歩行における足部・膝関節・股関節・骨盤・胸郭の運動連鎖まとめ:距骨下関節が過回外する原因

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距骨下関節の過回外

距骨下関節は、踵接地および立脚中期〜遊脚前期において回外位にあることが理想的であるとされています。

しかし、臨床的には距骨下関節が過回外していることがあり、これにより下肢・腰部疾患に繋がる可能性は大いにあります。

歩く女性の足

では、距骨下関節を回内させるように介入すれば良いのでしょうか…?

距骨下関節回内方向へのモビライゼーションや足部内反筋のマッサージ・ストレッチ、足部外反のトレーニングを行なったとしても、距骨下関節を回外させてしまう理由がわからなければ、再び過回外した状態に戻ってしまうことでしょう。

つまり、生じている現象に対して考察を深めていかなければいけません。

そこで今回の記事では、距骨下関節を過回外させてしまう原因は何かを、下肢・骨盤・胸郭の運動連鎖の観点から考えてまとめていきたいと思います!

足部の剛性・安定化

距骨下関節回外は、足部の剛性を高めることに寄与します。

回外させることで、足部に存在するアーチを保持することが可能となり、特に内側縦アーチには大きく関与します。

足部内側縦アーチのイラスト

例えば、横アーチが低下し扁平足の状態であったとします。
この時、前・中足部は回内し剛性は失われてしまうので、距骨下関節を回外させることで代償します。

前・中足部の筋機能が低下している場合、距骨下関節を”過剰”に回外させてしまうでしょう。

足部のMP横アーチのイラスト

また、歩行の蹴り出しの時に、前・中足部の機能が重要となります。
この時に、骨盤・胸郭の位置によっては、足部回内の方向にモーメントを加えてしまう可能性があり、それを代償しようとして過剰に回外させてしまうことも考えられます。

つまり、前・中足部の機能は備わっていたとしても、骨盤・胸郭に伴う相対的な位置によって適切な機能を発揮できず、代わりに距骨下関節で代償しているということです。

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腓腹筋の過剰収縮

先ほどは骨・関節の話でしたが、今度は筋機能を考えていく必要があります。

腓腹筋は、足関節底屈・膝関節屈曲の他に、踵骨を内反させる作用(後足部回外)も有します。
そのため、腓腹筋が過剰に収縮していたり短縮していれば、距骨下関節は回外されます。

腓腹筋・ヒラメ筋のイラスト

腓腹筋を過剰に使用する原因としては、①重心の前方変位、②足部剛性の低下、③推進力の産生、④接地時の衝撃吸収が主に挙げられます。

原因

  1. 重心の前方変位
  2. 足部剛性の低下
  3. 推進力の産生
  4. 接地時の衝撃吸収

特に歩行においては、推進力が重要です。
これには股関節伸展の可動性がキーポイントになります。

蹴り出しの時は腸腰筋の遠心性収縮が生じ、その反動によって脚が前方へと振り出すことができると考えられています。

股関節伸展の可動性に問題があり、十分な力を蓄えることができない時、腓腹筋の足関節底屈作用により蹴り出す可能性があります。

この詳細に関しては、こちらの記事をご参照ください!

脛骨外旋・内弯

脛骨外旋が生じると、関節運動連鎖を伴うため距骨下関節は回外します。

この場合、『なぜ脛骨が外旋する必要があるのか?』ということになります。

下肢の骨格

膝関節は伸展することで、骨での安定を得ることができます。

膝関節は完全伸展する際に、大腿骨の脛骨関節面の形状により、脛骨は外旋することになります。(Screw Home Movement)

歩行時に膝関節の不安定感や違和感・痛みがあれば、膝関節伸展あるいは過伸展することで、膝関節をロックして使用します。この時に脛骨が外旋するため、距骨下関節回外も生じてしまいます。

しかし、骨・関節の形状は人それぞれ違ってきます。
これはあくまでも一つの考え方であって、万人に当てはまることではないという点には注意した方が良いでしょう。

良い例として『脛骨内弯』があります。
脛骨内弯は、距骨下関節を過度な回外位に定位させます。

これにより、中足部以降は回内が強くなってしまい、様々な症状を引き起こす可能性があります。
歩行において確認できるポイントがありますので、こちらの記事をご参照ください。

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骨盤後方回旋・股関節伸展

関節運動連鎖として、骨盤後方回旋が生じると、距骨下関節は回外します。

先ほどと同様に、『なぜ骨盤後方回旋が生じるのか?』ということになります。

骨盤後方回旋が生じる時、股関節は屈曲・内旋位になります。
股関節後方関節包・臀筋群などの組織の張力(テンション)がかかる位置になりますので、股関節は安定しやすくなります。

