症状のある場所が原因の場所とは限らない理由

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症状の場所≠原因の場所

痛みや痺れなどの症状がある場合、症状の場所に問題があると考えてしまいがちですが、実際にはそうではない可能性があります。

首を押さえる女性

筋肉や関節、神経の問題によってそれぞれ変わってくる部分であるため、必ずしもそうであるとは言い切るわけではありません。しかし、外傷や怪我が起因となっている場合を除いては、ほとんどが症状の場所に原因はないと考えられます。そのように考えられる理由としては、症状を感じている部分の問題が、どこか他の部分に問題があることに起因していることです。

つまり、症状の場所は被害を受けている場所(=被害者)ということです。
被害を受けている場所があるということは、被害を加えている場所(=加害者)があるということになります。

痛みのある部分ばかりを検査して調べて、マッサージやストレッチなどの治療やエクササイズ・トレーニングをしたところで、“被害を加えている場所”が存在する限り症状は繰り返されてしまいます。何が言いたいかというと、被害者をなだめるだけの治療はその場凌ぎでしかないため、問題を引き起こしている加害者側の問題を解決する必要があるということです。

ただし、『加害者だと考えて取り組んでいても症状があまり変わらない』なんてこともあります。このような場合、“実はそこも被害者だった”なんてことも考えられるため、もう一度全身を総合的に診ていく、あるいは診てもらう必要があります。

上記で述べている内容で問題点を炙り出すには、姿勢や動作(身体の動かし方)を診ていく必要があります。もし動かない状態で症状が出ていたとしたら“姿勢の影響”、身体を動かした時に症状が出ているのであれば“動作の影響”を考えていくべきでしょう。さらに言えば、姿勢と動作は相互的に関係しているため、両方を確認していくべきだと考えております。

症状が長期化した場合

姿勢や動作などの問題が長期的に持続された結果、関節の変形や筋力バランスの低下を引き起こしてしまい、その結果として痛みが生じる場合があります。

膝関節の骨模型

関節の変形が問題となって痛みが生じている場合は、現状ではその関節が原因であると考えられます。しかし、症状を感じ始める前のことを踏まえて考えると、その関節は身体のどこかの部位に問題があった結果として変形してしまっているため、上記と同様に被害者側であると考えることができます。

変形は手術をすれば改善されますが、筋力バランスの低下や身体の動かし方の問題などを改善しなければ、数年後〜数十年後には違った形で症状が発生してしまう可能性が高いでしょう。

椅子に座る人が腰を押さえている様子の写真

筋力バランスについてもう少し掘り下げて解説致します。
症状が長期化してしまった場合、姿勢や動作を庇ってしまうことも多くなる為、使用する筋肉が偏っていきます。この場合、使うことが得意な筋肉と、ほとんど使わなくなってしまった筋肉が共存することになります。関節を安定させたり身体を動かすことにおいては、筋肉をバランスよく使うことが必要となってくるため、この問題は非常に大きくなってしまいます。

これには左右の関係も伴います。例えば左膝が痛くて右に重心を移して動いていれば、右側は常に頑張った状態になり、右側の中でも使う筋肉と使わない筋肉のバランスが悪くなってしまう為、右側に症状が発生してしまうことでしょう。

さらに言えば、良く使う筋肉・使わない筋肉のタイプ(速筋・遅筋のタイプ)も変わってきます。もっと言えば、神経の伝達も、良く使う方には良く伝達されるようになるでしょう。こうなると、全身のバランスは悪くなっていく一方であり、身体のあちこちで痛みが生じることになってしまいます。この悪循環を、どこかで一度断ち切る必要があることは言うまでもないでしょう。

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まとめ

今回の記事では、症状を感じている部分には特に問題がなく、症状を引き起こしてしまう別の場所(いわゆる原因となる場所)が存在することをまとめました。

身体の各部位はそれぞれ相互的に関与しているため、症状は単なる“結果”であり、症状の“原因”となる部位があることになります。

膝に症状があれば、股関節や足関節が原因となっている可能性がありますし、腰に症状があれば、胸郭(胸・肩周り)や股関節が原因となっている可能性があります。

“身体は良くできている”ので、1つの部位だけで話が完結するわけではないことには注意していきましょう。

上記の話が興味深いと感じていただけた方は、こちらの記事も併せてご参照いただけますと幸いです。

参考文献

Derrick G Sueki, Joshua A Cleland, and Robert S Wainner, A regional interdependence model of musculoskeletal dysfunction: research, mechanisms, and clinical implications, J Man Manip Ther. 2013 May; 21(2): 90–102.

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