股関節唇損傷の病態とメカニズム

病態
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股関節唇損傷とは

股関節は、大腿骨と寛骨臼の間に形成された滑膜関節です。

寛骨臼には関節唇と呼ばれる線維軟骨のリングがあり、寛骨臼を深めて股関節の安定性を高めています。

股関節唇損傷とは、大腿寛骨臼インピンジメント(別名FAI)や寛骨臼唇断裂(ALT)など、関節唇に関連するあらゆる問題を含む包括的な用語です。

この病態は、股関節に過度の力が加わることで生じると考えられています。

股関節唇損傷の疫学

股関節唇は、『捻る動き』・『切り返しの動き』・『転倒』などによって発生する剪断力によって影響を受けやすい性質です。

その他、直接的な外傷(自動車衝突など)は、寛骨臼唇損傷の原因として知られています。

その他の原因としては、股関節インピンジメント(FAI)、関節の変性、およびLegg-Calve-Perthes病・先天性股関節形成不全・大腿骨頭すべり症(SCFE)などの小児疾患が含まれます。

関節唇損傷を引き起こす最も一般的なメカニズムは、過伸展位置での外旋力です。
ほとんどの断裂は前上部で発生しますが、アジア人の特徴として過屈曲またはしゃがみ運動の傾向が多いため、後上部の断裂の発生率は通常よりも高くなります。

疼痛が徐々に発現するような症例では、微小外傷が関節唇病変の原因であると考えられています。

システマティックレビューのまとめ

Leiboid et al(2008)によるシステマティックレビューの内容をまとめます。

疫学まとめ

  • 股関節唇断裂は、一般的に8〜72歳で、平均して40歳代に多くに発生する
  • 男性よりも女性の方が被害にあう可能性が高い
  • 股関節や鼠径部の痛みの症状を示す患者の22〜55%に、寛骨臼唇断裂があることが認められている
  • 股関節唇損傷の最大74.1%は、特定の事象や原因に起因するものではない
  • 特定の傷害のメカニズムを特定した患者では、股関節の過外転、捻転、転倒、または交通事故による直撃が一般的な傷害のメカニズムである
  • 女性、ランナー、プロのスポーツ選手、頻繁な外旋や過伸展を必要とするスポーツの参加者は、股関節唇損傷のリスクが高くなる
  • 週に3回ジムに通う人は、股関節唇損傷を発症するリスクが高くなります

さらに、Orbell and Smith(2011)は、関節唇損傷の発生率は特定の病因によって異なると指摘しています。

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股関節唇損傷のメカニズム

関節唇損傷の一般的なメカニズムは、以下の5つと考えられています。

  1. Femoroacetabular impingement(FAI)
  2. 外傷
    1. 捻転や転倒、凹凸のある地面の踏み間違い、自転車や車と衝突したりするときに発生する剪断力によって発生する可能性があります
    2. 反復的な股関節過伸展と外旋(例えば、ランニングの蹴り出し(Terminal Stance))は、軟骨唇接合部(通常は10時の12時の位置)にストレスを生じ、微小外傷と最終的な唇損傷を引き起こす可能性があります
    3. 腸腰筋のインピンジメントに関連して、3時の位置で関節唇損傷を引き起こすこともあります
  3. Capsular Laxity(股関節の不安定性)
    1. 軟骨障害(例:エーラーズ・ダンロス症候群)
    2. 過度の外旋による股関節弛緩(不安定性)

    上記の2つのいずれかで発生すると考えられています。(バレエ、ホッケー、体操などの特定のスポーツでよく見られます。)

  4. 股関節形成不全
    大腿骨と寛骨臼、またはその両方の特定の異常(例:浅い寛骨臼・大腿骨または寛骨臼の前傾・大腿骨頭のオフセットの減少または大腿骨頭の中心から大腿骨軸の軸までの垂直距離の減少)は、寛骨臼内での大腿骨頭の被覆が不十分となるため、股関節の前部にかかるストレスが増加し、インピンジメント症状・関節唇断裂の可能性があります。
  5. 変性

