下肢の神経学的評価:感覚・運動神経の検査と神経伸張テストの評価方法

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腰椎神経根症状に対する評価方法

今回の記事では、”下肢の痺れ・痛み・感覚障害・運動障害が腰椎神経根の問題で生じている”と疑われる際に行うべき評価・スペシャルテストをご紹介致します。

腰痛患者に対してスクリーニング評価として行なっていただいても良いと思いますが、リスクを考えると以下の内容をしっかりと評価するべきであると感じます。

腰・骨盤を押さえる女性

わずかな神経根症状を見逃して、後々大変な問題になることを防ぐこともできますので、セラピストにとっては必須の知識です。

記事の内容としては、簡便に行うことができる、感覚・運動神経の評価と神経伸張テストの方法を解説していきます。

骨盤帯の評価をする男性セラピスト

神経伸張テストでは、感度・特異度・尤度比の話を交えて、より信頼性のあるものを選択できるようにすること、そして各テストをどのように解釈していくべきかを解説していきます。

ではいきましょう!

感覚・運動神経検査

感覚神経の検査は、デルマトーム(Dermatomes:皮膚分節)を参考にして行います。

運動神経の検査は、ミオトーム(Myotomes:筋節)を参考にして行います。

感覚検査

デルマトームは、単一の脊髄神経によって供給される皮膚の感覚神経の領域です。特定の皮膚領域から脳に感覚を繋いでいます。

皮膚感覚はデルマトームに沿って分節状に配置をしているため、感覚異常の分布を評価することで、病巣レベルを確認することができます。

しかし、デルマトーム図は30種類以上存在しており、各種のデルマトーム図の適否に関しては一致した見解がありませんので、あくまでも確認・参考程度にする方が良いかもしれません。

腰神経のデルマトームです。

L1腰背部・大転子・鼠蹊部
L2腰背部・大腿前面〜膝前面
L3上臀部・大腿前内側面・下腿内側面
L4臀部内側面・大腿外側面・下腿内側面・足背内側面・母趾
L5臀部・大腿後外側面・下腿外側面・足背外側面・足底内側面・第1〜3趾底面

仙骨神経のデルマトームです。

S1臀部・大腿後面・下腿後面・足底外側面・第4,5趾底面
S2臀部・大腿後面・下腿後面
S3股間・大腿内側面〜膝内側面
S4会陰・生殖器・仙骨下部

特定の皮膚領域に軽い接触を用いて、罹患側・非罹患側で比較、あるいは上位・下位レベルで比較しましょう。

数値化することで経過が追いやすくなります。
『問題のない領域の感覚を10とした時に、障害のある領域がどの程度の感覚に感じるか』を患者に問うと良いでしょう。

上記のデルマトームを覚えるのが大変だと思いますので、大体の位置を以下にまとめておきます。最低限この部位は覚えておくと良いでしょう。

デルマトームまとめ

  • L1:鼠蹊部
  • L2:大腿前面
  • L3:膝関節内側
  • L4:内果
  • L5:足底内側
  • S1:足底外側・大腿後面
  • S2:大腿後面

筋力検査

ミオトームは、単一の脊髄神経から筋肉まで伸びている運動神経の分布のことです。

特定の筋節の筋力を評価することは、運動神経がどのレベルで障害されているのかを特定するのに有用となります。

筋節の評価は、抵抗による等尺性収縮を用いて評価していきます。

L2股関節屈曲
L3膝関節伸展
L4足関節背屈
L5母趾伸展
S1足趾屈曲

筋力の評価のみならず、視診・触診を用いて筋萎縮の有無も併せて確認するとさらに良いでしょう。

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Slump Test

神経伸張テストの1つ目は、有名なSlump Testです。

以下の表は、感度(Sensitivity)・特異度(Specificity)・陽性尤度比(LR+)・陰性尤度比(LR-)をまとめています。

SensitivitySpecificityLR+LR-
Stankovic et al.83551.820.32
Majilesi et al.84834.940.19

Slump Testの診断制度に関しては議論が継続されていますので、評価結果の解釈に関しては注意が必要だと考えられます。

両者の研究ともに、感度はある程度高い数値であるため、陰性の場合は神経根症状ではないと考えて良いかもしれません。
また、Stankovicらの研究によると特異度は55と低いため、検査が陽性だからと言って神経根症状であると考えるべきではありません。

