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下肢疾患の評価
下肢疾患の評価では、それぞれの病態把握が重要と考えられています。
例えば、膝関節疾患における膝前面下部の痛みであれば、膝蓋下脂肪体や膝蓋腱、膝蓋支帯、半月板、前十字靭帯、伏在神経膝蓋下枝、腰部神経根症状など多くの病態が考えられます。『何が痛みを引き起こしているのか?』というように、これらを鑑別することは大切なことです。
私は、”これだけ”で終わってしまう方が多いように感じます。
膝蓋下脂肪体の拘縮が痛みを引き起こしてしまっている場合、『なぜ膝蓋下脂肪体にストレスが加わっているのか?』を考えなければ、再度その問題を引き起こしてしまうことになるでしょう。
もう1つの例として、膝外反ストレスに伴う鵞足部の痛みが生じているとします。痛みを引き起こしている筋を評価して、その緊張を緩和すれば症状は落ち着くことでしょう。そして、膝の動きをコントロールするために内側広筋のトレーニングでも行うかもしれません。
しかし、本当にそれだけで良いのでしょうか?
ここからさらに考えて、大殿筋のストレッチやトレーニング、内側縦アーチのサポートをするようにインソール処方を行う方もいるかもしれません。
しかし、ここからもう一歩深く考えるべきかもしれません。
『なぜその部分が硬くなっているのか?』『なぜその部分の筋力が発揮できないのか?』ということです。
考えれば考えるほど堂々巡りになりますが、これを考える必要性は大きいです。むしろこれを考え評価・介入を行えば、鵞足部の緊張を緩和させるような介入は必要ないかもしれません。
前置きが長くなりましたが、今回の記事では下肢疾患に対する股関節・膝関節・足関節の関係性について、特に関節運動学の観点からまとめていきます。
※以下で使用している”可動性の評価”とは、緩みの肢位(LPP:Loose-Packed Position)における関節の遊び(Joint play)の評価を指します。
足部・足関節
足部・足関節の問題がある場合、底屈・背屈・外反・内反の可動性を評価します。
このどれかに制限が生じている場合、距腿関節における脛骨に対する距骨の腹側滑りや背側滑り、距骨下関節における距骨に対する踵骨の内側・外側滑りを評価します。
ここで考えていただきたいのが、この評価では主にOKCの場面を捉えているということです。
CKCの場面を考慮する場合、特に背屈動作では距骨に対する脛骨の前方滑りも評価するべきです。
さらに背屈動作を考えますと、距腿関節だけでは後足部の評価しか行えていません。中足部・前足部の評価も行うべきです。
他の視点で考えれば、距骨の評価を行うのであれば、距骨と関節を構成する踵骨・舟状骨を評価するべき考えられます。
ということで、距骨に対する舟状骨の可動性評価を行います。
同様に、舟状骨が関節を構成するのは内側楔状骨・中間楔状骨・外側楔状骨・立方骨になりますので、距骨に対する内側・中間・外側楔状骨の可動性を評価します。
立方骨は距骨だけではなく踵骨とも関節を構成するため、両方の意味で評価を行う必要があります。
そして、内側楔状骨・中間楔状骨・外側楔状骨は、それぞれ第一中足骨・第二中足骨・第三中足骨と関節を構成し、立方骨は第四・第五中足骨と関節を構成します。これらの関節の可動性を評価することも必要となります。
脛骨−距骨の可動性
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距骨−踵骨の可動性
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距骨−舟状骨の可動性
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踵骨−立方骨の可動性
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舟状骨−立方骨の可動性
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舟状骨−内側・中間・楔状骨の可動性
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立方骨−第4・5中足骨の可動性
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内側・中間・外側楔状骨−第1・2・3中足骨の可動性
ここまで評価することが、足部・足関節としての関節運動の評価になります。
例えば、内側楔状骨に対する第一中足骨の頭側滑りに制限が生じている場合、第一中足骨が尾側に変位しているか内側楔状骨が頭側に変位している可能性や、単純に可動性に問題生じている可能性があります。
内側楔状骨が頭側に変位している場合、相対的に舟状骨が尾側に変位(下がっている)ことが考えられます。逆に舟状骨が下がっているから内側楔状骨が上がっているようにも考えられます。
このように考えていくと、舟状骨と関節を構成する距骨との可動性はどうなっているのか、そして距骨が関係する踵骨・脛骨・腓骨も評価するべきだと言えるでしょう。
そして、距腿関節を構成する脛骨と腓骨における”遠位脛腓靭帯結合”についても評価するべきです。遠位脛腓靭帯結合を評価するのであれば、近位脛腓関節も評価するべきだと考えるのが当然でしょう。
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膝関節
膝関節は、大腿骨・脛骨・腓骨・膝蓋骨で構成されています。
先程の流れで解説していきますと、近位脛腓関節を評価するべきだという考えになりましたね。近位脛腓関節を評価するのであれば、脛骨と関節を構成する大腿骨との可動性を評価していきます。
ということで、大腿骨に対する脛骨の可動性を評価します。そして、CKCの状態も踏まえて考えると、脛骨に対する大腿骨の評価を行うべきだという考え方もできます。
腹側・背側・内側・外側滑りをそれぞれ評価していきましょう。
大腿骨を評価するのであれば、関節を構成している膝蓋骨の評価も行いましょう。頭側・尾側・内側・外側の滑りの可動性を評価していきます。
ここで制限が確認される場合、それは膝蓋骨の可動性に問題が生じているのでしょうか?