反対に股関節伸展・外旋すると、前方組織に張力がかかります。前方の靭帯組織は強靭ですが、歩行などで日常的に頻回にストレスが加われば、いずれ張力を失い不安定な状態になってしまいます。

歩行における蹴り出しの時には、股関節伸展の可動性は必要となります。
この時、股関節伸展の可動性に問題が生じていれば、身体は危険を察知して屈曲・内旋方向へ代償するかもしれません。それに伴って、骨盤後方回旋が生じてしまうということです。

骨盤後方回旋の代償が強く生じるほど、距骨下関節が過度な回外位になっていくことでしょう。

この場合、蹴り出しが遅延するため、腓腹筋を使用した足関節底屈作用で代償するかもしれません。また、脛骨が過外旋するかもしれません。

このように、代償はどこに生じるか分かりませんが、目の前で診ている患者・クライアントさんの動作がそれを知らせてくれると考えられます。

胸郭の同側回旋

最後に胸郭の回旋です。

ここでは右下肢で考えていきます。
胸郭が右回旋・骨盤帯も右回旋している場合、接地の時は安定性した位置になりますが、蹴り出しの時には先ほどの骨盤後方回旋・股関節伸展の項目でまとめた事が生じます。

胸郭が右回旋・骨盤帯は左回旋している場合、右の寛骨は前方回旋してくるため、蹴り出しの際に前足部への荷重が促されます。
この時、前・中足部の機能は備わっていたとしても、骨盤・胸郭に伴う相対的な位置によって適切な機能を発揮できず、代わりに距骨下関節を過剰に回外させて足部剛性を維持することも考えられます。

これは、足部剛性の項目でまとめた事になります。

つまり、これまでの代償動作が確認された時に、『では、胸郭の位置はどうなってるのか?』を評価することがポイントということです。

そうなると、『頸部の問題も関与するのでは…?」と思われる方もいるでしょう。

その通りだと思います!
頚椎右回旋の可動性に問題が生じている場合、頚椎は左回旋位になりやすく、正面を向こうとすれば相対的に胸郭は右回旋することになります。

ということで、ここまでは全て仮説の話です。
この先で細かく評価して、実際に身体はどのようになっているのか、全身を捉えていくことが必要かもしれません。

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回内へ誘導するべき?

ここまで色々話をしてきましたが、最終的に距骨下関節は回内へ誘導するべきでしょうか?

明らかに回内制限が生じている場合でも、いきなり距骨下関節へ徒手介入をするべきではないというのが私の考えです。

ここまで読んできた方なら理由は分かるかと思います。

足部・膝・股関節・骨盤・胸郭、どこかの問題があるために距骨下関節回外で代償しているとしたら、その方にとって距骨下関節での代償が全てなのです。

それを取ってしまったら、その方はどこで代償したら良いのでしょうか?
違う部分で代償するかもしれませんし、問題が生じている部分をさらに悪い状態で使用するかもしれません。

では、”距骨下関節へ介入する”+”どこか問題となっている部分にも介入する”のはどうでしょうか?

それなら良いのではないかと考えます。
私の場合は、”どこか”の部分に試験的介入をして、良い反応が得られるかを確認してから実際に介入するでしょう。

そして、最終的には、距骨下関節は回内にも動く必要があります。
回外がいけないのではなく、過度な回外で定位していることがいけないのです。

回外にもいけるし回内にもいける、安定させたいときは回外で安定する、柔軟に適応したいときは回内にする、というように動きに自由度が作れるのが理想的です。

まとめ

なかなか壮大な内容になってしまいましたが、いかがでしたか?

ある一部分への介入が欠けてしまうために、動作の修正・機能改善が思うように進まない可能性があります。

視点を広げすぎても問題ですが、視点を広げないことにも弊害があります。
我々専門家は、身体を一つのシステムとして診ていくべきではないでしょうか。

今回はたまたま距骨下関節を起点にまとめましたが、他の部位を起点にしても同じようなことを言えるでしょう。

距骨下関節の関節面には様々なバリエーションが存在します。
「関節の構造的に、もともと身体に問題を生じやすい方もいるのでは?」と考えると、さらに難しくなりそうですね!

こちらの記事では、距骨下関節の解剖学的バリエーションをまとめていますので、ぜひご参照ください。

コメント

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