Slump Test単独ではなく、以下で解説するStraight Leg Raise Testと併せて考えていくと良いでしょう。

評価方法

  1. 座位にて後ろで手を組みます
  2. 骨盤はニュートラルを保持し、胸腰椎を屈曲させます
  3. 頸部を屈曲させます
  4. セラピストは脊柱に圧縮力を加えます
  5. 膝関節を伸展させます
  6. 足関節を背屈させます
  7. ⑥で症状を引き起こす場合、背屈位を保持し膝関節を屈曲させても症状が存在する場合は陽性となります

Slump Testにはいくつか注意点があります。

注意点

  • 非罹患側から行いましょう
  • 膝関節伸展あるいは足関節背屈時に症状が生じる場合、その状態を保持したまま頸部を伸展させます。
    症状が緩和する場合は、末梢神経の問題が考えられます。
    特に症状に変化がない場合は、神経伸張の問題以外に、単にハムストリングの伸張性の問題も考えられます。
  • ”日常で感じる症状が再現されるのか”を確認しましょう

無兆候の方でも下肢に症状が生じる方がいますので、患者さんには普段感じている症状が再現されるのかを問診しましょう。

再現症状ではなく、単に筋の伸張感の場合もありますので、そこは丁寧に鑑別していきましょう!

Straight Leg Raise Test

Straight Leg Raise Test(SLR Test)は神経力学的テストであり、神経組織の機械的ストレスまたは圧迫に対する感受性を確認していきます。

SLRは、腰椎椎間板ヘルニアの結果として神経組織が関与することに対して、Rule-inまたRule-ontするために使用する神経伸張テストです。

SensitivitySpecificityLR+LR-
Charnley78642.160.34
Knuttson96101.060.4
Hakelius & Hindmarsh96171.150.24
Spangfort97111.080.27
Kostelijanetz et al.76451.380.53
Lauder et al.19841.610.90
Albeck82211.030.86
Gurdijan81521.680.36
Kerr et al.98441.750.05
Vroomen et al.97572.230.05

特異度はそこまで高くありませんが、感度は比較的どの研究においても高い値を示していますので、SLRが陰性であればRule-out(除外診断)して良いと考えられます。

評価方法

  1. 背臥位で下肢は伸展させます
  2. 膝関節を伸展位に保持したまま股関節を屈曲させます
  3. 下肢後面の伸張感または腰痛・下肢症状が生じるまで挙上します

症状が主に腰痛である場合は、脊髄の前嚢に圧力をかけている椎間板ヘルニアの結果である可能性が高いです。
主に下肢症状がある場合は、神経組織に圧力をかける椎間板ヘルニアはより外側にある可能性が高くなります。

どちらの場合も、”普段感じている症状が再現される場合に陽性”となります。単なるハムストリングの伸張感では陽性にならないことに注意しましょう。

鑑別しにくい場合、症状を感じない挙上角度まで降ろした上で、股関節内転・内旋のストレスを加えると良いでしょう。このストレスを加えて症状が生じる場合は、坐骨神経の感作が疑われます。

Well (Crossed) Leg Raise Test

先ほどの感度・特異度・尤度比の表は、罹患側の方に焦点を当てた場合です。

Well Leg Raise TestまたはCrossed Leg Raise Testでは、非罹患側の下肢の伸展挙上の際に症状が再現されるかを評価していきます。

SensitivitySpecificityLR+LR-
Knuttson25955.00.79
Hakelius & Hindmarsh28882.330.82
Spangfort23881.910.86
Kostelijanetz et al.24100NANA
Kerr et al.439714.30.59

SLR Testとは逆で、感度が低く特異度が高いテストということが分かります。
つまり、非罹患側の下肢伸展挙上で症状が再現される場合、Rule-in(神経根症状と判断)して良いと考えられます。

評価をする際には、非罹患側から評価していくことを強くオススメします。
患者さんの身体・心理的不安も少し軽減することができますし、我々もその方が評価を進めやすいと考えられます。

