内臓からの関連痛:骨盤内疾患の症状・特徴

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骨盤内疾患の症状と特徴のトップ画像 病態

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内臓の病理学的疾患

内臓疾患の多くは、初期症状として体幹・頸部の痛みを引き起こすことがあります。

関連痛の範囲によっては特定の内臓疾患を示唆しますので、セラピストは病歴・既往歴および身体検査の評価結果から、わずかな手がかりを拾い上げるよう注意する必要があります。

過去の記事で、問診や触診における評価ポイントをご紹介していますので、こちらも併せてご参照ください!

骨への転移が症状の原因となる可能性があるため、”がん”の既往歴のある人には特に注意が必要になります。

腰痛を有する60歳以上の男性は、腰部・骨盤帯領域に症状を引き起こす”がん”を除外するために、医師の診察を受けるよう勧める必要があるかもしれません。(特に、前立腺など泌尿生殖器系、直腸などの消化器系)
腰部・骨盤帯領域の症状がある女性で、骨盤内診を受けていない場合は、骨盤内診を含めた医師による精密検査を受ける必要があるかもしれません。

”原因不明の体重減少”・”腸や膀胱の習慣変化”・”長引く咳”・”悪寒”・”原因不明の発熱”・”皮膚病変の変化”がある場合は、機械的な筋骨格系機能不全に伴う症状の有無に関わらず、内科系の医師の診察を受けることが推奨されます。

内臓関連痛の特徴

  • 原因不明の体重減少
  • 腸・膀胱の異変
  • 長期間の咳・悪寒
  • 原因不明の発熱
  • 皮膚病変

今回の記事では、骨盤内疾患の症状と兆候を女性・男性それぞれ分けてご紹介していきます。

女性特有の骨盤内疾患

子宮や卵巣の疾患は、腹部の痛みや腰部中央の痛み、仙骨部分の痛みの原因となりやすいです。

これらの疾患の多くは、内診時に”突然激しい痛み”・”嘔吐”・”腹部圧痛”・”骨盤周囲の圧痛”を伴う急性疾患を引き起こし、機械的な痛みと間違われることはありません。しかし、一般的な問題の中には、明らかな急性症状や徴候ではなく、不明瞭で曖昧な痛みを有する場合もあります。

子宮・子宮頸がん

骨盤内疾患の一般的な症状としては、大量出血や不規則な出血・月経痛・性交痛・不妊症などがあります。

子宮がんと子宮頸がんは、これらの疾患の中で最も深刻な疾患です。子宮頸がんは、断続的な膣からの出血や点状出血を除き、無症状であることが多いです。子宮および卵巣のがんは、大量の不規則な出血や閉経後の出血によって示されます。

お腹に手を当てている女性

これらの疾患はいずれも、腹部・腰部・仙骨部に限局した鈍い、びまん性の不快感および疼痛を伴うことがあります。これらの疾患は、女性の年齢が上がるにつれてますます多くなります。

子宮・子宮頸がんの症状

  • 不整出血
  • 月経痛
  • 性交時痛
  • 不妊症
  • 閉経後の出血
  • 腹部・腰部・仙骨部のびまん性の鈍痛

子宮の良性腫瘍および悪性腫瘍のいずれも、下腹部または中腹部に触知可能な腫瘤または膨満感が認められることがありますが、卵巣および子宮頸部の疾患は、腹部検査ではほとんど触知できません。

骨盤内炎症疾患

骨盤内炎症性疾患もまた一般的な疾患であり、卵管の感染が活発なときや感染症の治療後に腹痛や腰痛を引き起こすことがあります。感染時には、発熱・悪寒・重いor長引く月経・膀胱炎様症状・膣分泌物・月経時の異常な痛みなどの症状が現れます。さらに、性交時痛・不妊歴・下腹部圧痛などを訴えることが多くみられます。

この病態の慢性期は、痛みは月経周期とは関係がなく、鈍くびまん性で曖昧なものになります。
また、機械的な筋骨格系機能不全に特徴的な特定のパターンに適合しないことがあります。