股関節唇損傷の分類

関節唇損傷の生じる部位による分類になります。

場所

  • 前部
    痛みは一般的に一貫しており、股関節前面または鼠径部にあります。
    これらはヨーロッパ諸国および米国の人に多く見られます。
  • 後部
    外側領域または後部・殿部の深い位置にあります。
    これらはヨーロッパ諸国や米国の人ではあまり発生しませんが、日本人ではより一般的です。
  • 上部・外側部

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股関節唇損傷の特徴

股関節唇裂傷の症状にはいくつかのバリエーションがあります。

患者の多くは股関節前部と鼠径部の痛みを示しますが、一般的ではない領域としては、大腿前部の痛み・大腿部の外側の痛み・臀部の痛み、および膝への放散痛があります。

寛骨臼唇損傷と診断された患者の大多数(90%)は、股関節前部または鼠径部の痛みを訴えています。
これは、関節唇前部の損傷の徴候である可能性がありますが、臀部の痛みは後関節唇損傷の方が一貫性があり、これは一般的ではありません。

これらの特定の操作は、鼠径部の痛みを引き起こす可能性があります。

  1. 股関節の屈曲・内転・内旋は前上部の損傷に関連する
  2. 受動的な過伸展・外転・外旋は後部の損傷に関連する

機能的制限には、長時間の座位保持、歩行、階段昇降、走る、ねじる・回旋するなどがあります。

症状の持続期間は長く、平均して2年を超えることがあります。

股関節唇損傷の症状

股関節唇損傷の時に感じる症状をまとめていきます。

症状まとめ

  • 緩徐な発症
  • 軽度から中等度の痛み
  • 主として鼠径部痛 (臀部痛はいない)
  • キリッとした痛み
  • だるさ
  • 活動により疼痛出現
  • 夜間痛
  • 引っかかったり捻ると痛い
  • 歩行や振り返りで痛い

これらが、主に感じる症状となります。

症状の程度に関しては人それぞれ違いますが、症状を我慢できてしまう方が多い印象です。
そのため、特に何もご自身のケアをせず、やがて変形に移行してしまう方が多いです。

変形が生じて動きが悪くなったり、日常生活での支障が強くなってきた場合に気づくため、もっと前段階で介入して予防することができればと考えています。

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股関節唇損傷の評価

診断は、患者の身体検査によって行われます。

場合によっては、患者を観察している間に徴候を発見することがあります。

例として、歩行では、立脚において股関節に加わる衝撃を緩和するために、膝関節屈曲による衝撃吸収の代償が考えられます。
さらに、患肢の歩幅を短くして、歩行による侵害受容性の入力を減少させることもあります。

しかし、疼痛性跛行はFAIとの鑑別が困難な場合があり、2つの状態が同時に存在する場合もあります。

鑑別するための評価方法(スペシャルテスト)は、こちらで紹介している過去の記事内容をご参照くだささい!

参考文献

  1. Lewis CL, Sahrmann SA. Acetabular labral tears. Physical therapy. 2006 Jan 1;86
  2. Schmerl M, Pollard H, Hoskins W. Labral Injuries of the hip: a review of diagnosis and management. J Manipulative Physiol Ther. 2005
  3. Leiboid M, Huijbregts P, Jensen R. Concurrent Criterion-Related Validity of Physical Examination Tests for Hip Labral Lesions: A Systematic Review. The Journal of Manual Manipulative Therapy. 2008
  4. Groh MM, Herrera J. A comprehensive review of hip labral tears. Current reviews in musculoskeletal medicine. 2009 Jun 1
  5. Heiderscheit B, McClinton S. Evaluation and Management of Hip and Pelvis Injuries. Phys Med Rehabil Clin N Am. 2016

コメント

  1. […] 股関節唇損傷の病態とメカニズム股関節前部・前面の痛み、鼠径部の痛みは股関節唇損傷の可能性があります。股関節唇損傷を引き起こしてしまう原因やそのメカニズム、特有の症状や […]