例えば、大腿骨が内旋している場合、相対的に膝蓋骨が外側に変位している可能性があります。この場合、膝蓋骨の外側滑りに制限を感じ、内側滑りは可動性が大きいと感じるかもしれません。
このように考えると、大腿骨近位における評価もしないと適切な状態を把握できないと考えられます。
違う例を出しますと、脛骨が前方に変位してしまい、膝関節屈曲に制限が生じているとします。脛骨が前方に変位しているということは、相対的に大腿骨遠位は後方に変位していることになります。この時、大腿骨近位は前方に変位している可能性が高くなります。
大腿骨頭が前方に変位していることで、大腿骨遠位が後方に変位し、その結果として相対的に脛骨が前方変位しているとも考えられます。この場合、併発症状として股関節前方インピンジメントが確認されることもあるでしょう。
このように、関節運動を考慮するだけでも様々な病態が関係してくると考えられます。
股関節
股関節は、寛骨臼と大腿骨頭で構成されています。
同様の流れになりますので、寛骨臼に対する大腿骨頭の腹側・背側・内側・外側の可動性を評価していきましょう。
ここでもうお気づきかもしれませんが、『大腿骨に対する寛骨の可動性は評価するべきなのか?』という点です。
私自身これに対する評価方法を持ち合わせておりません。むしろ評価できるの…?と考えています。
では、考えなくて良いのか?と言われますと、それは少し違うように感じます。
例えば、寛骨が前傾・前方回旋している状態では、大腿骨は相対的に外転位・外旋位になりますので、大腿骨頭は腹側滑りの可動性が大きく感じたり、背側・尾側滑りの可動性に制限を感じるかもしれません。
この場合では、寛骨の後傾・後方回旋を促すことで、大腿骨頭の可動性が変化してくるのかを確認した方が良いでしょう。徒手的な誘導でも良いですし、筋収縮を利用しても良いです。変化がない場合、寛骨臼に対する大腿骨頭の可動性に問題があると考えられます。
このように考えますと、寛骨と関節を構成する仙骨との関係性も評価するべきだと考えられますが、だいぶ長くなってしまったので、今回の記事では足部から股関節までと致します。
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まとめ
下肢疾患に対して診るべきポイントとして、股関節・膝関節・足関節における関節運動の評価の流れについてまとめました。
「足部疾患の問題が、寛骨臼に対する大腿骨頭の可動性に問題があるために引き起こされてしまう」といったように、下肢全体の関係性が見えてくると臨床での幅が広がってくるかと思います。
まず全体的なスクリーニング動作を評価した上で、股関節・膝関節・足関節の三平面の可動性の確認を行い、問題のある部分をピックアップしながら行うと良いでしょう。
また、関節運動だけに着目しているため、その他の筋肉の問題については別で評価を行うべきだと考えております。その点に関しては注意していただいた方が良いかもしれません。
そして、今回の内容を深く理解するためには、関節面の凹凸について詳しく知っている必要があるかと思います。よくわからないという方は、調べていただけると良いでしょう。
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