【論文レビュー】股関節疾患における大腿骨と寛骨臼の前捻・後捻の形態異常

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論文レビュー

今回の記事は、Prevalence of Femoral and Acetabular Version Abnormalities in Patients With Symptomatic Hip Disease:A Controlled Study of 538 Hips(症候性股関節疾患患者における大腿骨と寛骨臼の形態異常の有病率:538の股関節の比較試験)の論文をもとに考察していく内容となっています。

股関節は、寛骨臼と大腿骨頭によって構成される球関節であるため、寛骨臼の傾き・角度・方向や大腿骨頭の前捻角・後捻角の形態的特徴は、股関節の可動性や筋機能に大きく影響しているものと考えられます。そして、寛骨臼・大腿骨の形態異常は、股関節周囲の疼痛や関節内・外の病変を引き起こす原因となる可能性があります。

中でも、大腿骨形態異常が変形性股関節症の発症に関連するということは確立されています。また、大腿骨捻転角が大きくなると、股関節形成不全やFAI(Femoroacetabular impingement)と関連することもよく知られています。

股関節の骨模型

形態異常を伴う股関節の機能評価を行う上で、特に股関節内旋・外旋の可動性が影響を受けていることは、臨床現場で活躍されている皆様であればお分かりいただけることではないでしょうか。例えば、股関節内旋の可動性が60度と大きく、外旋の可動性は10度と小さい場合は、大腿骨は前捻していることが示唆されます。この場合、無理に股関節外旋方向に動かすことは、障害を引き起こす可能性があるので日常生活・スポーツ動作などでは考慮すべきポイントとなるでしょう。

寛骨臼と大腿骨の形態異常がある場合、それがどのように病態とリンクしているのかは未だ不明確な部分が多いです。大腿骨の前捻角が強いからといって、皆が同じような代償動作をして、同じような病態となることは考えにくいのですが、ある程度の指標があると患者・クライアントさんに説明する際には役立つ部分が大きいと思われます。

そこで、今回は大腿骨と寛骨臼の形態について深く掘り下げて考えていきます。

ご紹介している文献では、以下の3項目を明らかにすることを目的に行われています。

①FAIや股関節形成不全の症状を伴う股関節における大腿骨形態異常の有病率
②これらの患者における大腿骨形態と寛骨臼形態の複合的な異常の有病率
③特定の股関節サブタイプが大腿骨形態異常と関連しているのか

まずは研究の概要をご紹介させていただき、その後に私の意見も交えて考察をまとめていきます。

研究の概要

2011年〜2015年の間にFAIまたは股関節形成不全に起因した股関節痛を有する患者462名・538股関節を対象に、股関節形態を11のサブグループに分類し、大腿骨と寛骨臼の形態をレトロスペクティブに比較・検討されています。
対象の包括的基準としては、股関節痛の症状、骨格の成熟を示すX線徴候、標準的なプレーンX線画像、大腿骨遠位顆部を含む骨盤・股関節のCTまたはMRIデータのいずれかを利用できることとしています。この時、寛骨臼や大腿骨の手術歴、骨格的に未熟な股関節、外傷、大腿骨頭血管壊死に該当する場合は除外されています。

股関節形態のサブグループとしては、形成不全、骨頭被覆の増加(Overcoverage, Severe overcoverageの2段階)、寛骨臼の後捻と前捻、Cam-type FAI、Mixed-type FAI、Varus、Valgus、ペルテス病、明らかな病理学的形態異常がないというように11に分類されています。

また、大腿骨と寛骨臼の捻転角に関しても、捻転角の程度により分類しています。
正常な大腿骨の捻転角は10°〜25°、中等度の大腿骨捻転角減少は0〜10°、中等度の大腿骨捻転角増加は25〜35°、重度の大腿骨捻転角減少は0°未満、重度の大腿骨捻転角増加は35°以上と定義されています。正常な寛骨臼の捻転角は10〜25°、寛骨臼の捻転角減少は10°未満、寛骨臼の捻転角増加は25°以上と定義されています。

結果としては、538関節のうち52%が大腿骨捻転異常を有しており、重度の大腿骨捻転角減少が5%、中程度の大腿骨捻転角減少が17%、中程度の大腿骨捻転角増加が18%、重度の大腿骨捻転角増加が12%で、正常な大腿骨捻転角を有していたのは48%であったとしています。
コントロール群の大腿骨捻転と比較的して、Cam-type FAI群では有意に低い大腿骨捻転角ペルテス病群では有意に高い大腿骨捻転角が見出されています。

重度の大腿骨捻転角増加の有病率は、コントロール群と比較して、ペルテス病群(50%)、明らかな病理学的特徴のない群(39%)、外反股群(33%)、形成不全群(23%)、寛骨臼前捻群(18%)において高かったとしています。

