【後足部・中足部・前足部の機能解剖】歩行に必要な足部機能

歩行に必要な後足部・中足部・前足部の機能 専門家向け記事

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足部の役割

歩行において、足部を考慮することは避けて通れません。足部の機能を知らずして、歩行は診れないでしょう。

地面と唯一接しており、多くの骨が密集し何層にも筋肉が重なり、身体を支え重心を移動させている重要な身体部位です。

歩く女性の足裏

今回は、この足部について歩行から考えて必要な能力を、後足部・中足部・前足部に分けて私自身の考えをまとめていきます。

これまで色々参考書を読んできたけど分からない方臨床で考えながら試しているけど点と点が繋がらない方には、ぜひ一度目を通していただきたい内容となっています。

足首、特に内側を押さえている人

歩行における足部の役割としては、大きく分けて以下の3つがあると考えています。

①接地の衝撃吸収
②立脚の支持
③推進のための安定

①立脚初期〜荷重応答期において、地面に対する身体の重さの衝撃を吸収するように後足部が柔軟に対応していきます。

②立脚中期では身体を支持するために中足部の安定性が必要となり、前額面や水平面における代償を最小限にする必要があります。

③立脚後期では、身体を前方へ推進させるために前足部の剛性を高め安定させ、足関節がテコの起点となるようにする必要があります。

これらが足部それぞれの主な役割になると考えています。全体を通して足部は安定している必要がありますが、諸所タイミングにおいて可動が求められている部分になります。

後足部の適応

後足部は回外することで安定し、回内することで不安定になります。
踵骨の動きに言い換えると、踵骨が内反すれば安定し、外反すると不安定になります。

後足部の回内外

補足になりますが、『後足部の動き=踵骨と距骨で構成される距骨下関節の動き』になります。

足部は安定していることが重要な部位になりますので、基本は後足部回外での安定が必要となります。

ただし、立脚初期では床からの反力が強く生じるために、わずかに回内して衝撃を吸収する必要があります。回外位で接地していくと、重心が外側へ偏位して歩行の不安定性に繋がります。

踵接地では踵骨の真ん中ではなく軽度外側から接地していきますので、後足部回内位とも違ってきます。わずかに回内というのが肝となるでしょう。これが出来ない場合は、後足部で回内せず中足部以降で回内代償する可能性があります。それが構造変化や機能不全に関係してくるものとなります。

踵骨と腓腹筋の関係

直接的に後足部回外、いわゆる踵骨を内反させる作用を有するのは腓腹筋です。

過剰な回外位や回内位では、前者は腓腹筋が短縮後者は過緊張してくると考えられます。

腓腹筋が硬く緊張していると、足関節背屈の可動性も低下してくるため、適切に踵接地できる状態ではない可能性が高くなります。

腓腹筋・ヒラメ筋のイラスト

足関節の可動性が低下している場合、足部を可動させることで代償します。足部が動くということは、いわば足部は不安定な状態なので、足部の各関節は無理矢理動かされてしまっているかもしれません。

この不安定が長期的なものになると、筋や靭帯の弛緩による病理学的問題に移行する可能性が高くなります。外反母趾や外脛骨、足底筋膜炎などの病態は、このメカニズムに由来しているかもしれません。

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中足部のアーチ構造と安定

中足部は舟状骨や立方骨、楔状骨によって構成される部分であるため、足部アーチ構造による安定が要求される部分になります。

足部・足関節の骨と関節の名称のイラスト

足部には縦アーチと横アーチが存在しますが、舟状骨は内側縦アーチ、立方骨は外側縦アーチの頂点であり、楔状骨は横アーチを構成し、基本的には動きの少ない部分になります。

舟状骨と内側縦アーチ

舟状骨は距骨と関節を構成するので、後足部からの影響は受けますが、後足部には影響を与えません。

後足部が回外すると距骨が引き上がるため、それに伴い舟状骨も引き上がります。その結果、内側縦アーチも高まるので、中足部の剛性・安定性は向上します。

足部内側縦アーチのイラスト

舟状骨が引き上がった位置を保つためには、後脛骨筋の作用がとても重要です。後脛骨筋は、脛骨から舟状骨・楔状骨・立方骨・中足骨に付着するため、下腿が後足部に与える影響、後足部が下腿に与える影響、前足部の影響を受けます。

特に『下腿が後足部に与える影響』が大切で、これは脛骨に付着を有していることが大きいと考えています。下肢の荷重軸は腓骨ではなく脛骨であること、大腿骨・寛骨・仙骨からの運動連鎖の影響を受けることが理由です。

後脛骨筋・長母趾伸筋・長趾屈筋

付着部の関係から、後脛骨筋は内側アーチだけでなく、外側縦アーチや横アーチにも影響を及ぼします。外側縦アーチについては後述しますが、横アーチは中足部において楔状骨レベルの横アーチです。

内側・中間・外側3つの楔状骨で構成されますが、中間楔状骨が頂点となります。各関節の可動性は非常に少なく、中間楔状骨は基本的には挙上のみで下制の動きは生じません。中間楔状骨を下制へ動かせてしまう場合、横アーチの破綻、骨アライメント不良、靭帯の弛緩など、それに伴う病態が生じてくると考えられます。

