広背筋が短縮・過緊張・過活動してしまう原因を肩甲帯・胸郭・腰椎骨盤帯から考える

広背筋の機能解剖と過緊張・過活動・短縮の原因となる機能不全のまとめ記事のトップ画像解剖学&運動学
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広背筋

広背筋は、身体の中で最も幅広い筋肉であり、背中から腰の大部分の領域を占めています。

骨盤から上腕骨にかけて走行しており、途中で胸椎や肋骨、肩甲骨、筋膜に付着しており、多くの関節の動き・筋の活動に影響を及ぼしています。

広背筋

臨床においては、広背筋の筋出力が低下していることよりも、短縮・過活動・過緊張に伴う問題が存在する可能性が高いと感じております。いわゆる頑張り屋さんな筋肉であるということです。

今回の記事では、広背筋の機能解剖から、なぜ広背筋が過剰に動員されてしまうのか、その機能不全が生じる要因を考えまとめていく内容となっています。

広背筋の解剖学

広背筋は多くの場所に付着部を有しています。

椎骨部分では、第7胸椎〜第12胸椎棘突起、胸腰筋膜を介して腰椎棘突起〜正中仙骨稜および棘上靭帯に付着しています。その他、腸骨稜後方や第9〜12肋骨後面、肩甲骨下角に付着しています。

筋線維の方向としては、胸椎や肩甲骨の領域では水平方向ですが、腰椎・仙骨・腸骨後方領域においては斜め方向、肋骨領域においては垂直方向となります。これらの筋線維は上腕骨近位に向かって走行していきますが、途中の腋窩部においては大円筋の周りを螺旋状に回旋し、上腕骨結節間溝に付着します。

広背筋

広背筋は、腕神経叢の後神経束からの分枝である胸背神経(C6〜8)によって支配されます。
広背筋を覆う皮膚は、腹側と背側の両方の神経根を含むT4~T12と、L1~L3の背側神経根によって支配されています。血液供給は、肩甲下動脈の枝である胸背動脈、下3本の後肋間動脈(第9〜11肋間動脈)と上3本の腰動脈(L1〜3)によって行われています。

近位付着部・Th7〜Th12棘突起
・胸腰筋膜を介して腰椎棘突起〜正中仙骨稜
・腸骨稜後方
・第9〜12肋骨
・肩甲骨下角
遠位付着部 上腕骨結節間溝
走行・胸部・肩甲骨領域:水平方向
・腰椎・骨盤帯領域:斜め方向
・肋骨領域    :垂直方向
神経支配 胸背神経(C6〜8)
血液供給 胸背動脈、第9〜11肋間動脈、腰動脈(L1〜3)

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広背筋の機能

広背筋は、大円筋や大胸筋と恊働して肩甲上腕関節の伸展・内転・内旋に作用します。特に、屈曲位あるいは外転位から動作を開始した場合、伸展・内転の動作は強く行われます。

上肢が頭上に固定されている場合、大胸筋と相乗的に作用して体幹を上向きに持ち上げることができます。いわゆる懸垂(チンニング)の動作時に動員されるということです。

チンニング・懸垂

肩甲上腕関節の動きは、遠位付着部が固定点となり、遠位付着部に向かって近位付着部が動いています。反対に、上肢が頭上で固定されている場合は、近位付着部が固定点となり、遠位付着部が近位付着部に向かって動いていることとなります。

上記の機能はよく知られていますが、この他にも肩甲骨や肋骨、腰椎、呼吸に対する機能を有しています。

肩甲骨下角に付着することから、胸郭に対して肩甲骨を安定させる機能肩甲骨を下方回旋させる機能をもちます。

上肢や肩甲帯が安定・固定している場合、骨盤を前傾させたり、腰椎を伸展させる機能も有します。例えば杖を使用している場合ですと、立位時に上肢を固定部分として使用するため、胸腰部を前方に引き骨盤前傾・挙上させるように作用します。また片側の場合だと、胸腰椎の側屈や回旋にも作用することが考えられます。
また、広背筋の短縮を鑑別するテストでも、腰椎屈曲・骨盤後傾の姿勢で上肢を挙上させてから、腰椎伸展・骨盤前傾させることで上肢挙上角度に変化が生じるかを見ていますね。

公園で深呼吸をする女性

さらに、下部肋骨を外旋・後方回旋させる機能も有しています。このような肋骨の動きが生じると腹部の筋出力が低下してしまい、より一層腰椎伸展・骨盤前傾させることとなります。
さらに、吸気の補助筋、胸郭を圧迫することで呼気の補助筋(強制呼気)としても作用します。呼気の場合、咳やくしゃみなどの強い呼気において広背筋が活動します。

・肩甲上腕関節伸展・内転・内旋
・肩甲骨下方回旋
・腰椎伸展・側屈
・骨盤前傾・挙上
・肋骨外旋・後方回旋
・吸気補助筋
・強制呼気筋

このようにまとめると、広背筋は結構いろんな機能を持っていることが分かります。普段の動きの中で何気なく使用している場面は多いと考えられるため、筋緊張が高くなってしまったり、筋が短縮してしまうのでしょう。

