坐骨神経絞扼の要因:線維性・線維血管性バンドのタイプ分類

解剖学&運動学

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線維性・線維血管性バンドは梨状筋症候群の原因の1つ

線維性バンド・線維血管性バンドが坐骨神経の絞扼を引き起こす原因となることがあります。

一般的に広く知られているような病態で言うと、”坐骨神経痛”や”梨状筋症候群”が当てはまると思います。

お尻の部分を痛がって押さえる男性の写真

特に異常がなければ、坐骨神経は関節の動きに伴って適度な緊張や圧迫に対応するために、周囲の組織に対して伸張したり滑走することが可能です。

しかし、股関節や膝関節・足関節を動かした時に、坐骨神経の可動性が低下していることが、坐骨神経障害(虚血性神経障害)を引き起こす原因となる可能性があります。そのきっかけとして、線維性バンド・線維血管性バンドの存在が示唆されています。

そこで今回は、坐骨神経の可動性に問題を引き起こす可能性のある、線維性バンド・線維血管性バンドのタイプをご紹介していきます。

線維性・線維血管性バンドの分類

線維性・線維血管性バンドは大きく3つに分類されています。

1つ目は巨視的に血管を識別できる線維血管性バンド、2つ目は巨視的に血管を識別できない純粋な線維性バンド、3つ目は周囲に線維性組織がなく血管のみで形成される純粋な血管性バンドになります。

3つの分類

  1. 巨視的に血管を識別できる線維血管性バンド
  2. 巨視的に血管を識別できない純粋な線維性バンド
  3. 周囲に線維性組織がなく血管のみで形成される純粋な血管性バンド

さらにそれらの位置に基づいて、3つのバンドに分類されています。
①大坐骨切痕周辺の坐骨神経に影響を与える近位バンド
②大腿四頭筋とハムストリングス近位付着部の間の坐骨トンネル領域に影響を与える遠位バンド
③梨状筋と内閉鎖筋・双子筋複合体レベルに位置する中間バンド

これら3つの位置のそれぞれにおいて、バンドは坐骨神経の内側または外側に位置することがあります。

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線維性・線維血管性バンドのタイプ

線維性・線維血管性バンドは、3つのタイプが存在しています。

Type 1は、大転子後縁および周囲の軟部組織から大殿筋まで、坐骨神経上を通過し大坐骨切痕まで伸びます。

Type 2は、坐骨神経に強く結合して一方向に固定し、股関節運動中に通常の可動域を実行できないようにしています。

Type 3は、不規則な分布を持っており、神経を複数の方向に固定する特徴があります。

この3つのタイプのうち、Type1とType2はさらに細分化されています。

タイプ

Type 1A:坐骨神経に対し前方から後方へ向かって動きを制限するバンド

Type 1B:坐骨神経に対し後方から前方へ向かって動きを制限するバンド

Type 2A:大転子から坐骨神経に付着し外側方向へ固定するバンド

Type 2B:仙結節靭帯から坐骨神経に付着し内側方向へ固定するバンド

Type 3 :様々な分布を有する坐骨神経に固定されたバンド

どのタイプも坐骨神経の可動性を制限する因子となりうる可能性があります。
線維性・線維血管性バンドのイラストはこちらのページです。

まとめ

今回は、線維性・線維血管性バンドの特徴とタイプ分類をご紹介させていただきましたが、関連する病態は梨状筋症候群だけではありません。

下殿部領域の絞扼性神経障害として、”内閉鎖筋・上双子筋症候群”・”大腿方形筋の病態”・”坐骨大腿インピンジメント症候群”・”ハムストリングの病態”などがあります。

臨床においては、適時評価しながら除外・鑑別を行なっていくようにすると良いでしょう。

線維性・線維血管性バンドに関しては、セラピストの介入によって変化を与えられるものではないでしょう。しかし、坐骨神経の滑走性(Slider:スライダー)や伸張性を改善するためのアプローチは効果が見込めるかもしれません。

症状が長期間存在しており、なかなか改善されない場合は、医師との連携を取る必要があると考えられます。

こちらのページでは、坐骨神経の走行バリエーションをご紹介していますので、ぜひご参照ください!

こちらのページでは、梨状筋症候群の鑑別評価の方法をご紹介していますので、こちらも併せてご参照ください。

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参考文献

Deep gluteal space problems: piriformis syndrome, ischiofemoral impingement and sciatic nerve release:Luis Perez Carro, Moises Fernandez Hernando, Luis Cerezal, Ivan Saenz Navarro, Ana Alfonso Fernandez, Alexander Ortiz Castillo,Muscles Ligaments Tendons J, 2016

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