“関節の変形”や“椎間板の問題”があっても痛みが生じるとは限らない理由

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関節の変形・椎間板の問題

腰や首の痛み、膝や股関節・足首の痛みが発生してしまった場合、まずは整形外科を受診される方が多いかと思います。(もし接骨院や整体院に行かれたのでしたら、一度は整形外科を受診することをオススメします。)

流れとしては、まずは問診から始まり、その後レントゲン・MRI・CTなどの画像を撮影することになります。その画像の結果をもとに診断を受けることになるのですが、「骨と骨の隙間が狭いから痛みが生じている」「ストレートネックですね」「腰が反ってますね」「関節の近くに棘ができていますね」などを告げられ、これらが問題となって痛みが生じているという診断になるかもしれません。

首のレントゲン写真

レントゲン・MRI・CTは身体の骨・関節・筋肉・神経の状態を把握するために必要な検査になりますが、その結果が現在の痛みや痺れなどの症状に関係していることもあれば、関係していないこともあります。

そのため、画像の結果だけではなく、身体の感覚や関節の動かせる範囲・筋力・姿勢・動き方などを複合的に考慮して、痛みや痺れの原因を特定していきます。

立位での前屈

画像の結果だけでは身体の状態を把握するには不十分であり、その他の検査・評価をしていないのであれば疑問を持たれた方が良いかもしれません。各検査・評価を役割分担していることがありますので、なるべく医師と理学療法士が在籍している場所が良いでしょう。

以下では、画像結果だけでは痛み・痺れの原因を特定するには不十分としている根拠・理由を解説していきます。

画像上に問題があっても無症状

2015年に、腰痛や腰・下肢の神経症状、外傷、腫瘍などの既往歴がない(以前・現在に症状がない)方を対象とした、腰のMRIデータをもとに年齢別に比較している研究があります。

この論文が出る以前から、腰痛と関連した背骨の変性の画像所見は無症状患者の割合が高いことは分かっておりましたが、こちらのデータではそれが年齢別に示された内容となっております。

脊椎変性と年齢の割合

Systematic literature review of imaging features of spinal degeneration in asymptomatic populationsより引用

・disk generation (椎間板変性)
・disk signal loss (椎間板信号の損失)
・disk height loss (椎間板の厚さの損失)
・disk bulge (椎間板の出っ張り)
・disk protrusion (椎間板突出)
・annular fissures (線維輪の亀裂)
・facet degeneration (椎間関節変性)
・spondylolisthesis (脊椎すべり症)

上記は、腰の椎間板と関節の状態を表している内容となっておりますが、詳しいことは分からなくて大丈夫です。椎間板・関節に何かしらの問題が生じていることを示しています。

ポイントは、腰・下肢には何も問題が生じていないのにも関わらず、30代以降では椎間板、60代以降では関節に、“何かしらの問題が約半数の方に生じている”ことが示されています。

そして、椎間板の問題は60代以降で約90%の方に生じていることも分かります。すべり症は70〜80代で約半数にまで増加します。

これらは全て無症状の方の割合を示しています。症状がなくても画像上には問題が生じているということが分かります。

背骨・椎間板のイラスト

年齢に応じて椎間板や関節の問題が増加していることを踏まえると、いわゆる加齢による変化であり、それは症状と関連しない可能性があります。特に片側だけに痛みや痺れの症状がある場合、画像の結果から分かることは少なく、関節の動かせる範囲や筋力・姿勢・動作・生活スタイルなどの影響が強いことが考えられます。

今回ご紹介している論文データは腰を対象としていますが、これは首・肩・股関節・膝関節など身体のどの部位にも当てはまることだと考えております。

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まとめ

『画像上の問題だけでは痛みや痺れの問題を特定することができない可能性がある』ということです。

だからといって、画像による診断が必要ないというわけではありません。現在の骨・関節・筋肉・神経の状態を把握するためには必要な検査ですので、確認しておいた方が良いでしょう。

ただし、痛みのメカニズムは非常に複雑であり、症状が長期化している方ほどより複雑になります。骨・関節・筋肉・神経のみならず心理社会的影響も受けるため、それらを総合的に診てもらう必要性があるかもしれません。

参考文献

W.Brinjikji, P.H.Luetmer, B.Comstock, B.W.Bresnahan, L.E. Chen, R.A.Deyo, S.Halabi, J.A. Turner, A.L.Avins, K.James, J.T.Wald, D.F.Kallmes, and J.G.Jarvik, Systematic Literature Review of Features of Spinal Degeneration In Asymptomatic Populations, AJNR Am Neuroradiol, 2015

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