広背筋の機能不全の原因

広背筋の機能不全が生じてしまう原因を、①肩甲上腕関節・肩甲骨、②腰椎・骨盤帯、③胸郭・呼吸に分けて考えていきます。

①肩甲上腕関節・肩甲帯

肩甲上腕関節においては、下垂位において上腕骨を過剰に内旋させたり、屈曲・外転動作の制限因子になることがあります。
広背筋の緊張や伸張性の問題が生じていると、挙上時に上腕骨頭が後下方へ滑る動きに制限が生じてしまうため、上腕骨頭を前上方へ引き出してしまいます。この場合、肩甲窩に対する上腕骨頭の位置関係が悪くなってしまうので、肩関節の機能不全に繋がると考えられます。

肩関節を外転し、脇の部分を押さえる男性

肩甲骨の動きの中でも特に重要なのが肩甲骨内転の動作ですが、この動きが適切に行えず広背筋で代償しようとすることが問題となりやすいです。広背筋を活動させて、肩甲骨を内転させている風にしているということです。これは、僧帽筋中部・下部が適切な機能を発揮できていないことが考えられます。

僧帽筋

上記のような傾向の方は、広背筋によって肋骨外旋・腰椎伸展・骨盤前傾にも作用してしまいます。これらは全て伸展の動きとなるため、身体を伸展パターンとして使用してしまい、本来の身体の使い方とは違った動きをしてしまうことが考えられます。
広背筋を使った肩甲骨の安定化だけになってしまうと、伸展パターンとして活動するだけになってしまうので、肋骨内旋・腰椎屈曲・骨盤後傾姿勢の屈曲パターンになった場合は肩甲骨が安定させたり、肩甲骨を内転させることが難しくなってしまうでしょう。

この場合はまず、身体を屈曲パターンの状態にして、僧帽筋中部・下部を活動させて肩甲骨を内転させる動作を練習します。その後、肩甲骨安定化に寄与する前鋸筋との協働を練習していく必要があります。その上で、身体を伸展パターンの状態にしても、広背筋を動員せずに、僧帽筋中部・下部を使用することができるように、練習をしていく必要があります。

・広背筋の短縮に伴う上腕骨頭の上前方変位、肩甲上腕関節の機能不全
・僧帽筋中下部の機能不全に伴う広背筋の過活動
・肩甲骨安定化筋として広背筋の代償的活動(前鋸筋の機能不全)

②腰椎・骨盤帯

下背部・腰部の筋筋膜性疼痛を有する場合、胸腰筋膜の影響が考えられます。胸腰筋膜は広背筋の他に、腰部起立筋群・多裂筋・ハムストリング・大殿筋・下後鋸筋・内腹斜筋・腹横筋など多くの筋肉と関係しています。

これらの筋肉のどこかの部位が緊張していると胸腰筋膜を緊張させてしまうかもしれませんし、それが広背筋にも影響が及ぶ可能性があります。よく分からないという方は、綱引きをイメージしていただくと良いかもしれません。片方が引っ張られれば、もう片方も引っ張られてしまいます。

腰を押さえる女性

上記の筋肉が影響する仙腸関節・股関節・膝関節・腰椎椎間関節・胸郭の問題は、広背筋の張力を介して胸腰筋膜を緊張させることで代償する可能性は十分に考えられます。

腰椎椎間関節の機能不全に伴う多裂筋・腹横筋・内腹斜筋の機能不全、寛骨の前傾に伴うハムストリングの過度な伸張、股関節の機能不全に伴う大殿筋の筋出力低下など、これらの問題は臨床において良く確認されます。そのため、広背筋による肩甲帯・肩関節の機能不全があるとしたら、これらの影響も考慮する必要があるということになります。

・胸腰筋膜と関連する筋の機能不全
・胸郭・腰椎椎間関節・仙腸関節・股関節・膝関節の機能不全

③胸郭・呼吸

呼吸においては、胸郭・肋骨の運動が非常に大切になります。息を吸う時には胸郭が拡張し、息を吸う時は胸郭が縮小します。

紙風船

吸気の際、下位胸郭は横方向へ拡張し、肋骨は外旋・後方回旋します。吸気で肋骨の横方向へ拡張を感じられず、腹部前面の拡張だけが確認される場合、それは肋骨の運動が適切に行えていないと考えられます。中でも下後鋸筋は肋骨を後下方へ引き外旋・後方回旋させる筋肉であるため、吸気の際に活動していなければ、強引に広背筋を動員させて、吸気の補助筋として代償的に活動するかもしれません。

反対に、呼気の際には肋骨が内旋・前方回旋し、下位胸郭が縮小していきます。息を吸う時に拡張するが、呼気のタイミングで肋骨の運動が適切に行われていない場合、腹横筋や内腹斜筋の活動が適切に行われていない可能性があります。また、広背筋が過緊張・過活動・短縮しており、肋骨内旋・前方回旋の動きを阻害している可能性があります。

・吸気時の肋骨外旋・後方回旋の補助筋としての代償的活動
・過緊張・過活動・短縮による呼気時の肋骨運動の機能不全
・内腹斜筋・腹横筋の機能不全に伴う強制呼気としての代償的活動

上記のように広背筋に対して考えられる問題点は多いので、評価は大切になりますし、介入に対する反応も随時確認しながら行っていく必要があるでしょう。

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参考文献

  1. Jeno SH, Varacallo M. Anatomy, back, latissimus dorsi. StatPearls [Internet]. 2021 Aug 11.Available: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK448120/(accessed 31.12.2021)
  2. Ken hub latissimus dorsi Available:https://www.kenhub.com/en/library/anatomy/latissimus-dorsi-muscle (accessed 31.12.2021)

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