筋肉を鍛える必要はあるのか?動作を鍛える重要性とは?

介入方法

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整形外科の臨床現場で良く出会う場面

整形外科で医師やリハビリテーション専門職の方々が、膝関節が変形している患者さんに対して「太ももの筋肉・大腿四頭筋を鍛えましょう!」という言葉をかけている場面に出くわす、あるいはそのように伝えている方も多いのではないでしょうか?

これは、変形性膝関節症という病態に着目していることから出る言葉ではないでしょうか。

大腿四頭筋を鍛えるメリットはあるかもしれませんが、実際に目の前にしている人は必ずしも鍛える必要はないかもしれません。

つまり、膝関節が変形している状態であるとしても、その変形を引き起こしてしまうのは”大腿四頭筋が筋力低下した”からではない可能性があります。

症状を引き起こす原因を評価することは非常に重要あり、それは人それぞれ違った形で存在していると考えています。

今回の記事では、『本当に筋力低下したから痛みや痺れの症状を引き起こしてしまうのか?』を再考する内容となります。

本当に筋力が低下したから痛くなるの?

膝関節を例とします。
良く言われるのが『大腿四頭筋、特に内側広筋を鍛えましょう』という言葉だと思います。

膝関節伸展運動を行う女性のイラスト

確かに萎縮している場合もあるかと思います。
しかし、”なぜ萎縮が生じているのか?”・”なぜその筋肉に加わる刺激が少なくなっているのか?”を考えた方が良いでしょう。

例えば、大腿・下腿後面の筋群による膝関節伸展制限が生じているとします。
歩行においては膝関節は屈曲位で接地するため、膝関節には屈曲モーメントが加わり、それに対応して大腿四頭筋に強いられる筋活動は増えます。
効率の良さを求め二関節筋である大腿直筋での代償が増えてしまうので、内側広筋の活動は低下し、やがて萎縮するでしょう。

これに対して、内側広筋の筋力強化を促したところで、改善されないことの方が多いと考えられます。

では、大腿後面・下腿後面の筋群である、ハムストリングや腓腹筋のストレッチングを行えば良いのでしょうか。
多少改善されることもあると思いますが、またすぐに症状が戻ってしまうことが考えられます。

それは、これらの筋群はなぜ過緊張状態なのか、なぜ短縮しているのかまで考えてないからです。

腓腹筋であれば距骨下関節に関与するため、足部機能の影響を受けます。
前足部剛性が低下してしまった場合、後足部を回外させることで代償し、そのために腓腹筋の過緊張を引き起こしてしまったなどが考えられます。
つまりこの場合は、問題が足部機能にあるということです。

しかし、『この足部の機能不全を引き起こしてしまった原因は…?』と考えると堂々巡りになってしまうので、個人的な考えとして介入するポイントを3つに絞っています。

ポイント

  1. 症状の部分への介入
  2. 原因となる機能不全の部位への介入
  3. 症状部位と機能不全部位を含む動作の介入

原因と感じた機能不全の場所の問題が解決されるまで、ある一定期間介入を続けていき、それでも症状が改善されない場合に他の部位へ介入するというのも良いかと思います。

まず大まかに当たりをつけるのには、既往歴が非常に参考になります。
動作上の機能不全を見ていくことも必要だと感じますので、日頃から動作を見る習慣をつけていくと良いと思います。

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関節固有筋を鍛えるメリット

上記の内容を踏まえた上で、固有筋・単関節筋を鍛えるメリットをご紹介します。

単関節筋の収縮を促すことで、二関節筋の過緊張状態を軽減することができます。
関節に加わる剪断ストレスは軽減するため、関節の安定化にも貢献すると考えます。

正しい動作が行えれば、各筋それぞれが適切な機能を発揮できるという考えもありますが、個人的には単関節筋の収縮を促すこと(アクティベーション)でより動作への介入がスムーズに行えると考えます。

関節固有筋を鍛えるデメリット

デメリットというよりも、効果が低いという方が良いでしょうか。

単関節筋の収縮を促す際は、OKC(Open Kinetic Chain)であることが多いと思います。

日常的に動く際はそのほとんどがCKCであるため、実際にOKCで行なった介入が活かされるのかは疑問です。

重心位置の変化や姿勢要求度(臥位・座位・立位・片脚)の変化により、ターゲットとしている筋の活動が過剰になったり、あるいは抑制されてしまったりすることが考えられます。

人が動く際には中枢神経系が関与するため、固有筋の収縮を行なっても実際の動作中に活動してくれるのかは疑問点です。

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動作を鍛えるメリット

動作として練習することは、固有筋の収縮のみならず呼吸・姿勢の影響を加味しながら、荷重感覚・姿勢制御も同時に促されるため効果的だと考えています。

また、患者さんに行なってもらう時の目標設定や、内在的・外在的フィードバックも明確にしやすいです。

ここでは、ブロックトレーニング(10回3セットと決めて行う)よりも、動作が適切に行えた段階で重心位置や姿勢安定化の難易度を高く設定することが必要になってきます。

動作を鍛えるデメリット

動作を練習することで、萎縮の生じている筋力強化ができるのかは疑問が生じます。

ある程度は筋力・筋出力が向上すると考えられますが、あくまでも動作全体の中で使われている一部分にすぎないということです。

ある意味、得意な部分だけを使用した動作になってしまうことが懸念されます。
しかし、これは動作指導を行う指導者によって、多かれ少なかれ変わってくることと思います。

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まとめ

今回は、固有筋を鍛えるべきか、あるいは動作を鍛えるべきかを考える内容でした。

目の前にいる方の状態に合わせて、介入方法を検討していただければ良いかと思います。

ただし、動作の機能不全があるポイントに関しては、最終的に動作の練習をしていく必要があると考えます。

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