腰椎椎間関節に対する評価方法

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腰椎椎間関節

今回の記事では、腰椎椎間関節に対する評価方法をご紹介していきます。

腰痛を有する方に対面した時に、痛みが筋肉による痛みなのか、あるいは関節周辺の痛みなのかを大きく区分することは、臨床上重要な評価であると考えています。

5つの腰椎のイラスト

腰椎椎間関節の動きは、屈曲時には上位椎体が下位椎体に対して上前方に滑り、伸展時には上位椎体が下位椎体に対して後下方に滑ります。右回旋では、右の椎間関節は後方に滑り、左の椎間関節は前方に滑ります。左回旋では、反対の動きが見られます。

椎間関節の動き

  • 屈曲:下位椎体に対して上位椎体が上前方に滑る
  • 伸展:下位椎体に対して上位椎体が後下方に滑る
  • 回旋:下位椎体に対して上位椎体の同側椎間関節は後方に滑り、対側椎間関節は前方に滑る

『曲げた時に腰にツッパリ感がある、伸張感があるから筋・筋膜性の痛みだ!』と判断するにはまだ早いです。それは、関節周辺の組織(関節包など)が伸張されることで痛みが生じることも考えられるからです。

そのため、以下でご紹介する腰椎椎間関節に対する評価方法を臨床でも取り入れていただき、適切な評価・機能的診断が下せるようにしていきましょう!

Lumbar Quadrant Test(Kemp Test)

Lumbar Quadrant Testとは、別名Kemp Testです。

Kemp Testなら聞いたことがあるという方は多いかもしれません。

このテストでは、伸展+側屈+回旋を行いますので、腰椎椎間関節は圧縮される方向に動きます。

関節がぶつかるような動きになりますので、関節内病変が疑われる際には、痛みが再現されることになります。

評価方法

  • 立位にて後屈動作(腰椎伸展動作)を行います
  • さらに、側屈・回旋動作を加えます
  • 腰部・臀部・大腿などに再現痛が生じる場合に陽性です

ただし、Kemp Testの感度・特異度・尤度比の値は低く、臨床上の診断制度としては低いと考えられます。

以下の表は、感度(Sensitivity)・特異度(Specificity)・尤度比(Likelihood Ratio:LR)のまとめになります。
※LR+:陽性尤度比 / LR-:陰性尤度比

Sensitivity Specificity LR+ LR-
Laslett, 2006 85.7 21.8 1.10 0.66
Manchikanti, 2000 32.1 67.3 0.98 1.01
Revel, 1998 23 51.7 0.48 1.49

上記の表から言えることは、Kemp Testが陽性だからといっても、椎間関節性の問題と診断できないということです。

そのため、以下でご紹介するテストも行い、多角的に評価していくことが必要となります。

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Springing Test

腹臥位で腰椎椎間関節に圧縮・牽引ストレスを加える評価方法となります。

腰椎の不安定性の評価としても用いられることがあるテストです。

このテストは、腰椎だけではなく、胸椎・頸椎の評価としても用いることが可能です。

腹臥位で行いますので、そもそも腹臥位で痛みが生じてしまい姿勢保持困難な場合はテストを行えません。特に、急性腰痛の場合は注意しましょう。

腰椎椎間関節をそれぞれ個別に評価していきます。

評価方法

  • 腰椎の中間位を保つために腹部にタオルをいれます
  • 腰椎横突起あるいは棘突起を腹側へ押します
  • L5から開始してL4→L3…と徐々に上位腰椎に向かって行います
  • 動きの量・End feelを確認しましょう
  • 痛みの有無に関しても確認しましょう

横突起を押す場合は、示指・中指を左右の横突起におき、反対側の手を添えて体重をかけるようにして腹側へ押します。
この時に横突起においている手で直接押さないのは、動きの量やEnd feelを確認するためのモニターとして感覚に集中するべきだからです。

また、L5からL1に向かって、下位から上位へと評価を進めていくのにも理由があります。

L5を押した時、L4/5には離開ストレスが加わります。この時、L5/S1には圧迫ストレスが加わります。

L4を押した時には、L3/4に離開ストレス・L4/5には圧迫ストレスが加わります。

この時には、L5も腹側に押されてしまい、L5/S1にも圧迫ストレスが加わると考えられます。先にL5/S1の問題を除外する必要があるため、下位から順に行っていきます。

