外側大腿皮神経の走行バリエーション
腸腰筋・梨状筋との関係

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外側大腿皮神経

外側大腿皮神経(Lateral Femoral Cutaneous Nerve:LFCN)は、大腿前外側領域を神経支配する感覚神経です。

通常、鼠径靭帯の下の骨盤出口部で絞扼されやすく、これを絞扼性外側大腿皮神経痛と言います。

絞扼性外側大腿皮神経痛の典型的な症状は、痛み、知覚異常または感覚異常、および大腿前外側の痺れです。


このような臨床的な病態を、知覚(感覚)異常性大腿神経痛(Meralgia Paresthetica:MP)と呼びます。

ただし、外側大腿皮神経の分布には大きなばらつきがあるため、臨床症状は非定型であり個人差が大きい可能性があります。

また、腰部神経根症状などの他の原因との鑑別診断が必要となることが多いです。

この症状に関しては、こちらの記事でご紹介していますので、是非ご参照ください!

今回は、外側大腿皮神経の走行とバリエーションと腸腰筋・梨状筋との関係をご紹介していきます。

外側大腿皮神経の走行

外側大腿皮神経は、L2およびL3脊髄神経の後部によって形成されます。(これらの神経根の前部は閉鎖神経に寄与します)

神経は、腸腰靭帯より下の大腰筋の外側縁から出現し、腸骨筋前面の腸骨窩周囲を腸骨筋の深部まで横・斜方向に進みます。

鼠径靭帯の約3cm(1インチ)上で、外側大腿皮神経は緩やかに前方に傾斜し、腸骨筋膜の線維組織内にあります。

神経は鼠径靭帯の下を通過するか、場合によっては間を通過して、上前腸骨棘(ASIS)の内側約10-15mmの線維性区画内に入り、縫工筋前面を深く通過し筋膜まで達し、そこで前枝と後枝に分かれます。

前方線維と後方線維に枝分かれし、大腿前外側と大腿外側をそれぞれ支配します。

外側大腿皮神経の絞扼性神経症状により、大腿前外側(膝まで)と大腿外側の感覚障害をきたします。
後方線維よりも前方線維において、感覚性異常性大腿痛が生じやすい傾向にあります。

走行

大腰筋の外側縁から出現

腸骨稜に沿って伴走

ASISに向かって腸骨筋を斜めに横切る

鼠径靭帯の下を通過

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外側大腿皮神経の走行バリエーション

外側大腿皮神経には、7つの走行タイプがあります。
86%においては、鼠径靭帯・ASISの下を通過し、縫工筋の内側を伴走します。

ASISから神経までの距離のばらつきは多く、10mm(最も多い)から46mmの範囲で内側に位置しています。
触診を行うポイントは、『ASISの2~3横指下で縫工筋の内側縁から少し指を入れ込んだ所』ではありますが、この位置から探していく必要があります。

分岐のパターンもばらつきが多く、最も一般的な分岐は大腿部であり、骨盤領域や骨盤から先の部分でも分岐しています。
2つに分岐するものが多いですが、外側大腿皮神経は3・4つに分岐することもあります。

また、腰神経叢におけるL2-3由来の神経ですが、L1-2あるいはL3-4から生じるものも見られており、バリエーションが豊富なことが分かります。

さらに、外側大腿皮神経が欠損していることもあり、その場合の前外側大腿部の感覚は、腸骨鼠径神経・前大腿皮神経・陰部大腿神経の枝によって支配されています。

外側大腿皮神経の7つの走行まとめ

走行

  1. 鼠径靭帯の下・ASISの内側を通過し、縫工筋の内側を走行する
  2. 鼠径靭帯の間を通過する
  3. 鼠径靭帯の上を通過する
  4. ASISの上を超えて走行する
  5. ASISの外側(すぐ近くの場合もある)を走行する
  6. ASISの骨孔を貫通する
  7. 縫工筋を貫通する

