胸腰筋膜の機能解剖:2層・3層モデル
-Fasciaの定義と分類-

胸腰筋膜の機能解剖第1弾のタイトル 解剖学
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胸腰筋膜

腰仙椎は身体の姿勢維持の中心的な役割を担っていますが、腰椎だけでは日常的に加わる負荷に耐えることができません。

仙骨底の上にある腰椎椎体を安定させるためには、胴体を囲む複雑な筋筋膜や腱膜帯の支持が必要になります。

背面の後壁では、この帯構造の中心点は胸腰筋膜(ThoracoLumbar Fascia:TLF)であり、腱膜・筋膜面の融合は腰部・仙骨領域の傍脊椎筋の周りの支帯を形成します。

TLFは、胸椎・頸椎領域の傍脊柱筋筋膜と連続しており、頭蓋底まで融合します。

TLFの結合組織面には、様々な厚さや形状を持つ多くの体幹・四肢筋が挿入され、この構造の張力や剛性を調整する役割を担います。

今回の記事は、腰仙椎領域の非収縮性結合組織と収縮性結合組織の統合や、腰部・骨盤帯痛に関連するそれらの相互作用の関連性に焦点を当てています。

全8部の構成にしてありますので、第1弾はFasicaの定義・分類と胸腰筋膜(TLF)のモデルを解説していきます。

胸腰筋膜の特徴

腰椎安定化筋の筋出力は、靭帯や腱・腱膜を経由し、関連する筋内膜や筋外膜の結合組織を介して周囲の骨格システムに伝達されます。

非収縮性構造は、感覚器としての役割を通じて骨格筋システムとも相互作用し、フィードバック制御の役割も持ちます。

胸腰筋膜(TLF)は、胴体の下部分を囲む筋筋膜帯の重要な部分であり、姿勢保持や荷重伝達・呼吸において重要な役割を果たします。

これらの組織の配列や身体的特性・機能を説明することは、呼吸と同様に静的・動的姿勢の間に腰部を支持する多層構造の役割を理解するために必要不可欠です。

今後の記事では、TLF複合体(TLC)のコンセプトを使用して、静的姿勢と動作の両方において腰椎骨盤帯の安定性モデルを再考していきます。

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Fasciaの定義

Fasciaは、腱や靭帯・腱膜シートに見られる規則的に配列されたコラーゲン線維とは明確に異なった、不規則に配列されたコラーゲン線維で構成される結合組織として定義されています。

これは、複数の方向のストレスに耐えるために最適な構造です。

腱・靭帯・腱膜は、コラーゲン線維のはっきりとした規則的な配列を有するため、その線維方向において大きな力に抵抗するため組織が適応しますが、他の方向の張力や剪断力に対して脆弱になります。

そのため、腱膜組織は規則的な分布を有するコラーゲン線維束で構成される扁平な腱を表すという意味で、筋膜組織とは異なります。

規則的に配列されたコラーゲン線維がないバンドはfasciaと呼ばれる可能性が高く、足関節周囲に存在するコラーゲン線維が規則的に配列するバンドは、靭帯として分類されるべきだと考えられます。

この記事の主題であるTLFは、腱膜構造と筋膜シートの両方で構成されますが、不必要な混乱をさけるため‘fascia’ として参照していきましょう。

Fasciaの分類

筋膜システムには4つの基本的なタイプに分類されます。

皮下組織・筋膜

Fascia

  1. 身体を取り囲む浅筋膜
  2. 筋骨格系を取り囲む深筋膜・被覆筋膜
  3. 中枢神経系を覆う髄膜筋膜
  4. 体腔とそれに含まれる臓器を覆う内臓筋膜

浅筋膜

浅筋膜は、3つの副層に細分化されます。

浅筋膜

  1. 浅脂肪層
  2. 深脂肪層
  3. それらを分離するfascia

これらは、皮膚・真皮の深層に位置しています。

深筋膜・被覆筋膜

深筋膜・被覆筋膜層は、全ての骨・軟骨・筋・腱・靭帯・腱膜を取り囲みます。

被覆筋膜は、骨の骨膜、骨格筋の上皮、腱・靭帯の腱鞘の周囲に途切れない状態で溶け込んでおり、不規則な半透明の層を表します。

『体幹or胴体の筋を囲むもの』と『四肢の筋を取り囲むもの』の2つの形態に分けることができ、前者を軸被覆筋膜、後者を四肢被覆筋膜と呼びます。

軸被覆筋膜の分類

  1. 腹側筋膜:椎体横突起の前方に発達する筋を覆う
  2. 背側筋膜:椎体横突起の後方に発達する筋を覆う

背側筋膜は通常、TLFの後層の深層(PLF)と呼ばれます。

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2層モデル

TLFは、後腹壁・腰方形筋・大腰筋から傍脊椎筋を分ける、いくつかの層の複合体です。
この構造の多くの説明は、2層モデルと3層モデルのいずれかを提示していますので、それぞれ解説していきます。

TLFの2層モデルは、傍脊椎筋の後方を囲む後層と、傍脊椎筋と腰方形筋の間にある前層とされています。

2層モデルは、腰椎棘突起先端と棘上靭帯に付着し、外側縫線に到達する傍脊椎筋を包む後層が存在しています。

通常において後層は、『傍脊椎筋を覆う深層膜』と『下位腰椎領域の深層膜を接合する浅層膜』の2つのシートで構成されています。

浅層膜は大部分が広背筋腱膜に由来しています。
下後鋸筋(Serratus Posterior Inferior mucsle:SPI)とその非常に薄い腱膜は、広背筋腱膜と深層膜との間に挿入されます。

2層モデルにおいて、TLFの前層と呼ばれるものは、腰方形筋から傍脊椎筋を分離する規則的配列のコラーゲン束の厚いバンドになります。
そのため、この層は腱膜を表します。

3層モデル

3層モデルは、2層モデルと強い類似性を持っています。

後層は2つの膜層で構成されており、表層膜 (広背筋腱膜)と深層膜が存在します。

L4より上のこれらの膜層では、SPI腱膜が存在します。

中間層は、傍脊椎筋と腰方形筋の間を通過するfascial bandとなります。

前層は、腰方形筋の前方を通過し、後方では腰方形筋と腸腰筋の間を通過します。
これは、横筋膜(transversalis fascia)の延長とされています。
前層は薄い横筋膜にすぎず、腹筋群から胸腰椎へ張力を伝達できない可能性があります。

次回以降の記事では、3層モデルに基づいた用語を使用していきます。

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参考文献

The thoracolumbar fascia:anatomy, function, and clinical considerations:F.H. Willard, A. Vleeming, M.D. Schuenke, L. Danneels, R. Schleip: Journal of Anatomy, 2012

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解剖学
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