テスト結果の解釈方法

例えば、L5を押しても問題なかったのに、L4では痛みが生じ、L3では軽度の痛みが生じ、L2では生じない場合があったとします。

・L5:痛みなし
・L4:痛みあり
・L3:軽度の痛みあり
・L2:痛みなし

この時、L4/5レベルの椎間関節に問題があると考えられます。

理由は、上記の圧迫・離開ストレスの関係により解釈することができます。

L5を押した時には、L4/5には離開ストレスが生じますが、上記の結果から痛みはありません。

L4を押した時にはL4/5に圧迫ストレスが加わり、これが痛みを生じさせています。

ではなぜ、L3でも軽度痛みがあるのでしょうか?

L3を押した時にはL3/4に圧迫ストレスが加わります。この時、L4も一緒に腹側へ押されてしまうため、L4/5に圧迫ストレスが加わってしまうことが考えられます。

痛みが強い場合は、L2を押しても痛みが生じる可能性があり、それより上位を押しても症状が生じる場合もあると考えられます。

ただし、ここで注意していただきたいポイントがあります。

L4を押した時には、L3/4に生じる離開ストレスが痛みとして感じてしまう可能性もあります。

これに関しては、他の所見と組み合わせて評価をしていく必要があります。
以下でご紹介するRotation Testや、動作による評価(例えば屈曲時痛が生じるなど)を統合していくと良いでしょう。

Rotation Test

Springing Testで、どの椎間関節で問題が生じているのかをある程度把握できるかと思いますが、症状が片側だけの場合や片側回旋時のみの痛みである場合、左右どちらの椎間関節で問題が生じているのかを把握する必要があります。

Rotation Testを行うことで、右側の椎間関節、左側の椎間関節の問題を分けて評価することが可能となります。

しかし、腰椎は構造の関係で回旋はわずかな範囲でしか生じませんので、評価を行う際には注意していきましょう!

評価方法

  • 腰椎の中間位を保つために腹部にタオルをいれます
  • セラピストは左側に立ち、右手でASIS、左手をL5棘突起に置きます
  • L5棘突起が動き出す手前まで、右手で骨盤帯を右回旋させます
  • 痛み・違和感が生じる場合は陽性です
  • 動きの量も確認しましょう
  • L4→L3→L2→L1と上位に向かって評価しましょう

上記でL4で痛みが生じた場合、L4/5椎間関節の右側で痛みが生じているということが考えられます。この時、L5で痛みが生じない場合は、L5/S1椎間関節の問題は除外できます。

L4で痛みが生じた場合、L3・L2で行った際にも痛みが生じる可能性があります。それは、骨盤帯から回旋の操作をしているため、L5/S1・L4/5椎間関節には既にストレスが加わっていることが起因しています。

上記のことから、より細かく評価したい方は、上下椎体の棘突起を把持し回旋ストレスを加えるのが良いでしょう。

あるいは、Springing Testを片側の横突起で行うことでも代用可能です。

片側の椎間関節にストレスを加えているように思えますが、腹側へストレスを加えてしまっていることから両側の椎間関節にストレスを加えてしまっていることも考えられます。
そのため、評価結果の解釈は十分注意しましょう。

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まとめ

いかがでしたでしょうか?

腰椎椎間関節の評価方法に関して、ここまで詳しくまとめてある記事は他に無いのではないかと感じています。

臨床場面において、上記でご紹介したテストを組み合わせていただくことで、より信頼性の高い評価・介入が行えるのではないでしょうか。

これらは、『痛みの原因が何か?』『どの部分が痛いのか?』を評価しています。

しかし、臨床上は『なぜその部分が痛いのか?』『なぜその部分にストレスがかかっているのか?』まで評価しないと治療になりません。

そのため、腰椎だけではなく、股関節や胸郭などの隣接部位を確実に評価することが必要となります。これに関しては、今後まとめ記事を掲載していきたいと思います!

参考文献

The diagnostic accuracy of the Kemp’s test: a systematic review : Kent Stuber, BSc, DC, MSc, Caterina Lerede, BSc, DC, Kevyn Kristmanson, BSc, DC, Sandy Sajko, BPE, DC, MSc, RCCSS, and Paul Bruno, DC, PhD, The Journal of Canadian Chiropractic Association, 2014

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