仙腸関節の機能解剖と靭帯・筋・筋膜との関係

解剖学&運動学

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仙腸関節

今回は、『仙腸関節』・『関節周囲の靭帯』・『靭帯と筋の関係』・『仙腸関節と筋膜の関係』の4つをご紹介していきます。

まずは、仙腸関節の分類になります。

仙腸関節の異なる分類

  • Diarthrosis:可動関節
  • Amphiarthrosis:半関節(線維軟骨結合)
  • Diarthro-Amphiarthrosis:上記2つが合わさったもの

多くの言及では、関節は滑膜関節の特徴を持つ可動関節であるとしています。

多くの著者が、仙腸関節は滑膜関節の特徴を持っているとの見解を示していることは非常に興味深いと思います。

仙腸関節・骨盤帯のイラスト

不動関節であれば、セラピストがその部位に関与することがなくなります。

仙腸関節に問題があるかもしれないと考え、そこへ徒手的介入や運動での介入を行うことで改善することもあると思います。

骨の形状や関節面の形状などによって、それぞれ動きの大きさ(運動量)はバラエティに富んでいると思いますが、動かない訳ではないということが重要と考えます。

仙腸関節周囲の靭帯

仙腸関節の靭帯は、内在および外在靭帯に分けられます。

関節包または副靭帯と呼称されることもあります。

内在靭帯

  • ASL:前仙腸靭帯
  • ISL :骨間仙腸靭帯
  • PSL:後仙腸靭帯
  • LPSL:長後仙腸靭帯
外在靭帯

  • ILL:腸腰靭帯
  • STL:仙結節靭帯
  • SSL:仙棘靭帯

これだけ多くの靭帯が仙腸関節を覆っています。

内在靭帯は関節内、外在靭帯は関節外の靭帯と大まかに認識していただければ良いでしょう。

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筋と仙腸関節周囲の靭帯の関係

仙腸関節周囲の靭帯と筋の関係を以下に示します。

筋に対する靭帯の関係をまとめていきます。

筋→靭帯の関与

  • 大腿二頭筋:STL
  • 尾骨筋:SSL
  • 大殿筋:STL・LPSL
  • 脊柱起立筋群:STL・PSL・LPSL・ILL
  • 多裂筋:LPSL・PSL
  • 骨盤筋膜:STL・SSL
  • 梨状筋:STL
  • 腰方形筋:ILL
  • 胸腰筋膜:STL・LPSL

このように、筋が靭帯に付着部を持つことによって、仙腸関節の安定化に寄与しています。

仙腸関節の機能不全が生じていれば、これらの筋の過緊張が生じてしまうことがも考えられます。
特に要因がなく、筋の張り感や痛みを感じているのであれば、仙腸関節の機能不全を疑っても良いかもしれません。

また、股関節・腰椎椎間関節の影響も受けるので、病態は非常に複雑だと感じます。

仙腸関節周囲の靭帯と筋の関係

今度は、靭帯の方から筋の関与をまとめます。

靭帯→筋の関与

  • STL:大腿二頭筋・大殿筋・脊柱起立筋・骨盤筋膜・梨状筋・胸腰筋膜
  • SSL:尾骨筋・骨盤筋膜
  • PSL:脊柱起立筋・多裂筋
  • LPSL:大殿筋・脊柱起立筋・多裂筋・TLF
  • ILL:脊柱起立筋・腰方形筋

上記のと比較し、わかりやすい方を参考にしてもられたら幸いです。

このまとめ方であると、仙結節靭帯が色々な筋と関わりがあることがわかります。

胸腰筋膜の問題で腰痛を引き起こしている場合、大殿筋や大腿二頭筋の股関節伸展機能不全に伴う代償とも考えられます。

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仙腸関節と筋膜との関連

胸腰筋膜の後層

  • “Superficial Laminae” & “Deep Laminae” の2層で構成されます
  • 仙骨・PSIS・L4・L5・LPSL・脊柱起立筋腱膜と強い接合を有します
  • 深層膜線維はSTLと連続し、STLとTLF後層の表層膜の間を繋ぎます

長後仙腸靭帯(LPSL)の中部は, 3つの筋膜層(Fascial layer)と関与します。

長後仙腸靭帯

  1. 脊柱起立筋腱膜
  2. 多裂筋の深層筋膜
  3. 殿筋腱膜

仙腸関節周囲の筋の展開

大殿筋

大殿筋の付着部の展開になります。

股関節伸筋群:大殿筋・ハムストリングのイラスト

大殿筋の付着部の展開

  • 仙骨骨膜
  • 中殿筋筋膜
  • 腸骨
  • 胸腰筋膜
  • 脊柱起立筋腱膜
  • 長後仙腸靭帯(LPSL)
  • 仙結節靭帯(STL)
  • 尾骨

梨状筋

梨状筋は、斜方向に骨盤帯を引っ張り、仙腸関節を横切る唯一の筋になります。

股関節深層殿筋群のイラスト

梨状筋下面はSTLと連続し、線維はSTL腹側面に直接付着します。

脊柱起立筋

脊柱起立筋のうち、仙棘筋は仙骨内側稜・腸骨稜内唇後部・腰椎棘突起・Th11・12椎体に付着します。

脊柱起立筋のイラストになります。身体を横から見た図です

脊柱起立筋は、腸腰靭帯(ILL)と長後仙腸靭帯(LPSL)内側線維の背側面に付着する線維をもちます。

大腿二頭筋

大腿二頭筋は、仙結節靭帯(STL)を通して仙腸関節に付着する筋になります。

ハムストリング:半腱様筋・半膜様筋・大腿二頭筋のイラスト

仙結節靭帯(STL)表層線維下部に付着し、いくつかの外側深層線維も付着します。

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まとめ

仙腸関節は、靭帯や筋によって安定している部分になります。

腰椎・股関節との関係もあるため、LPHC(Lumbo-Pelvis-Hip Complex:腰椎-骨盤-股関節複合体)として全体を把握することが非常に重要だと感じます。

あらゆる動作においてもこの関係性は重要であるため、解剖や機能は把握していることが必要となるでしょう。

こちらの記事では、仙腸関節の評価方法をご紹介していますので、併せてご参照ください!

参考文献

A Systematic Review of the Normal Sacroiliac Joint Anatomy and Adjacent Tissues for Pain Physicians: Amelie J. Poiliot, Johann Zwirner, Terence Doyle, Niels Hammer, Pain Physician. 2019

コメント

  1. […] 仙腸関節の機能解剖と靭帯・筋・筋膜との関係仙腸関節の分類と周囲の内在・外在靭帯との関係、靭帯と筋肉の繋がり、筋膜との関係を解説しています。腰椎・骨盤・股関節複合体:LPHC […]