。

ここでは、骨運動と関節運動に分けてまとめていきます。
骨運動と関節運動の違いをざっくりいうと、骨運動は骨自体の動き、関節運動はその時の関節面の動きになります。

胸椎椎間関節のイラスト

上位椎体の下関節突起と下位椎体の上関節突起により椎間関節が構成されており、両方の関節面では滑りの動きが生じます。

屈曲・伸展・回旋・側屈に分けてそれぞれまとめていきます。

屈曲

屈曲時の骨運動は、上位椎体は下位椎体に対して屈曲し、この時わずかに前方に滑ります。

関節運動は、上位椎体の下関節突起が上方、わずかに前方に滑ります。

基本的には全てのセグメントで動きが生じますが、上位・下位によって動きの量に差が生じる可能性があります。特に上位では動きの量が少なく、下位の方が大きい特徴があります。

伸展

伸展時の骨運動は、上位椎体は下位椎体に対して伸展し、この時わずかに後方に滑ります。

関節運動は、上位椎体の下関節突起が下方、わずかに後方に滑ります。

基本的には全てのセグメントで動きが生じますが、上位・下位によって動きの量に差が生じる可能性があります。特に上位では動きの量が少なく、下位の方が大きい特徴があります。

回旋

回旋時の骨運動は、上位椎体は下位椎体に対して回旋し、椎間関節のカップリングモーションとして同側側屈を伴います。

この時、上位椎体が下位椎体に対して回旋とは反対方向へ側方変位します。
※例:右回旋では右側屈が生じ、左へ側方変位します

右回旋時の関節運動は、上位椎体の右下関節突起は下方わずかに後方へ滑り、左下関節突起は上方わずかに前方へ滑ります。

ただし、上位・下位によって動きの量に差が生じる可能性があります。回旋では上位では動きが大きく下位では少ないという特徴があります。関節運動学に伴う前後方への滑りは、前額面のFacetの傾斜量、方向、対称性に依存すると考えられているため、個人差が生じる部分になります。

側屈

側屈時の骨運動は、上位椎体は下位椎体に対して側屈、椎間関節のカップリングモーションとして同側回旋を伴います。

この時、上位椎体が下位椎体に対して側屈とは反対方向へ側方変位します。
※例:右側屈では右回旋が生じ、左へ側方変位します

右側屈時の関節運動は、上位椎体の右下関節突起は下方わずかに後方へ滑り、左下関節突起は上方わずかに前方へ滑ります。

ただし、上位・下位によって動きの量に差が生じる可能性があります。側屈では上位が少なく下位では大きいという特徴があります。関節運動学に伴う前後方への滑りは、前額面のFacetの傾斜量、方向、対称性に依存すると考えられているため、個人差が生じる部分になります。

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肋骨の動き

胸椎のバイオメカニクスを理解したところで、それに付随する肋骨の動きをまとめていきます。

肋骨の動きを『内旋=前方回旋』・『外旋=後方回旋』としています。

肋骨が内旋している場合は肋椎関節・肋横突関節の周囲の軟部組織の緊張は緩和するため肋骨・胸椎の可動性が増大し、肋骨が外旋している場合は周囲の軟部組織の緊張が増大し、関節面においてはしまりの肢位となるため可動性が制限されます。

屈曲

胸椎の屈曲に伴い、肋骨は内旋します。

この時、肋椎関節は開くので肋骨・胸椎の可動性は大きくなります。肋横突関節では、肋骨の内旋に伴い肋骨が内旋し上方へ滑ります。

伸展

胸椎の伸展に伴い、肋骨は外旋します。

この時、肋椎関節は閉まるので肋骨・胸椎の可動性は制限されます。肋横突関節では、肋骨の外旋に伴い肋骨が外旋し下方へ滑ります。

回旋

回旋の動きでは、回旋側の肋骨は外旋、反対側の肋骨は内旋します。

※例:右回旋では右肋骨が外旋、左肋骨が内旋します。

右回旋の時、肋横突関節では右肋骨が外旋し下方へ滑り、左肋骨が内旋し上方へ滑ります。

つまり、回旋側の肋骨の可動性は制限されることになります。

側屈

側屈の動きでは、側屈側の肋骨は内旋、反対側の肋骨は外旋します。

※例:右側屈では右肋骨が内旋、左肋骨が外旋します。

つまり、側屈と反対側の肋骨の可動性は制限されることになります。

まとめ

胸椎・肋骨のバイオメカニクスのまとめになります。

屈曲動作では、上位椎体の下関節突起が上方・前方に滑り、肋骨は内旋していきます。
伸展動作では、上位椎体の下関節突起が下方・後方に滑り、肋骨は外旋していきます。
右回旋動作では、上位椎体の右下関節突起は下方・後方へ滑り、左下関節突起は上方・前方へ滑ります。胸椎は右側屈と左側方変位の動きを伴います。右肋骨は外旋し、左肋骨は内旋します。
右側屈動作では、上位椎体の右下関節突起は下方・後方へ滑り、左下関節突起は上方・前方へ滑ります。胸椎は右回旋と左側方変位の動きを伴います。右肋骨は内旋し、左肋骨は外旋します。

少しややこしい部分が、回旋と側屈になります。胸椎椎間関節においてはカップリングモーションのために回旋と側屈が同方向に行われますが、肋骨の動きには違いが生じます。

これらを考慮して、呼吸に伴う肋骨の動きや肋骨のスプリングテスト、胸郭の運動における胸椎の動きや肋骨の動きの評価を行っていくと良いのではないでしょうか。

上記のことを踏まえると、例えば胸郭の左回旋に制限が生じている場合、「胸椎椎間関節における滑り運動が適切に行えるのか?」、「そもそも肋骨が外旋しているために動きが適切に行えないのか?」というようにより詳しい評価を行うことが可能になります。

また、呼吸の評価においても、「しっかり吸えるのか?」「最後まで吐き切れているのか?」ということにも注意すると、視点が広がるのではないでしょうか。

胸郭前面の評価方法に関しては、こちらの記事をご参照ください。

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