重度の大腿骨捻転異常(増加・減少の両者)の有病率では、ペルテス病の後の変形を持つ患者の半数以上は重度の大腿骨捻転異常を有している結果となっています。重度の大腿骨転位異常はPerthes群で最も多く(57%),次いで明らかな病変のない群(43%),外反群(36%)であったが,すべての調査群に認められた.また、Cam-type FAIまたはPincert-type FAIを有する患者の約10人に1人は、さらに重度の大腿骨捻転異常を有するとされています。

さらに、股関節を9のサブタイプに分類し、それぞれの割合も見出しています。

68%の股関節は大腿骨捻転角と寛骨臼捻転角の組み合わせに異常があり、32%は大腿骨・寛骨臼の捻転角ともに正常の範囲内という結果になっています。
最も多い異常の組み合わせは、大腿骨捻転角の増加と寛骨臼正常の組み合わせ(22%)、次いで大腿骨捻転角の減少と寛骨臼正常の組み合わせ(16%)、大腿骨正常と寛骨臼の捻転角増加の組み合わせ(10%)であったとしています。

大腿骨捻転の増加・減少の捻転角異常を有する方は52%という結果であり、股関節温存手術の適応となる患者の半数以上が大腿骨捻転異常を有していたとしています。また、70%は寛骨臼が正常であったが、30%だけがは寛骨臼の捻転角に異常があったことは興味深いと述べています。

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私見

非常に興味深い内容だったのではないでしょうか。
大腿骨前捻はご存知の方も多いかと思いますが、大腿骨後捻があることや寛骨臼にも前捻・後捻があることを始めて知ったという方も少なくないかもしれません。

ご紹介している論文では、正常な大腿骨の捻転角は10〜25°とされていますが、この他の論文では8〜18°と違う数値を用いているものもあり、この数値はばらつきがあると思っておいた方が良いと考えられます。研究の結果より、寛骨臼の捻転角よりも大腿骨の捻転角のばらつきの方が大きいことから、股関節の病態も大腿骨の捻転角の影響を受けやすいことや、大腿骨の変形の可能性が高くなることが考えられます。特にFAI患者の約10人に1人は、重度の大腿骨前捻・後捻を有しているとされていることからも裏付けられていると考えられます。

また、研究対象となった方々の約半数が大腿骨の捻転異常を呈しているということなので、実際の臨床現場においてもそのくらいの実数はいるかもしれませんし、特に整形外科・クリニックで勤務されている専門家の方でしたらもっと多い感覚になるかもしれません。

Cam-type FAI患者では大腿骨後捻の傾向にあるという結果から、股関節内旋の制限が強く、外旋の可動範囲は大きいことも考えられます。この場合、股関節内旋の可動範囲を拡大しようと過度なストレッチをすることは、骨・関節の機能不全を引き起こす・助長する可能性があるため注意が必要となります。また、立位にて片脚に体重をかける際、腰椎・骨盤帯を同側回旋させると相対的に股関節内旋位になるので、立位における日常生活動作では「つま先〜膝を軽く外側に向ける」というような動きの工夫が必要になるかもしれません。こうなると膝や足部の病理学的問題を引き起こす可能性も出てくるため、その許容範囲を見極めることはセラピスト・トレーナーとして必須になります。

私自身ペルテス病の既往歴を有する患者さんを数名診させていただいたこともありますが、この研究結果と同様に大腿骨前捻角が強く、股関節内旋の可動域は確保されているものの外旋は制限されていました。ある方のたまたまの癖かもしれませんが、股関節外旋の制限があるためか、脛骨は内弯し足部も外転している静的・動的アライメントを呈していました。膝・足部の怪我や変形性疾患を有する場合、非常に難しい症例になる印象を受けます。具体的な介入方針は本当に人それぞれになると思いますので、ここでの私見を述べることはある意味無責任かと思いますので控えます。

大腿骨捻転角と寛骨臼捻転角の組み合わせの結果として、68%が異常なパターンの組み合わせであることには驚きました。
多くの整形外科テスト・スペシャルテストの信頼性が乏しいことは、この記事を読まれている皆様もお分かりいただけていることかと思います。特に大腿骨前捻を評価するクレイグテストにおいては、寛骨臼の捻転による影響を受けたり、大腿骨と寛骨臼の捻転の組み合わせによる影響を受けるためだと考えられます。

大腿骨・寛骨臼の捻転角異常の組み合わせは、どの組み合わせも考えられることではありますが、大腿骨捻転角増加と寛骨臼正常の組み合わせ、大腿骨捻転角減少と寛骨臼正常の組み合わせ、大腿骨正常と寛骨臼捻転角増加の組み合わせの3つが多いため、頭の片隅においていただけると臨床現場においては役立つかもしれません。

・大腿骨前捻&寛骨臼正常
・大腿骨後捻&寛骨臼正常
・大腿骨正常&寛骨臼前捻

参考文献

Till D Lerch, Inga A.S. Todorski, et al, Prevalence of Femoral and Acetabular Version Abnormalities in Patients With Symptomatic Hip Disease:A Controlled Study of 538 Hips, The American Journal of Sports Medcine, 2018;46(1):122-134

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