梨状筋症候群を鑑別するために行うべき4つのスペシャルテスト

評価方法

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下肢の痺れ・放散痛

今回は、下肢痺れの中でも『梨状筋症候群』に関する評価の方法をご紹介していきます。

下肢痺れを呈する患者さんを評価する上で、”腰椎椎間関節部分での神経根による症状なのか?”それとも、”梨状筋による坐骨神経圧迫での症状なのか?”を鑑別しないと、治療をしても症状がズムーズに改善されないことがあるかと思います。

安易に『梨状筋』というワードを使って患者さんに説明すると、痺れの原因がその部分に集約されていると思い込んでしまっている方も多くいるのが現状でしょう。

そのため、これらを鑑別するためにはどのように評価を行うべきなのかをご紹介していきます!

梨状筋症候群とは

梨状筋症候群は、何らかの原因により梨状筋が坐骨神経を圧迫するストレスと、坐骨神経へ伸張ストレスが加わることで症状が引き起こされます。

症状の範囲は、殿部から大腿後面までがほとんどであり、下腿後面まで痺れが生じることもあります。
これらの症状は、寝ている時や、長時間の座位姿勢・立位姿勢の保持、歩行において症状がみられます。

痺れ以外には、腰痛や罹患側の下肢筋力低下がみられることが多く、筋力低下においては自覚症状がない場合もあります。

原因は、仙腸関節の機能不全や、L5/S1椎間関節の問題、梨状筋・坐骨神経の関係によるものが考えられます。

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梨状筋症候群の評価

梨状筋症候群を疑う際に、行うべき整形外科的テスト・スペシャルテストは4つあります。

評価の内容としては、『梨状筋を短縮・伸張することで坐骨神経に圧迫ストレスを加える』『梨状筋を収縮させることで坐骨神経に圧迫ストレスを加える』の2つを肢位を変えて行なっていく形となります。

もちろん、梨状筋の圧痛を確認したり、Active Straight Leg Raise(ASLR)やPassive Straight Leg Raise(PSLR)、Slump Testなども行なっていただくことで、坐骨神経にストレスを加えた評価も考慮する方が、より明確になると考えられます。
では、順にご紹介していきます!

Friberg Test

まずは、背臥位で行うことができるFriberg Test(フライバーグテスト)になります。

梨状筋は股関節外旋筋群であることを考慮し、股関節伸展位で内旋させることで筋を伸張させ、坐骨神経を圧迫するようなストレスを加えます。

テスト方法

  1. 背臥位にて、股関節を内旋させます
  2. 可能であれば、ベッドから罹患側下肢を下ろします
  3. 膝関節90度屈曲位にて股関節を内旋させます
  4. 症状の再現があれば陽性です

個人的には、腹臥位でも代用可能と考えます。
梨状筋の圧痛なども一緒にみることができますし、何よりも患者さんの肢位変化を少なくすることができます。

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FAIR Test

次に行うのが、Flexion Adduction Internal Rotation Test(FAIR Test)になります。

梨状筋の外旋筋群の一部にあたりますが、習慣的機能の逆転により、股関節屈曲60度以降は内旋筋群になります。
そのため、屈曲位で内旋を加えることで、梨状筋を短縮させて坐骨神経を圧迫する評価になります。

テスト方法

  1. 罹患側を上にした側臥位にて、股関節を90度屈曲させます
  2. 膝関節90度屈曲にて、股関節を最大内転させます
  3. 股関節内旋を45度まで加えていきます
  4. 症状の再現があれば陽性です

このテストにより、坐骨神経の走行に沿った再現痛や、坐骨神経と梨状筋の交差する部位に疼痛を訴えれば陽性となります。

股関節内旋を加えている途中で症状が再現された場合、45度まで行わなず途中で止めましょう。
症状が増悪しないよう、注意が必要になります。

Betty Test

ここからは、梨状筋を収縮させる評価になります。

まずは、Betty Test(ベティテスト)になります。
罹患側を上にした側臥位にて、股関節を外転させる運動を行なってもらいます。

テスト方法

  1. 罹患側を上にした側臥位にて、股関節中間位にします
  2. 股関節外転運動を行なってもらいます
  3. 症状の再現があれば陽性です

大腿筋膜張筋・中殿筋・小殿筋が収縮しますが、梨状筋も一緒に収縮します。
筋収縮による坐骨神経の圧迫により症状が再現されることが考えられます。

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Pace Test

最後は、Pace Test(ペーステスト)になります。
座位にて、股関節外転・外旋方向への抵抗運動を行います。

テスト方法

  1. 股関節・膝加熱90度屈曲位の座位姿勢をとります
  2. 膝の外側に手を置き、内側に向かって抵抗を加えます
  3. 股関節外転・外旋の抵抗運動を行なってもらいます
  4. 筋力低下・症状の再現があれば陽性です

このテストに関しては、左右の筋出力の低下も評価の基準になります。

また、”下肢を動かすこと・力を入れることへのためらい” に関しても陽性の所見となります。

まとめ

いかがでしたか?

1つのテストのみでは評価の信頼性は乏しいため、これら4つのスペシャルテストを複合的に考慮していただけると良いでしょう

評価はどの順番でも大丈夫ですので、行いやすい方法で実施してみてください。

下肢の痺れが、腰椎由来なのか?それとも梨状筋症候群なのか?を鑑別することは非常に難しいので、多角的に評価していきましょう!

こちらの記事では、梨状筋症候群の症状の特徴や原因を解説していますので、是非ご参照ください。

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参考文献

Orthopedic Physical Examination Tests: Pearson New International Edition: An Evidence-Based Approach: Chad E. CooK, Eric Hegedus, 2013

コメント

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