脊柱のアライメントと神経の滑走性の関係性:座位におけるスランプ肢位と直立肢位の差

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脊柱のアライメントと神経モビライゼーションの関係

四肢や脊柱のアライメントは、身体の動きに伴い神経の滑走性や関節可動域(ROM)に影響を与える可能性があります。

ストレートレッグレイズ(Straight Leg Raise:SLR)テストを検討した屍体研究では、足関節背屈させ神経を事前に緊張させた場合は脛骨神経の滑走が少なくなり、足関節底屈させた場合は脛骨神経に加わる負荷が減少するという結果が得られています。

仰向けに寝た状態で太ももの裏面をストレッチされる女性

また、正中神経と尺骨神経を対象とした研究では、神経路に負荷を加えておくと手関節を動かしたときの神経の滑走が減少し、神経路に負荷をかけない場合は逆の傾向を示す結果が得られています。

このように、神経伸張テストや神経モビライゼーションにおいて、手足の位置が神経の緊張に与える影響については多くの例がありますが、脊柱のアライメントの影響についてはあまり情報がありません。

以下の論文では、座位でのスランプテスト(Slump Test)において、”脊柱屈曲姿勢(スランプ肢位:Slump-Sitting)と直立姿勢(Upright-Sitting)の違いが坐骨神経の動きに影響を与えるのか”を研究しています。

座る姿勢のイラスト。左が猫背の悪い姿勢で右が理想的な良い姿勢です。

こちらが原著になりますので、お時間のある方はご参照ください!
The effect of spinal position on sciatic nerve excursion during seated neural mobilisation exercises: an in vivo study using ultrasound imaging:Richard Ellis, Samantha Osborne, Janessa Whitfield, Priya Parmar ,Wayne Hing, Journal of Manual & Manipulative Therapy 2017

今回の記事では、この論文をまとめ、さらに個人的見解を加えて解説していきます。
ではいきましょう!

座位の脊柱屈曲姿勢が坐骨神経に与える影響

死体の分析によると、頸椎と胸椎の屈曲により、脊髄と腰仙骨の神経根が頭側に移動し、それに伴ってこれらの構造の張力が増加します。

スランプテストでは、頸椎屈曲を加えることで膝の伸展が著しく低下します。これは坐骨神経路と腰仙部の神経根にかかる張力が増加したためであると考えられています。

しかし、今回ご紹介している記事の研究では、健康な人々では”座位の脊柱屈曲姿勢と直立姿勢の間において、坐骨神経の滑走量が有意に異なる証拠はない”という結果となっています。

ここで気になる点として、脊柱のアライメントが神経の滑走に与える影響に関して、これまでの研究結果と矛盾しています。(他の研究内容は後ほどご紹介します。)

その理由の1つとして、スランプ肢位によって神経の緊張が高まるのは、胸部と腰胸部付近であるからだと考えられています。

確かに、スランプ肢位では腰椎を屈曲させずに胸部・頸部を屈曲させるため、解剖学的に伸張されている部分は胸腰部が中心になりますね。最もストレスをかけたい腰部・仙骨領域には大きな負荷を加えられていないのかもしれません。

まとめ

座位のスランプ肢位と直立肢位では、坐骨神経の滑走に有意差はない

ただし、これは健康な人を対象にしているため注意が必要です。

腰仙神経根や坐骨神経が周囲組織と癒着している場合には、腰仙神経根や坐骨神経の滑走性低下が生じているため、上記の研究結果とは違った結果が得られるかもしれません。

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脊柱のアライメントと神経滑走性の関係

大腿神経伸張テストにおいては、直立姿勢に比べて脊柱屈曲姿勢では、股関節伸展・膝関節屈曲可動性と痛みの強さの両方に有意な差が生じることが示されています。

大腿神経伸張テストに関する感度・特異度・尤度比は、こちらの記事でご紹介していますので、併せてご参照ください。

頸椎のアライメントや頸椎の動きは、上肢神経モビライゼーション中の正中神経の滑走性に有意な影響を与えることが示されています。

腕を上げられて痛がる女性

つまり、神経の走行を最大限にするためには、神経モビライゼーション中の上下肢の関節位置や脊椎の姿勢の影響を考慮する必要があります。

まとめ

座位におけるスランプ肢位と直立肢位は、坐骨神経の滑走に有意な差を与えないという結果でしたが、臨床上は明らかに症状が誘発できることがあります。

これは上記でも記載しましたが、炎症に伴う神経組織と周囲組織の癒着が誘引となり、伸張ストレスが増大している可能性があります。

そのため、研究結果が有意差なしと言っているから気にしなくて良い、というわけにはならないでしょう。

反対に、研究結果を上手に利用することもできます。

セルフエクササイズとして神経モビライゼーションを行ってもらう時、痛みによりスランプ肢位が取れず、直立肢位であれば取れる場合は、直立肢位を選択すれば良いということです。
スランプ肢位と直立肢位では坐骨神経の滑走が有意な差がないため、直立肢位でも同等の効果が得られるかもしれません。

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参考文献

  1. The effect of spinal position on sciatic nerve excursion during seated neural mobilisation exercises: an in vivo study using ultrasound imaging:Richard Ellis, Samantha Osborne, Janessa Whitfield, Priya Parmar ,Wayne Hing, Journal of Manual & Manipulative Therapy 2017
  2. Coppieters M, Hough A, Dilley A. Different nerve-gliding exercises induce different magnitudes of median nerve longitudinal excursion: an in vivo study using dynamic ultrasound imaging. J Orthop Sports Phys Ther. 2009;39(3):164–71.
  3. Herrington L, Bendix K, Cornwell C, Fielden N, Hankey K. What is the normal response to structural differentiation within the slump and straight leg raise tests? Man Ther. 2008;13(4):289–94.

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