子宮内膜症

子宮内膜症は、再発性の腰痛と仙骨痛の原因の一つとなります。

痛みは月経前および月経中に悪化します。

この疾患は30~40歳の女性に多く、一般的に閉経後には落ち着きます。

子宮内膜症の症状

  • 増悪と寛解を繰り返す腰痛・仙骨痛
  • 月経前後での症状の増悪

子宮内膜症は、本来は子宮の内側にしか存在しないはずの子宮内膜組織が、卵巣・腹膜などの子宮以外の領域で増殖・剥離を引き起こします。子宮の内側からはがれ落ちた子宮内膜組織は月経時に体外へ排出されますが、子宮以外の場所で増殖した子宮内膜組織は腹腔内にとどまることで組織間の癒着を形成したり、増殖が持続することで組織を圧迫し炎症や痛みを引き起こす原因となります。また、不妊の原因になっていることもあります。

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男性特有の骨盤内疾患

男性特有の骨盤内疾患は、男性の生殖器系からの関連痛によって引き起こされる腰痛・股関節痛・鼠径部痛・仙腸関節痛・仙骨痛を経験する可能性があります。

腰痛・膀胱機能の変化・性機能障害は、男性の生殖障害に関連する最も一般的な症状になります。

立位での後屈

精巣がんの好発年齢は20~30歳代が多く、小児期にも比較的多く罹患されるため、他部位のがんとは大きく異なっています。罹患率は、10万人に1~2人でかなり稀な病態です。ただし、20歳代~30歳代の男性に限れば、がんの中で最も罹患率の高いがんになるため注意が必要となります。

精巣がんの症状

  • 腰痛
  • 股関節痛
  • 鼠蹊部痛
  • 仙腸関節痛
  • 仙骨痛
  • 睾丸周囲の痛み・腫脹

精巣がんの最も一般的な初期徴候は、びまん性の睾丸痛、腫れ、硬さ、またはこれらの所見のいくつかの組み合わせを伴う精巣の肥大です。痛みがなく、男性が定期的に精巣自己検診を行っていない場合、状態が検出されない可能性があります。

腰部・骨盤帯・股関節領域の痛みにおいて、症状の特徴と機械的な筋骨格系機能不全が合致しない場合は、このような病態も疑った方が良いと考えられます。

前立腺に関しては後腹膜領域の器官になりますので、今回の骨盤内疾患では取り扱わず次回の記事でご紹介いたします。

まとめ

個人的には、子宮内膜症の既往歴を有している腰痛・股関節痛の患者が多いという印象を受けます。筋骨格系機能不全で説明でき、介入の経過が良好なケースもありますが、そうでない場合もあります。

例えば、姿勢や動作によって変化しない腰部の慢性的な鈍重感・痛み、月経周期に伴って腰痛が悪化するといったケースです。婦人科へすでに受診されている方は良いのですが、そうでない方は早めの受診を勧めた方が良いでしょう。

そして、我々セラピストができることとしては、腰部・股関節周囲筋やFasciaへの介入や骨盤底筋群のエクササイズ指導などではないでしょうか。

子宮内膜組織へ直接アプローチすることはできませんが、周囲の筋・筋膜組織への介入することで間接的に良い影響を及ぼせるのではないかと考えます。

内臓からの関連痛のメカニズムと、内臓ごとの関連痛の領域に関しては、こちらの記事をご参照ください。

内臓からの関連痛が疑われる際の、問診や触診の評価方法のポイントに関しては、こちらの記事をご参照ください!

こちらの記事では、後腹膜領域(腎臓・前立腺)と消化器系疾患の関連痛と症状をまとめています!

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参考文献

Pathological Origins of Trunk and Neck Pain: PartI Pelvic and Abdominal Visceral Disorders:WILLIAM G. BOISSONNAULT, CHARLES BASS, MD, JOSPT, 1990

コメント

  1. […] 内臓からの関連痛:骨盤内疾患の症状・特徴骨盤内疾患における内臓からの関連痛について解説しています。骨盤内臓器は女性・男性それぞれ特有の構造をしているため、病態も違って […]