システマティックレビュー・メタアナリシス・コクランレビューの違いはなに?

コラム

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EBMの重要性

EBMとはEvidence-Based Medicineの頭文字を取ったもので、日本語に訳すと”根拠に基づく医療”です。

”エビデンス”の重要性は近年よく言われている事象だと思います。

果たして”根拠に基づく医療”とはなんなの?ということですが、簡単に言うと、『現在利用可能な最も信頼できる情報を踏まえて、目の前の患者さんにとっても最善の治療を行う』ということになります。

つまり、EBMとは医療を円滑に行うための道具であり、行動指針であるわけです。あくまでも指針であるということに、注意していただけると良いかもしれません。

今では数多くの研究・論文が無料で閲覧可能となっておりますが、その中で『システマティック・レビュー』『メタアナリシス』『コクランレビュー』と横文字が出てくると思います。
違いはよく分からないけど、とりあえずシステマティックレビューでも読んでおけば間違いないか…と考えておられる方もいるでしょう。

そこで今回の記事では、『これらの違いはなんなのか?』を簡単にまとめていきます!

システマティックレビュー

システマティックレビュー(Systematic Review)とは、クリニカルクエスチョン(clinical question;CQ)に対して、研究を網羅的に調査し、同質の研究をまとめ、バイアスを評価しながら分析・統合を行うことです。

もう少し分かりやすくすると、ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial:RCT)などの質の高い複数の臨床研究を、複数の専門家や研究者が作成者となって、一定の基準と一定の方法に基づいてとりまとめた総説のことをいいます。
具体的には、明確で焦点が絞られた疑問から出発して、網羅的な情報収集を行い、集められた情報を批判的に吟味し、それらの情報を要約するという手続きがとられます。

※RCTとは、ある試験的操作(介入・治療など)を行うこと以外は公平になるように、対象の集団(特定の疾患患者など)を無作為に複数の群(介入群と対照群や、通常+新治療を行う群と通常の治療のみの群など)に分け、その試験的操作の影響・効果を測定し、明らかにするための比較研究です。

システマティックレビューは大きく2つに分かれ、その内の一つが定性的システマティックレビューです。
研究や除外された研究の数、対象者の特性と人数、比較と介入の方法、バイアスリスクの評価などを記述し、深い理解を与えるために定性的にまとめたものをいいます。

もう一つが、定量的システマティックレビューです。これを、メタアナリシスと言います。

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メタアナリシス

メタアナリシス (Meta-Analysis)とは、統計的手法を用いてランダム化比較試験(RCT)など複数の原著論文のデータを定量的に結合させる総説論文のことを意味します。エビデンスのピラミッドの頂点に君臨しているのが、無作為化比較試験(RCT)を集めたメタアナリシスです。分析の分析という意味で,個々の原著論文の分析をまとめてさらに分析することを表しています。

つまり、メタアナリシスはシステマティックレビューの一部分と言えます。

「システマティックレビューとメタアナリシスは同じではないか!」と思われるかもしれませんが、両者には少し違いがあります。

メタアナリシスの作成方法が必ずしもエビデンスに基づいていないのに対し,システマティックレビューはエビデンスに基づくことが必須であるという点が重要な違いになります。また、メタアナリシスでは結果のまとめ方が定量的であることが必須であることに対し、システマティックレビューでは批判的吟味という過程を重視しており、定量的に結果を表すかどうかは問われません。

コクランレビュー

コクランレビュー(Cochrane Review)は、医学論文のシステマティックレビューを行なう国際的団体のコクランが作成している、質の高いシステマティック・レビューとして定評のあるもので、年に4回発行されています。

つまり、コクランレビューもシステマティックレビューの一部分と言えます。

以下は、コクラン共同計画のウェブサイトからの引用です。
コクランは、質の高い情報を用いて健康上の意思決定をしたいと考える人のためにあります。医師、看護師、患者、介護者、研究者、資金提供者に関係なく、コクランが提供するエビデンスはあなたの医療知識と意思決定をより良いものにする強力なツールとなります。

コクラン共同計画におけるシステマティックレビューとは、ある目的とする医学的介入についてのエビデンス(科学的根拠)を明らかにするために、世界中からの論文をあらかじめ定めた基準で網羅的に収集し、批判的評価を加え、要約し、公表することです。コクラン共同計画では、このシステマティックレビューに厳密な方法論を定義しており、最新・最良のエビデンスを継続的に提供しようとするものです。

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まとめ

メタアナリシス・コクランレビューは、ともにシステマティックレビューの一部分であるということでした。

エビデンスの観点から言えば、メタアナリシスよりもシステマティックレビューの方が優れています。そのシステマティックレビューをさらに批判的に吟味するコクランレビューの方が、エビデンス的には優れていると言えるでしょう。

なるべく質の高い研究論文を読み解釈し、EBMとして利用することが重要だと考えられますが、EBMを実践することとエビデンスを患者さんに当てはめることには大きな違いがあります。
時間をかけて勉強をしても、得られた情報を患者さんへ押し付けてはいけません。頭の中で情報を整理して、それを患者さんへ適応なのかを判断することが必要となります。

ガイドラインも、EBMの手順にそって作られているものがありますが、その中で推奨されている治療法なども、必ずそれに従わないといけないというものではありません.

情報過多な時代だからこそ、その情報を適切に利用するためには、自分の頭で考えることを怠らないようにしていかなければいけませんね!

参考文献

  1. 日本理学療法士協会
  2. 厚生労働省 eJIM 総合医療エビデンス
  3. コクラン共同計画
  4. http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/guideline/pdf/handbook2014_4_1.1.pdf
  5. http://lifescience.co.jp/yk/jpt_online/cochrane/index_cochrane.html
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