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股関節外側の痛み
股関節外側領域の痛みを訴える方は比較的多く、その症状を引き起こしている原因が分からないというケースに出会したことがあるのではないでしょうか。
股関節外側領域の痛みの由来は、臀筋群や大腿外側の筋によるものであったり、変形性股関節症による影響であったり、腰椎神経根症状や外側大腿皮神経の絞扼性障害である可能性があり、病態はさまざまです。
このような症状を改善へと導くためには、適切な病態把握が必要であり、それには評価・鑑別を行う必要があります。
この段階で見誤ってしまうと、症状を改善に導くことができず、特に症状が変わらないということが生じます。筋のリラクセーション効果により一時的には痛みが緩和するとしても、時間が経過すれば症状が戻ってしまうことでしょう。
そこで今回の記事では、適切な病態把握のために必要な、股関節外側部の痛みの評価・鑑別方法を解説していきます。
評価・鑑別方法
過用により筋の攣縮が生じており、同部位に圧痛があり、そこが痛い場合は筋性の問題である可能性が高いです。例えば、大腿筋膜張筋や外側広筋によるものです。
ただ、これだけの評価で筋性の問題だと決めつけるのは早いかもしれません。バックグラウンドで何か問題が生じているが故に、筋が緊張してしまっていることがあります。
そのため、鑑別するためには、まず問診による情報収集が必要です。
運動時・動作時の痛み、就寝時に横向きで寝ると痛い、起床時に痛みが生じるなどの確認を行いましょう。また、現在腰痛が伴っているのか、既往歴として腰部の問題の有無についても確認しましょう。
さらに、症状が痛みなのか痺れなのか、本人の主観と擦り合わせていくことがとても重要です。稀に、痛みの感覚を痺れと言っていたり、痺れの症状をよくわかっていない場合があります。
- 動作時痛の有無
- 就寝時に横向きで寝ると痛い
- 起床時に痛い
- 座っていると痛い
- 歩くと痛い
- 捻ると痛い
- 腰痛の既往歴の有無
- 腰痛と併発して症状が生じる
ざっくり上記のような内容が確認できると良いでしょう。
それぞれの問題がどのような病態の可能性を示唆しているのかを解説していきます。
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大転子疼痛症候群(GTPS)
大転子疼痛症候群(Greater Trochanter Pain Syndrome:GTPS)という病態があります。
GTPSでは、大転子周辺に動作時痛があり、横向きで寝ていると大転子が圧迫されてしまうため痛みが生じることがあります。就寝時に痛みで目が覚めてしまったり、痛みにより眠れないという状態になります。
GTPSが疑われる場合、大転子の圧痛を確認すること、中・小殿筋の圧痛の確認、股関節内外旋に対する抵抗運動による症状の再現、片脚立ちによる症状の再現の有無を確認しましょう。
- 大転子の圧痛
- 中・小殿筋、外側広筋、腸脛靭帯の圧痛
- 股関節内旋・外旋に対する抵抗運動
- 片脚立ち30秒
股関節内外旋に対する抵抗運動と片脚立ちによる症状の再現が、どちらか一方でも確認される場合はGTPSと考えられます。両方とも陽性であり、大転子の圧痛が確認されれば、より一層評価の信頼性は高くなります。
ただし、変形性股関節症の病態と関係する点がありますので、GTPSと確定するには以下で解説する所見が除外できることが条件となります。
GTPSの病態や評価方法を詳しく知りたいという方は、こちらの記事をご参照ください。
変形性股関節症
変形性股関節症(Hip OA)では、起床時痛や鼠蹊部痛、レントゲン上の変形の進行、股関節の可動範囲の制限(特に内旋・外旋の制限)が確認されることがあります。日常生活の動作では、靴下や靴を履くのが難しいであったり、長時間歩くと痛みが生じてくることもあります。
これらが該当しない場合、股関節に対するストレステストを行い、関節内病変が生じてしないかを確認しましょう。
- Compression Test
- IROP Test
- FABER Test
- Scour Test
- RSLR Test
これらの評価が陽性である場合は、股関節唇損傷が疑われることになります。いわゆる関節内病変により、股関節外側に疼痛が放散しているということです。
寛骨と大腿骨の位置関係によって関節内病変が生じている場合、周囲の筋も影響を受けるため筋性の痛みが生じることも考えられます。
関節唇損傷に対する評価方法を詳しく知りたいという方は、こちらの記事をご参照ください。
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腰椎神経根症状
腰椎神経根症状である場合、股関節外側には放散痛が生じる場合と痺れの症状が生じる場合があります。
これは先ほども記載したように、問診による確認をした方が良いでしょう。
腰椎が問題となっている場合、腰椎椎間関節の問題が生じている可能性があり、前後屈・回旋などの動きでは制限されることが考えられます。また、腰部の筋には圧痛が認められることも考えられます。
さらに、下肢神経伸張テストも行う必要があります。Slump TestやStraight Leg Raise Test(SLR)を行うと良いでしょう。罹患側だけではなく、反対側でも症状が確認できる場合は、神経痕症状である可能性が高くなります。
- 座位or立位での前後屈・回旋動作
- Slump Test
- SLR Test
- Kemp Test
- Springing Test
- Rotation Glide Test
これらの評価により、腰部+股関節外側に症状が再現される場合もあれば、腰部のみに症状が生じる場合もあります。どちらの場合も、腰部に対して試験的に介入することで、股関節外側の症状が緩和するのであれば、腰椎が問題であったと考えることができます。
下肢神経ストレステストに関する詳しい内容・評価・解釈方法を知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
また、腰椎椎間関節に対する評価方法に関する内容は、こちらの記事をご参照ください。
外側大腿皮神経の絞扼性障害
これまでの評価で陽性となる所見がほとんどない場合、外側大腿皮神経の絞扼性障害である可能性があります。
この場合、鼠蹊部周辺での外側大腿皮神経の絞扼が考えられるため、圧迫により同部位の再現痛の有無、股関節伸展・内転による神経伸張による再現痛の有無を確認すると良いでしょう。
外側大腿皮神経は個人差・バリエーションが豊富な神経であるため、圧迫をする際には注意が必要となってきます。神経のバリエーションに関しては、こちらの記事をご参照ください。
外側大腿皮神経は大腰筋を貫通していることがあり、これを踏まえると大腰筋の過緊張により外側大腿皮神経が絞扼されることもあります。大腰筋が短縮している場合には、骨盤前傾・股関節屈曲・外旋する傾向にあるため、後面に位置する梨状筋にも影響が及ぶ可能性があります。半ば強引な仮説ではありますが、梨状筋症候群による下肢神経症状と併発する可能性もあるということは、頭の片隅に置いておいても良いのではないでしょうか。
この病態は『知覚異常性大腿神経痛』と言われています。詳しい内容にご興味のある方は、こちらの記事をご参照下さい。
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まとめ
これまでの内容をまとめると、このような流れになります。
まずは問診からある程度絞りこみ、そこから疑わしい病態に関する評価を行い、さらに絞り込んでいきましょう。
1つの病態だけが該当することもあれば、2つの病態に該当してしまうことがあるかもしれません。このような場合は、さまざまな評価を統合し、試験的介入を行った上で、反応を確認してから決めると良いでしょう。
なかなか一回では決めきれないことも多々ありますので、経過を行っていく中でも適時評価を再確認しながら、必要があれば軌道修正すれば良いと考えております。
患者・クライアントさんへは、病態の説明として考えられる可能性をお伝えし、随時経過を追って考えていくことを説明することで、相手からの信頼度を得ることができ介入もスムーズに進んでいくと思います。
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