なぜ腓腹筋を過剰に使用してしまうのか?

コラム

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腓腹筋

今回の記事では、なぜ腓腹筋が硬くなるのかを足部と重心の観点から考えていきます。

腓腹筋は、大腿骨内側顆・外側顆から踵骨にまで付着しています。作用は足関節底屈・内反、膝関節屈曲です。

足関節背屈制限や膝関節伸展制限を引き起こし、臨床的にも問題となるケースが多いです。

ただ単純にストレッチングをしてその場で改善されても、次の時には硬さが戻ってしまうことも多いのではないでしょうか。
このような場合ですと、腓腹筋が問題なのではなく、他の部位の問題があるために腓腹筋が過剰使用されているということが考えられます。

高齢者の方で、「夜中・起床時にふくらはぎをよく攣ってしまう」というようなことを訴える方もいますが、これも同様のことが生じていると考えられます。
(毎日ストレッチングをするようになってから、改善されるという方も多くいますが…)

問題を抱えている方々はそれぞれ要因が違うことが考えられますが、今回は大きく4つの問題を考えていきます!

腓腹筋を緊張させる要因

  1. 重心の前方変位
  2. 足部剛性の低下
  3. 推進力を生み出す
  4. 着地時の衝撃吸収

これらを順に解説していきます!

重心の前方変位

まずは重心が前方に変位している場合です。

この場合、足関節には背屈モーメントが生じます。それに抵抗するように足関節底屈モーメントを働かせるので、モーメントアームの長い”腓腹筋”を使用することが考えられます。

このことから、重心が前方に変位してしまう理由を考えないといけません。

1つ目に考えられるのは、骨盤前傾・腰椎伸展位で姿勢保持している場合です。いわゆる”Lordosis”の姿勢です。
普段筋力トレーニングしている方であったり、常に”ビシッ”と気を張っている方であったり…常に交感神経がONの状態で生活している方に多いですね。
ハムストリングや臀筋で支えることを忘れがちな状態で、大腿四頭筋や大腿筋膜張筋-腸脛靭帯で支えているので、なかなかこの状態から抜け出せなくなってしまいます。

2つ目に考えられるのは、骨盤後傾位・股関節軽度伸展位で姿勢保持している場合です。いわゆる”Sway back”の姿勢です。
特に、股関節を安定させるために、腸腰筋を使用することが考えられます。

このように姿勢の問題が考えられますが、この姿勢が悪いというわけではありません。
あくまでも姿勢は結果ですので、その結果を変えようとしても本質を捉えていないので改善されない可能性の方が高いです。

つまり、『その姿勢になってしまう問題点を見つけることが重要』ということです。

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足部剛性の低下

次に考えられるのが、足部剛性の低下です。特に、中足部・前足部の安定性の低下です。

普段の臨床では、この要因が多い印象を受けます。

足部内在筋の不活性に伴い、中足部・前足部の安定性が欠如します。それを代償するために、後足部を回外させることが考えられます。

この時に活動を強いられるのは、距骨下関節内反の作用を有する腓腹筋です。
後足部が回外することで内側縦アーチを保持することもでき、荷重に対する安定性を担保するための代償と考えられます。

このような足部の代償を選択している場合、歩行時にはtoe-inを観察する場合が多いでしょう。左右差をチェックすると、よりtoe-inが強い方では腓腹筋が『過緊張・膨隆・発達』していることが確認できると思います。
このtoe-in傾向の場合も足部は内反位のため、足部剛性を高めるようにしていることが考えられます。

この他には、足趾屈筋の筋出力を確認してみたり、距骨下関節のアライメントや回内・回外の可動性を評価することも有用かと考えます。

推進力を生み出す

上記の2つを踏まえた上で、最終的には歩行時に前へと進む必要があります。
その推進力を生み出すために、腓腹筋を使用する可能性があります。

本来は、臀筋群やハムストリングを活性化させて股関節伸展動作や、腸腰筋の遠心性収縮による歩行時の蹴り出しを行うことで推進力を生み出してします。これらが適切に機能していない場合、足関節底屈作用をもつモーメントアームの長い腓腹筋を使用している可能性が高いです。

それぞれ解説していきます。

脚伸展動作により、重心を前方あるいは上方へと移動させています。
股関節伸展mobility制限が生じていたり、臀筋群やハムストリングの機能不全により伸展力を産生できない場合、膝関節伸展・足関節底屈により動作が遂行されます。
膝関節伸展では大腿四頭筋がメインで使用されますが、この筋肉は推進力を生み出すことよりも”ブレーキ”をかける方が得意な筋肉です。これを過剰に使用することで、膝関節周囲の症状を引き起こすことが考えられます。
上記のことから、動作では膝関節伸展よりも足関節底屈を使用する方が効率が良いため、腓腹筋を使用して行われる可能性が高いです。

歩行時の蹴り出しも、股関節伸展の可動性が重要です。この時に、腸腰筋は遠心性収縮を行なっており、その反動によって脚が前方へと振り出すことができると考えられています。
股関節伸展の可動性に問題があり、十分な力を蓄えることができない時、”股関節屈曲で脚を前方に振り出すか”、”足関節底屈により蹴り出すか”のどちらかになります。
足関節底屈により蹴り出す場合では、立脚後期では骨盤後方回旋が生じ、蹴り出しを後ろから観察した時に足底がよく見える状態であることが考えられます。

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着地時の衝撃吸収

最後に、着地時に衝撃吸収です。

例えば、ジャンプ後の着地における場面での話です。この時、脚屈曲動作によって衝撃を吸収します。

股関節屈曲動作(Hip Hingeの動作)が適切に行われない場合、膝関節屈曲動作で大腿四頭筋・足関節背屈動作で腓腹筋の遠心性収縮により代償されます。
全く働かないわけではなく、この部分の負担割合が大きくなってきた場合に、怪我をしてしまうリスクは高くなることはお分りいただけるのではないでしょうか。

ジャンプ動作を頻回に行うようなスポーツをされている方で、大腿四頭筋や腓腹筋は発達しているけれど臀筋やハムストリングはそこまでしていない場合、このような動作を行なっていることが考えられます。

次に行う動作や身体的な負担面を考えた時に、股関節を使用した動作の方が良いのは言うまでもないので、この辺りもチェックしておく必要があるかもしれません。

まとめ

ジャンプ動作を行うアスリートでは、腓腹筋・アキレス腱の弾性力を使用するために足関節が硬いという研究結果もあります。足関節背屈が硬い方が抵抗が大きくなるため、切り返し動作・ジャンプ動作において有利に作用するということです。

そのため、最初にも述べましたが、単純に『筋肉・関節が硬い=ストレッチングをする』という発想にならないように注意しなければなりません。

対象者の身体を診た上で全体と比較してどうなのか、症状と併せて考えた時にどうなのか、ということが大切だと考えています。

今回は腓腹筋についてでしたが、他の筋肉でも考えていきながらシリーズ化してみたいと思います!

こちらの記事では、腓腹筋の機能解剖と筋腹のバリエーションをまとめていますので、併せてご参照ください!

コメント

  1. […] なぜ腓腹筋を過剰に使用してしまうのか?今回の記事では、『なぜ腓腹筋が硬くなるのか?』を重心の前方変位や足部剛性の低下、推進力を生み出すこと、衝撃吸収をすることなどの観 […]