【論文レビュー】立位姿勢における足部と骨盤のアライメントの関係

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足部・骨盤の立位アライメントの関係に関する論文レビュー 専門家向け記事

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論文レビュー

今回の記事は、『The Relationship Between Foot and Pelvic Alignment While Standing(立位姿勢における足部と骨盤のアライメントの関係)』の論文をもとに私見を展開していく内容となっています。興味のある方、お時間のある方は、ぜひ原著をご一読してみてください。

学校教育や多くの文献で、下肢の運動連鎖について紹介されているかと思います。
骨盤前傾ー股関節内旋・骨盤後傾ー股関節外旋や脛骨内旋ー足部回内・脛骨外旋ー足部回外というようなものですが、臨床においてはこのように綺麗な運動連鎖になっている方は数少ないでしょう。

股関節・膝関節・足関節を含む下肢全体のイラスト

それは、ベースの運動連鎖から少し代償することで、日常の動作を行なっているからではないでしょうか。綺麗な運動連鎖が行えていれば、おそらく機能不全・機能障害にはならないでしょう。代償することで身体を動かしやすい状態にする、少しでも楽な状態を作り出しているのでしょう。その方が効率が良いと身体が(脳が)判断しているのかもしれませんが、長期にわたって代償動作を行なっていると、それが起因となって新たな病態を作り出してしまうと考えられます。

生活する上で“立つ”・“歩く”という動作は、移動手段として使用頻度の高いものです。そのため、立位の状態における下肢の骨・関節運動の関係性を知ることは、臨床家にとって必要不可欠なことであると考えて良いでしょう。

歩く女性の足裏

以前発表された研究(Khamis and Yizhar, 2007)では、立位で誘発される足部の過回内が脛骨・大腿骨内旋、骨盤前傾と連動することがわかったものの、足部過回内の変化と骨盤の反応との間に相関は認められず、足部と骨盤のアライメントには弱い関係があると結論づけられています。

今回ご紹介している論文は、傾斜台を使用して踵骨を外反させることで、脛骨・大腿骨・骨盤の動きがどのように関係しているのかを研究しています。

研究の概要

35人の健康な被験者(男性15人、女性20人)を対象に、0度・10度・15度・20度と床面を内側に傾けることで足部の過回内を誘発させ、その時の踵骨外反角度(前額面)、下腿・大腿の回旋角度(水平面)、骨盤傾斜角度(矢状面)を測定し、4つ角度における立位姿勢を比較されています。被験者の除外基準は、筋骨格系の損傷歴、距骨下関節外反制限(<6.6度)、外反扁平足や内反足などの足部のアライメント異常、脚長差(>5mm)であり、これらが該当しないことが条件となっていました。

結果としては床の傾斜角が大きくなると有意な変化が生じ、踵骨角で左7.05°・右5.94°、脛骨内旋で左4.95°・右4.74°、大腿骨内旋で左2.91°・右4.21°の変化が生じていた。骨盤位置の変化は平均1.11°で、40%の症例が骨盤前傾方向に2°~3°の変化を示していたと報告されています。(結果のリンクはこちらです。

骨盤傾斜角度と踵骨・下腿・大腿の角度の相関関係は、4つの立位姿勢全てにおいて骨盤と大腿骨のアライメントの間に有意な関係があったとしており、大腿が内旋するほど骨盤前傾角度は大きくなるというものでした。その他、足部と骨盤のアライメントの関係においては有意ではなく、足部・下腿・大腿の角度のそれぞれの関係においても有意な関係はみられなかったという結果を示しています。しかし、大腿骨と骨盤のアライメントに関しては、下腿が有意に影響するとしており、下腿のアライメントを評価することは近位のアライメントを考慮するには有効な方法であると示唆しています。

考察としては、大腿骨内旋位は骨盤前傾位と連動していたことから、矢状面の骨盤アライメントを修正することは、水平面の大腿骨アライメントを修正することによって達成される可能性があるとしています。そして、踵骨外反と脛骨内旋の関係では有意な影響が確認できず、実に疑問が残ることとしています。

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私見

私の解釈としては、踵骨外反いわゆる距骨下関節外反によって、脛骨内旋が連鎖することもあれば、脛骨が内旋せず他の部位で代償することもあると考えらるということです。

また、立位姿勢ではさまざまな代償システムが作用しており、踵骨外反と骨盤前傾は連動するものの相関関係は確認できないので、踵骨外反=骨盤前傾とは言えないとなります。その間に存在する、下腿や大腿骨で如何様にも代償可能ということですね。

脛骨内旋の角度には左右差がなかったものの、踵骨角は左が1.11°大きく、大腿骨内旋は右が1.3°大きいという結果があります。研究内では比較・検討していないものの、私としては非常に興味深いことだと感じます。立位で下肢全体が内旋方向へ誘導されていく中で、左側では大腿部ではなく足部での代償を、右側では足部よりも大腿部での代償を行うということです。脛骨は中間部位であるため、大腿部・足部の上下の部位の緩衝材のような役割を担っているように考えられます。

骨盤の左右への回旋、あるいは骨盤を左右の寛骨それぞれ計測していれば、より興味深い内容になっていたのではないかなと考えます。大腿骨内旋に左右差が生じているので、骨盤による左右差の影響は多少なりともあるのではないか、もし骨盤が左右どちらかに回旋していたり寛骨の前傾角度に左右の違いがある場合、股関節および足関節・足部の病態に繋がりやすい傾向というものがあるのではないか、なんてことを考えたりしてしまいます。

研究の結果・考察でも、骨盤と大腿骨の関係は有意に存在しているということが述べられていますが、これは股関節の機能解剖より説明がつくものです。骨盤が前傾すれば、股関節前面の腸骨大腿靭帯・恥骨大腿靭帯の機能によって大腿骨が内旋します。そこに股関節周囲の筋が影響し、股関節内旋・外旋をコントロールしているものと考えられますが、右に比べて左側においては大腿骨内旋が少ないことから外旋筋が過活動していたり、靭帯の伸張・弛緩によって姿勢制御を行なっていることを想像してしまいます。(妄想です。)

もっと妄想すると、そもそも平地の立位姿勢で骨盤は右回旋していて、既に右大腿骨は内旋位、踵骨は内反位になっていた可能性もあったのでは?なんてことも考えてしまいます。踵骨外反の可動域制限がない方を対象として研究が行われていますが、姿勢制御においては右側が踵骨外反しにくい結果となっているので、身体が・脳が左右同じように同じ量で踵骨外反しているつもりでも、スタート地点が違うことなんかも考えられてしまいます。立位で強制的に傾斜させられた環境で、左は踵骨外反を…右は少し外反しないでおこうかな…なんて器用なことはできないと思いますので、そもそもの立位姿勢の問題、その人が有している姿勢制御の部分が影響しているのではないかなと感じます。

同じ部位に同じような症状を有している方でも、姿勢・動作やそれを補完する代償はそれぞれ違ってきますので、一概にコレが問題!と決めつけることはできませんし、100%の答えはないのではとも思います。ただし、運動連鎖の概念、一般的に知られているもので良いと思いますので、これを頭の片隅においておくことは必要ですし、そこから外れている部分・違和感を感じる部分を細かく評価していくことが必要になるのではないでしょうか。

参考文献

Sam Khamis, Gali Dar, Chava Peretz, Ziva Yizhar, The Relationship Between Foot and Pelvic Alignment While Standing, Journal of Human Kinetics volume 46/2015, 85-97 

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