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小趾外転筋の解剖学
小趾外転筋は、足底の外側に存在する小さな筋肉ですが、とても重要な役割を有している強力な筋肉です。
特に外側縦アーチの安定化に関与しており、機能不全に陥ることで足部・足関節の安定性に問題が生じてきます。
小趾外転筋(Abductor Digiti Minimi Muscle)は、踵骨結節の外側突起と内側突起、足底腱膜に付着し、足底の外側部分を遠位方向に走行し、第5趾基節骨底の外側面に付着します。
・踵骨結節の外側突起と内側突起
・足底腱膜
・筋間中隔
・第5趾基節骨底の外側面
脛骨神経から分枝する外側足底神経(S1-3)に支配され、第5趾の外転と屈曲に作用します。
小趾外転筋は、外側足底筋膜の深層および短趾屈筋と同層に位置する筋肉で、足部内在筋の中でも第1層に分類されます。
小趾外転筋の内側領域には、短趾屈筋と外側足底動脈・神経が走行しています。
小趾外転筋の機能
小趾外転筋の作用は、小趾の外転と屈曲です。
“外転筋”と呼ばれていますが、屈曲筋としての作用が強力であると言われています。
そして大切な作用は、外側縦アーチの安定です。
反対側に位置する母趾外転筋の機能と同様に、歩行・走行・ジャンプなど動作中の足部安定化に貢献しています。
外側縦アーチというと腓骨筋群が真っ先に出てくるかもしれませんが、小趾外転筋の機能不全が生じている場合、腓骨筋群は活性化されず、例えされたとしても外側縦アーチの機能は低下しているでしょう。
それだけ小趾外転筋の機能は大切だと考えられます。
小趾外転筋の求心性収縮によって外側縦アーチの安定性は向上します。また、立脚後半相になるにつれて足部・足趾の背屈が生じるため遠心性収縮によって安定性を維持している必要があります。
そのため、トレーニングの中では足関節・足部中間位でのエクササイズを行うことも必要ですが、足部MP関節伸展位におけるエクササイズも同様に必要性が高いものです。
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外側縦アーチとの関係
前項でもお伝えしましたが、外側縦アーチに対する腓骨筋群の適切な機能を得るには、小趾外転筋が適切に機能していることが必要です。
その理由としては、小趾外転筋の収縮による外側縦アーチの高さが出せていない状態では、腓骨筋がいくら頑張ったとしても腱の部分だけでアーチを引き上げることは困難であるからです。
外側縦アーチは、踵骨から立方骨・第5中足骨から成るアーチのため、腓骨筋腱だけでそれらを支える・アーチの安定を維持することは難しいと考えられるでしょう。
そのため、『外側縦アーチの機能向上には腓骨筋群の機能が大切であるが、その腓骨筋群の活動を適切なものにするためには小趾外転筋の機能が大切である』ということです。
長腓骨筋に関しては、遠位付着部のバリエーションが非常に豊富です。
第1中足骨基部や内側楔状骨、第4・5中足骨基部、第2中足骨基部、踵骨などに付着しています。
詳しくはこちらの記事をご参照ください。
このことを踏まえると、外側縦アーチと1列との関係、内側縦アーチとの関係、横アーチとの関係にまで発展してきます。
縦・横の足部アーチの安定には、小趾外転筋の機能を見逃すわけにはいかないでしょう。
股関節との関係
小趾外転筋の活動を促すエクササイズを行う際、大腿骨外転・外旋の代償が生じてしまうことは多々あります。
大腿骨の代償動作を抑えるためには、股関節内転筋群の活動を促す必要があります。これにより股関節がニュートラルな位置で安定することができます。
では、なぜ大腿骨が外転・外旋してしまうのでしょうか…?
それは小趾を外転・屈曲する、いわゆる足部外側での安定・支持を行うためには、後足部を回外させる必要があるためです。
小趾外転筋の機能不全を有する場合、動作パターンは足部回内が生じていると考えられ、そこから運動連鎖として大腿骨を内旋or過外旋させて代償します。
この状態から足部を回外しますから、大腿骨は外旋位になると考えられます。
大腿骨内旋の運動連鎖が生じている場合、足部だけを回外することは難しいと考えられます。足部回外するためには、大腿骨外転・外旋をセットで行わなければ、理想とする・求めている小趾外転筋の活動は得られないかもしれません。
この場合、足部回外を促し、それを保持した上で、内転筋の活動による大腿骨内転・内旋させ、股関節ニュートラルを獲得するのが良いでしょう。
話をまとめるとこの様な感じです。
→ 股関節ニュートラル獲得 → 足部回外位で小趾外転筋を活性化
上記の理由で内転筋群の活動を促しますが、それと同時に殿筋群の活動も促す必要もあります。
外転・外旋:中殿筋後部、深層外旋筋群
内転・外旋:大殿筋
これらの筋群が同時に伸張性収縮することで、股関節の安定性が得られます。
もし活動が伴ってなければ大腿骨内転・内旋が過剰なものとなり、それ自体が新たな代償動作・機能不全となりかねません。股関節を求心位で保持できているかも定かではありません。
機能改善のために求める動作と反対の機能にも目を向けて、考慮・介入する必要があるのではないでしょうか。
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