肩挙上と結帯動作時痛の症例:肩甲切痕の破格とモーターコントロール機能

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肩関節挙上・結帯動作時の痛み症例のトップ画像 介入方法

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症例

今回は、肩関節前面〜側面にかけての疼痛を主訴としており、肩関節挙上動作や結帯動作で再現される症例になります。

肩関節はどこかの方向の可動域制限を有する場合が多い印象がありますが、純粋にモーターコントロール機能不全が主であるケースが珍しいためご紹介させていただきます。ぜひ皆様の参考になれば幸いです。

個人が特定される内容は控えさせていただきますので、症状とその介入による結果のみの掲載となります。

症状をまとめていきます。

症状

  • 肩関節屈曲・内旋動作で肩関節前面に痛みが生じる
  • 結帯動作で肩関節前面〜側面に痛みが生じる

受傷歴は、転倒によって肩を地面に打ち付けたことがきっかけです。2週間経過後も疼痛が改善されないため、理学療法での介入となりました。

評価

評価の結果をまとめていきます。

評価

  • 肩関節屈曲・内旋動作で肩関節前面に痛みが生じる
  • 結帯動作で肩関節前面〜側面に痛みが生じる
  • 肩甲上腕関節の可動性制限はなし
  • 鎖骨の背側・尾側への滑りの可動性は軽度制限
  • 痛みの質:『ズキっとくる』
  • 三角筋・大胸筋・上腕二頭筋に圧痛あり
  • 棘上筋・棘下筋の著名な萎縮
  • 転倒による受傷
  • 既往歴なし

評価では、肩関節屈曲・内旋の自動運動では疼痛が生じ、他動運動では疼痛が生じない結果となりました。また、棘上筋の部分に圧迫を加えながら、自動運動を行うと症状が緩和されました。

動作時に三角筋前部線維は過剰に収縮しており、筋腹および起始部である鎖骨まで圧痛が確認されました。協働する大胸筋上部線維の圧痛も確認されました。

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考察

動作において、自動運動で痛みが生じ、他動運動では生じないということは、筋収縮に伴う痛みということが考えられます。

肩関節屈曲・内旋の複合動作はスペシャルテストのHawkins-kennedyに該当しますので、Painful Arcや外転動作での痛みがないことを踏まえると、肩関節インピンジメントの可能性は低いと考えられます。

転倒により肩後面から打ち付けていることから、肩鎖関節・胸鎖関節の関節の遊び(Joint play)も評価しました。肩鎖関節に不安定性、可動性制限はありませんでしたが、胸鎖関節の背側・尾側滑りの可動性は制限がありました。
これは、転倒によって鎖骨を腹側方向に動かす外力が加わったことが要因として考えられます。あるいは、受傷前からもともと制限があったかもしれません。その他には、周囲筋の過緊張による影響が考えられます。

棘上筋・棘下筋の著名な委縮が確認されました。オーバヘッドスポーツにおいて、肩甲上神経の絞扼によってこのような状態が出現するということはありますが、スポーツ歴は特にないということでした。
そのため、考えられることとしては、肩甲切痕の破格です。肩甲上神経の走行途中で肩甲切痕を通過しますが、この部分の形状には個人差があります。頸部の問題がなければ、もともと絞扼されやすい形状であったことが考えられます。→”肩甲切跡の破格”に関してはこちらのページです。

また、棘上筋を圧迫することで症状が緩和するということは、その筋肉の機能改善をすれば疼痛をコントロールすることができるということも考えられます。

上腕二頭筋の圧痛は、棘上筋・棘下筋の委縮・筋力低下に伴う上腕骨頭の安定化代償、プーリーシステムとして過剰な負担が生じていることが要因と考えられます。

介入①

まず1回目の介入になります。

介入①

  1. 鎖骨の背側・尾側方向への関節モビライゼーション
  2. 三角筋・大胸筋の軟部組織モビライゼーション
  3. 胸郭のmobility exercise

私の介入としては、この順番で行いました。
鎖骨のモビライゼーションを行い、可動性が改善されたところで症状の確認をしたところ、痛みは7割軽減されました。その後に、軟部組織へ介入をしたところ、疼痛の再現はない状態となりました。

鎖骨のモビライゼーションと軟部組織モビライゼーションは、どちらの順番でも良いのではないかと思います。軟部組織にだけ介入し鎖骨の可動性制限が残っている場合は、症状は改善されないのではないかと考えられます。

胸郭のmobility exerciseを行うことは、受傷前から存在する機能不全に対処することが目的です。今回の症状の発現と関係ないように感じる方もいるかと思いますが、これを行うことで予後が少しでも良くなるのではないかと考えます。

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介入②

介入の2回目でも疼痛は残存していました。

鎖骨のモビリティは改善されていましたので、残りはどこかの部分の筋機能の問題だと考えられました。

介入

  1. 大胸筋上部線維・僧帽筋の軟部組織モビライゼーション
  2. 棘上筋・棘下筋の固有筋エクササイズ

触診による精査・検討し、軟部組織へのアプローチは大胸筋と僧帽筋に行いました。これらを行うことで動作時痛は改善されました。

さらに、上腕骨頭の安定性向上のために、萎縮が著名な棘上筋・棘下筋へのエクササイズを行なっていただきました。

まとめ

今回の症例の評価・介入をまとめると、『受傷前より存在すると考えられる胸郭の機能不全』と、『転倒による肩関節周囲の二関節筋の過剰収縮に伴い上腕骨頭の不安定性が生じていたこと』が疼痛の原因だと考えられました。

一度怪我をすると、”モーターコントロール機能”に問題が生じることが考えられます。それは、疼痛回避動作や筋収縮パターンの変化などがありますが、今回の症例は筋収縮パターンの変化、特に二関節筋の過剰な防御性収縮が問題だと考えられます。

さらに、肩甲切痕の破格に伴う肩甲上神経の絞扼の問題も考えられます。これによっては、肩関節(肩甲上腕関節)の安定性に問題が生じる可能性があります。これを代償しようとして、受傷前から二関節筋が優位に活動していた可能性があります。

肩関節疾患の方でも、胸郭の可動性の部分に介入することは非常に重要だと日々感じていますので、ぜひ皆様も評価・介入してみてください!

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