また、最初に患者さん自身で自動運動を行っていただき、大まかな可動範囲を確認した上で他動での評価をした方がより安心・安全だと考えております。

Bragard Test

SLRを行った上で、足関節背屈を加えるBragard Testになります。

先ほどまでと同様、神経根症状を再現するテストになります。
より強く症状を引き起こす可能性がありますので、注意して行っていきましょう。

SensitivitySpecificityLR+LR-
Modified Bragard Test69.367.422.120.47

感度・特異度・尤度比はそこまで高くありませんが、これまでの評価を踏まえた上で結果を解釈すると良いでしょう。

足関節背屈を加えるだけでなく、内反・外反のストレスを組み合わせることで坐骨神経から分岐する神経を鑑別することもできます。

鑑別

  • 背屈+外反:脛骨神経
  • 背屈+内反:腓腹神経
  • 底屈+内反:腓骨神経

これらで症状の増悪がみられる場合、神経根症状だけでなく、末梢神経の絞扼性障害も考慮すると良いかもしれません。

Double Crush Syndromeといい、脊椎での問題と四肢末梢での問題の両方が組み合わさっていることがあります。例えば、足根管や腓骨頭付近での神経絞扼、筋・筋膜での絞扼などが考えられます。

介入していく中で症状が改善されていかない場合などは、これらを含めて考えていきましょう。

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Femoral Nerve Stretching Test

Femoral Nerve Stretching Test(FNST)は、大腿神経を伸張させることで、鼠蹊部・大腿前面などの大腿神経領域において症状が再現するテストとなります。

一般的には、腹臥位にて股関節伸展・膝関節屈曲を他動で行うテストになりますが、別報として側臥位にて行うこともできます。

以下の表で、感度・特異度・尤度比をそれぞれ比較してみましょう。

SensitivitySpecificityLR+LR-
FNST84NTNANA
Crossed FNSTNTNTNANA
Slump FNST100836.000.00

Crossed FNSTは、非罹患側において大腿神経を伸張させた時に、症状が再現されるかを評価するものになります。

3つのテストを比較すると、Slump肢位でのFNSTが最も信頼性のあるテストだということが分かります。

テストが陽性であればRule-in、陰性であればRule-outが可能である評価ですので、腹臥位よりも多少手順がかかりますがSlump FNSTを選択した方が良いと考えられます。

評価方法

  1. テスト側下肢を下にした側臥位をとります
  2. 反対側下肢を抱えるようにして脊柱・股関節を屈曲させます
  3. 他動的に股関節伸展・膝関節屈曲させます
  4. 症状が再現される場合に陽性となります

※途中で症状が再現される場合、その肢位を固定した状態で頸部を伸展させます。この時に症状が軽減され、さらに膝関節屈曲が可能となる場合、大腿神経の問題があると考えられます。

頸部を伸展させても膝関節屈曲の可動範囲に変化がない場合、単に大腿直筋の伸張性の問題も考えられます。筋の問題か、神経の問題かを鑑別するには非常に有効なテスト方法ということです。

まとめ

ボリュームの多い内容となりましたが、いかがでしょうか。

神経伸張テストは症状を増悪させてしまうリスクもあるため、慎重かつ丁寧に行っていきましょう。
まずは、Slump TestやActive SLRなど、自動運動で状態を把握してから、他動で行っていくことをオススメします。

単一の評価だけで捉えるのではなく、感覚・運動神経の検査、神経伸張テスト、症状の範囲や再現肢位、画像所見など、評価項目を組み合わせて考えていくと良いでしょう!

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参考文献

  1. Homayouni K, Halimeh Jafari S, Yari Hossein. Sensitivity and Specificity of Modified Bragard Test in Patients with Lumbosacral Radiculopathy Using Elecrodiagnosis as a Reference Standard. J Chiropr Med. 2018; 17:36-43.
  2. Daniëlle Awm van der Windt et al., Physical examination for lumbar radiculopathy due to disc herniation in patients with low-back pain, Cochrane Database Syst Rev, 2010
  3. W L Devillé et al, The test of Lasègue: systematic review of the accuracy in diagnosing herniated discs, Spine, 2000
  4. Javid Majlesi , Halit Togay, Halil Unalan, Sadk Toprak, The sensitivity and specificity of the Slump and the Straight Leg Raising tests in patients with lumbar disc herniation, J Clin Rheumatol, 2008

コメント

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