シンスプリント(脛骨内側ストレス症候群:MTSS)の病態と原因

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MTSSの定義

脛骨内側ストレス症候群(Medial Tibial Stress Syndrome:MTSS)またはシンスプリント症候群は、ランニングおよびジャンプ中の反復的な負荷ストレスによって引き起こされます。

脛骨後内側縁(特に遠位1/3の領域)に沿った運動誘発性の痛みとして定義され、触診により5cm以上の長さにわたって圧痛が見られる病態です。

米国医師会(AMA)は、「硬い表面での繰り返されるランニングや足部底屈筋の過負荷により繰り返される脚の疼痛や不快感であり、診断は骨折や虚血性疾患を除く筋腱の炎症に限るべきである」と定義しています。

この他に定義されているのは、ブルックナーとカーンによって説明されたものです。
「ランナーの一般的な脛骨の側面における炎症性牽引ストレスを説明する用語としては、脛骨牽引の内側骨膜炎、または単に脛骨内側骨膜炎になります」

臨床的な解剖学

シンスプリントの病態生理学を理解するために、関連する解剖学的構造を4つの区画に分類します。

前面

この前方区画には、前脛骨筋・長母趾伸筋・長指伸筋、および第三腓骨筋が含まれています。

長腓骨筋・短腓骨筋・前脛骨筋・長趾伸筋

  • 前脛骨筋
    足関節背屈・足部内反
  • 長母趾伸筋
    母趾伸展
  • 長趾伸筋
    足趾伸展
    第三腓骨筋と同様に足部外転を補助する

深部後面

この区画には、長趾屈筋・後脛骨筋・長母趾屈筋が含まれます。

後脛骨筋・長母趾伸筋・長趾屈筋

  • 後脛骨筋
    足関節底屈・足部内反
  • 長趾屈筋
    足趾屈曲
  • 長母趾屈筋
    母趾屈曲

表層後面

この区画には、腓腹筋とヒラメ筋の下腿三頭筋が含まれます。

腓腹筋・ヒラメ筋のイラスト

足関節底屈、および後足部回外に作用します。

外側面

この区画には、主に腓骨筋と長腓骨筋が含まれます。

前脛骨筋と後脛骨筋の機能不全が一般的に関係しており、これらの筋の付着部も痛みの場所である可能性があります。

筋のインバランスと可動性の欠如、特に下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋、足底筋)の緊張は、一般的にMTSSに関連しています。
下腿三頭筋の筋力低下のあるアスリートは下腿周囲筋が疲労しやすく、走る動作の機能不全により脛骨に負担がかかります。

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疫学

シンスプリントは一般的にスポーツ傷害におけるオーバーユースであり、発生率は運動人口の4〜19%です。

ランナー(スプリンター・中距離および長距離ランナー・サッカー選手)は、発生率が13.6〜20.0%・有病率が9.5%で、最も一般的な筋骨格系機能不全として特定されています。


また、ダンサーにおいては20%に存在し、ランナーとダンサーの初心者・始めたての頃においては最大35%の方で発生する可能性があります。

病因

シンスプリントは、ランニングやジャンプ動作を頻繁に行うアスリートにおいて、特に身体への過負荷が生じる場合に、動作エラーが生じてしまうことで発症します。

この怪我は、距離・強度・頻度の増加など、トレーニングプログラムの変更の時にも関連している可能性があります。

”硬い地面”や”でこぼこな地面”でのランニング、および劣化したランニングシューズ衝撃吸収能力の低下など)は、負傷者に関連する要因の1つである可能性があります。

足のアーチの異常、足部の過回内、脚長差等の生体力学的異常などは、最も頻繁に言及した固有の要因です。

女性は、特にこの症候群において疲労骨折を起こすリスクが高くなります。
これは、栄養・ホルモン・生体力学的異常によるものです。

また、肥満の方はこの症候群にかかりやすい特徴があります。


治療やトレーニングプログラムを開始する前に、まずは運動と食事管理を組み合わせて、体重をコントロールすることが重要です。

そして、それぞれの身体の状態に適したメニューで、緩徐にトレーニングレベルを上げる必要があります。

寒い時期においてはこの症状を引き起こす原因の1つにあたるため、通常よりも入念かつ適切にウォームアップすることが重要です。

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病態

病態生理学は不明ですが、議論のための2つの仮説があります。

病態生理

  • 筋膜の牽引ストレス
  • 局所的な骨へのストレス

1つ目は筋膜の牽引ストレスにより誘発される骨膜炎、2つ目に局所的な骨ストレスによって誘発される骨膜炎の可能性があります。

脛骨後内側縁に沿った筋付着部の慢性炎症と骨への負担が、脛骨内側ストレス症候群の最も可能性の高い原因であると考えられています。

特徴

主な症状は、脛骨後内側縁遠位2/3の鈍い痛みです。
痛みは非限局性ですが、「少なくとも5cmの範囲」に広がり、しばしば両側にみられます。

痛みを伴う領域には、軽度の浮腫・腫脹も存在する可能性があります。

発症し始めはトレーニングの開始時にのみ痛みを感じ、やがて運動中に消えることが多く、クールダウンのタイミングで痛みが生じてきます。シンスプリントが悪化すると、運動中に痛みが残る可能性があり、疼痛誘発活動(主にスポーツ活動)を終えた数時間後も痛みが続く可能性があります。

シンスプリントの最も一般的な合併症は疲労骨折であり、これは脛骨前面の圧痛によって確認できます。

神経・血管の徴候および症状は、一般的に脛骨内側ストレス症候群に起因するものではなく、慢性労作性コンパートメント症候群(Chronic Exertional Compartment Syndrome:CECS)または血管欠損症などの他の病状を下肢痛の原因と見なす必要があります。

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参考文献

  1. Galbraith, R. M., & Lavallee, M. E. Medial tibial stress syndrome: conservative treatment options. Current reviews in musculoskeletal medicine. 2009; 2(3): 127-133.
  2. Lohrer, H., Malliaropoulos, N., Korakakis, V., & Padhiar, N. Exercise-induced leg pain in athletes: diagnostic, assessment, and management strategies. The Physician and sports medicine. 2018
  3. Winters, M., Bakker, E. W. P., Moen, M. H., Barten, C. C., Teeuwen, R., & Weir, A. Medial tibial stress syndrome can be diagnosed reliably using history and physical examination. Br J Sports Med.2018; 52(19): 1267-1272.

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