上記の7つのバリエーションがあると言われています。

この他に、大腰筋の外側を伴走することもあれば、大腰筋を貫通していることもあります。
腸骨筋の前面を通過していることも含めて、外側大腿皮神経は腸腰筋の影響を大きく受けることが考えられます。

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外側大腿皮神経の分岐

外側大腿皮神経の腰神経叢からの分岐は、1本の分枝が同神経を形成する場合と、2本の分枝が吻合して同神経を形成する場合があります。

それぞれの分岐部位には3つのタイプが存在しています。

3タイプの分岐

  1. 腸骨稜より頭側で分岐する
  2. 腸骨稜の高さで分岐する
  3. 腸骨稜より尾側で分岐

このように外側大腿皮神経は、腰神経叢からの分岐部位が3つのタイプに分類されています。

腰神経叢からの分岐が腸骨稜より遠位で生じている場合で、さらにどこかの部位で絞扼性神経障害が生じている場合、外側大腿皮神経領域以外の症状も合わせて引き起こしてしまう可能性もあるということになります。

腸腰筋と梨状筋との関係

外側大腿皮神経の走行は、ASIS内側から表層に出て尾側かつ外側へ向かい、大腿遠位から後外側まで枝を伸ばしています。

そのため、股関節の伸展・内転・外旋で伸張されます。

腸腰筋の短縮が生じていると、歩行時の蹴り出しのタイミングでは股関節伸展による神経伸張ストレスが増大する可能性があります。

腸腰筋のイラスト。腰椎から大腿骨に走行します。

立脚側への骨盤の外側動揺が生じている場合、股関節は内転になってしまうため、より一層のストレスが加わることも考えられます。

また、腸腰筋の短縮により骨盤前傾位が生じていると、股関節は屈曲されており、時には内旋位になっていると考えられます。
梨状筋は股関節屈曲・内旋で伸張されるため、この部位での絞扼が生じると、坐骨神経領域と外側大腿皮神経領域の症状を併発する可能性があります。

股関節深層殿筋群のイラスト

そのため、知覚異常性大腿神経痛と梨状筋症候群との関連を含めて臨床の考察をしていけると良いでしょう。

腰痛と併せて大腿外側痛みや知覚異常・感覚異常を呈している方は比較的多いので、丁寧な問診や触診によりこの問題を早期に発見することにも繋がると考えられます。

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参考文献

  1. The surgical anatomy of the lateral femoral cutaneous nerve in the inguinal region: a meta-analysis:K.A.Tomaszewski, P.Popieluszko, B.M.Henry, J.Roy, et al. , Hernia (2016) 20:649–657
  2. Anloague PA, Huijbregts P. Anatomical variations of the lumbar plexus: a descriptive anatomy study with proposed clinical implications. J Man Manip Ther. 2009;17:107–114.
  3. Harney, Donal, and Jacob Patijn. “Meralgia paresthetica: diagnosis and management strategies.” Pain Medicine 8.8 (2007): 669-677
  4. Lateral femoral cutaneous nerve:Dr Michael Stewart, Dr Chamath Ariyasinghe et al, Radiopaedia
  5. 梨状筋症候群に外側大腿皮神経障害を合併する割合と機序:斉藤 正佳, 赤羽根 良和, 永田 敏貢, 服部 潤, 栗林 純, 2012
  6. 外側大腿皮神経の絞扼性神経障害に関する局所解剖学的検討-下肢放散痛に対する保存療法の可能性について:工藤 慎太郎, 木原 雅子, 山北 和幸, 牧野 淳, 小崎 琢也, 中野 隆, 2006

コメント

  1. […] 外側大腿皮神経の走行バリエーション腸腰筋と梨状筋との関係外側大腿皮神経の走行はバリエーションが豊富で絞扼部位も個人差が大きいと考えられています。今回の記事では、7つの走 […]

  2. […] 外側大腿皮神経の走行バリエーション腸腰筋・梨状筋との関係外側大腿皮神経の走行はバリエーションが豊富で絞扼部位も個人差が大きいと考えられています。今回の記事では、7つの走 […]

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