立方骨と外側縦アーチ

立方骨は踵骨と関節を構成するので、後足部からの影響を受け、逆に後足部にも影響を与えます。

踵骨が内反すれば相対的に立方骨が挙上し、反対に立方骨が挙上すれば踵骨は内反することになります。

足部外側縦アーチのイラスト

立方骨を挙上させるためには、長腓骨筋の作用がとても重要です。長腓骨筋は立方骨直下を走行しているため、立脚期における筋活性・出力の程度が肝となります。長腓骨筋は、腓骨から第1中足骨に付着しているため、後足部が下腿に与える影響と前足部の影響を受けます。

長腓骨筋・短腓骨筋・前脛骨筋・長趾伸筋

後足部・下腿や前足部の状態によって長腓骨筋の活性や出力は変わってくるため、『立方骨が後足部に与える影響』というのはそこまで大きくないのではないかと考えています。立方骨や長腓骨筋は影響される側、つまり変数であり、そのほかの部分からの影響の方が大きいのではないかと考えます。

腓骨筋エクササイズを行ったからといって、歩行や症状に変化を出せていないのであれば、上記のことが考えられるでしょう。

前足部の剛性と可動

前足部は中足骨・基節骨・中節骨・末節骨によって構成され、立脚期の後半から遊脚にかけて身体重心を前方へと推進させる役割を有します。

ただし、前足部の機能だけで推進をするというよりも、【踵接地から立脚中期で生成されたエネルギーをロス無く次の一歩に繋げる】という考え方が良いかもしれません。

後足部と中足部の適切な機能によって積み上げられてきたものが、前足部の機能で良くも悪くも転じることになります。

内在筋と横アーチ

立脚後期において大切なのは、中足骨レベルの横アーチ機能です。

足部のMP横アーチのイラスト

短趾屈筋や中様筋・骨間筋、母趾内転筋がアーチ構成に関与します。
これらの機能不全が生じている場合は、横アーチが低下するために幅の広い足、いわゆる“開張足”になります。それに伴い、外反母趾や内反小趾、槌指、浮指などの足趾代償が強く生じてしまう可能性が高くなります。

足底の筋

このような前足部の変形は、足部全体における筋出力の低下や安定性・剛性の低下が由来しているために、「床面に対して骨の接地面」「骨と骨の接地面」を増やすことで安定させている可能性が高いです。

後足部・中足部で賄えない分を前足部で代償したり、後足部・中足部で代償したものを前足部で更に代償したり、ということが考えられます。

前足部は後足部・中足部の状態によって大きく変わりますので、後足部・中足部が回外している状態であれば横アーチは保持しやすく、回内している状態では横アーチが破綻しやすいと考えられます。過剰に回外している場合は、前足部回内の代償によって均衡を保つことも珍しくありません。

後足部の回内外

これらのことから、中足骨レベル横アーチの機能不全があると分かった時に、介入するべき部位は前足部でないことがお分かりいただけるかと思います。

まずは後足部、そして中足部、それらの問題が改善された上での前足部です。
歩行においては、「問題となる歩行相のひとつ手前を考えるべきである」ということでもありますので、臨床でも常に頭の片隅に置いておくのが良いでしょう。

踵離地とMP関節伸展

立脚後期の後、足関節が底屈し踵骨が床から離れ、MP関節が伸展することで、足趾へと荷重していきます。

前項では、前足部は安定していることが大切だと記載しましたが、踵離地の後ではMP関節での可動が求められます。前足部では「安定」と「可動」という相反している機能を、適切に使い分ける必要があるということです。中足骨レベル横アーチは安定させたまま、基節骨が伸展していき柔軟に対応することになります。

歩く女性の足

MP関節が伸展することで、ウィンドラス機構が作用します。このメカニズムは、足底腱膜の張力によって内側縦アーチが高まることで、足部の剛性が高まり、蹴り出し時の推進を生み出すものになります。動くことで安定するということです。

立脚前半において、足関節背屈の制限があった場合に足趾過伸展の代償が確認されることがあります。この場合、立脚後期で足関節背屈が生じず立脚後半相が短くなり、すぐに足趾へと荷重するような歩行となる可能性があります。このような方の場合、足底の第2-4中足骨頭部に胼胝が形成されているのは臨床上多く見受けられるかもしれません。

MP関節が伸展することで、母趾球への荷重が適切に行われます。MP関節伸展の機能不全がある場合、前足部を回内させることで母指頭部へと無理に荷重させるような代償を引き起こすことがあります。前方への推進をするはずが、側方への動揺を伴う蹴り出しになってしまうため、外反母趾のような病態に繋がるでしょう。

MP関節が伸展し、末節骨まで荷重され、遊脚していきます。槌指や浮指の病態では、足趾への適切な荷重というのは生じないため、さらに中足骨領域にかかる負担というのは増加するかもしれません。前項でも記載しましたが、これは「後足部・中足部で賄えない分を前足部で代償」・「後足部・中足部で代償したものを前足部で更に代償」ということが考えられます。

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参考文献

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