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上肢の痺れ・放散痛
上肢の痺れ・放散痛には、頸椎由来の症状、胸郭出口症候群(Thoracic Outlet Syndrome:TOS)・腋窩四辺形間隙症候群(Quadrilateral Space Syndrome:QLS・QSS)・円回内筋症候群・手根管症候群などの上肢由来の症状があります。
上肢の痺れを訴えた患者さんに出会った時に、これら諸症状のうちどれに当てはまるのか?を評価することが、症状を改善するためには必要になります。
適切な評価を行うことで適切な治療を行うことができ、症状の改善を早めることに繋がると考えられます。
原因と思われる部位を特定するためにはどのように評価を進めていくべきでしょうか?
また、自信を持って分かりやすく評価結果を患者さんに伝えることができるでしょうか?
今回は、上肢の痺れ・放散痛を有する方に対する、頸椎および上肢の神経伸張テスト・スペシャルテストをご紹介していきます!
頸椎の評価と神経伸張テストの組み合わせ
Wainner’s Clinial Prediction Rule for Cervical Radiculopathyと言われる、4つの評価基準があります。
上肢の痺れや放散痛がある時に、最初に行うべきスクリーニング評価であり、特異度が高く症状を再現するには最適になります。
リスク管理の観点からも、いきなり症状のある患者さんに触れるよりも、『まずは可能な範囲でご自身で動かしてもらう』ことが大切です。(「動かされたせいで症状が強くなった!」なんて言われないよう、自分の身を守るためにも必要な考え方です。)
- 頸椎の回旋角度が60度以下
- Spurling Testが陽性
- Distraction Testが陽性
- Upper Limb Tenstion Testが陽性
これら4つのテストを組み合わせることで、特異度および陽性尤度比がグンっと上がっていきます!
感度 | 特異度 | LR+ | LR- | |
---|---|---|---|---|
2つテストが陽性 | 39 | 56 | 0.88 | 1.08 |
3つテストが陽性 | 39 | 94 | 6.1 | 0.64 |
4つテストが陽性 | 24 | 99 | 30.3 | 0.76 |
3つが陽性だと特異度が94・陽性尤度比が6.1となるため、頸椎由来の上肢痺れ・放散痛と疑うにはこの段階が分かれ目になると考えられます。
4つ全て陽性であると、特異度が99・陽性尤度比が30.3であるため、頸椎由来の痺れ・放散痛であると考えて良いでしょう!
では、それぞれのテスト方法をご紹介していきます。
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Spurling Test
まずは、座ったまま行えるSpurling Test(スパーリングテスト)をご紹介します。
Spurling Testは、頸椎における神経根障害を評価するものになります。
- 頭頸部を左右どちらかに側屈させます
- 天井を見るように指示し、頸椎を伸展させます
- 症状の再現があれば陽性です
側屈・伸展のどちらとも、椎間関節は後方滑る動きを伴いますので、椎間関節が圧迫されます。
そのため、側屈+伸展で椎間関節にストレスを加え、神経根症状を誘発するということになります。
Upper Limb Tension Test(ULTT)
次に行うものが、Upper Limb Tension Test(ULTT):上肢の神経伸張テストになります。
ULTTは1と2に分かれ、1が正中神経・2が橈骨神経を評価することになります。
神経そのものに伸張ストレスを加え、症状を誘発するテストになります。
- 頸部を反対側側屈・回旋させます
- 肩関節90度外転・外旋位で保持します
- 前腕回外・手関節背屈・手指伸展を加えます
- 可能な範囲まで肘を伸展してもらいます
- 症状の再現があれば陽性です
- 頸部を反対側側屈・回旋させます
- 肩関節内旋位で保持します
- 前腕回内・手関節掌屈・手指屈曲を加えます
- 可能な範囲まで肘を伸展してもらいます
- 症状の再現があれば陽性です
正中神経は外側、橈骨神経が内側に腕を捻るというイメージで覚えてもらえればと良いでしょう。
頸部をニュートラルな位置に戻すと症状は軽快する場合は、断定はできませんが頸部周辺に何かしらの問題があると考えても良いかもしれません。
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Rotation Test
次に頸椎回旋のテストになります。
頸椎を回旋することで、回旋側の椎間関節は後方滑り、反対側の椎間関節は前方滑りの動きを生じます。
そのため、罹患側に回旋をすることで椎間関節にストレスが加わり、頸椎神経根症状が増悪する可能性があります。(もちろん、反対側に回旋をしても症状は増悪する可能性もあります。)
基準は、『60度以上回旋することができるか』になります。
まず座位で評価し、そのあと背臥位で評価すると良いでしょう。
座位では、重力により椎間関節には圧縮される力が加わるため、比較的安定しやすいです。
しかし、背臥位では椎間関節には圧縮が加わらず、椎間関節は後方滑りをする方向へ力が加わりやすいです。
そのため、背臥位の方で回旋してもらうことの方がストレスが大きいということになります。
- 座位で左右の回旋をしてもらう
- 背臥位で左右の回旋をしてもらう
- 背臥位にて他動で回旋をする
まずは自動で回旋を行なってもらい、それでも症状が誘発されない場合に限り、他動で回旋を行います。
さらに同側に側屈を加えることで、より椎間関節にストレスを加えることもできますが、症状を増悪させる可能性もあるということを念頭に置いて、注意しながら行いましょう。
Distraction Test
最後に行うのが、Distraction Test(頸椎の牽引・椎間関節の離開)になります。
この評価を行うことにより、上肢の痺れ・放散痛の症状は軽減することが期待できます。
これは、椎間関節を離開することで、神経根の圧迫を軽減するためだと考えられます。
- 背臥位にて頭頸部をニュートラルに保持します
- 一方の手で下顎、他方の手で後頭骨を把持します
- 張力を感じるまで牽引力を加えます
- 症状が軽減すれば陽性です
基本的には、まっすぐ牽引を加えると良いですが、頸部の回旋・屈伸を軽度加えることで、より症状を軽快させることができるかもしれません。
それは、頸椎の関節面の構造やアライメントに個人差があることが、要因となっているでしょう。
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まとめ
知らないテストがありましたでしょうか?
基本的に皆さんが知っている整形外科的テスト・スペシャルテストを組み合わせることで、上肢の痺れ・放散痛の評価をスムーズに行うことができます。
- 頸椎椎間関節にストレスを加える
- 頸椎椎間関節に加わるストレスを減らす
- 神経にストレスを加える
問診や触診、アライメントの評価を行なった上で、スクリーニング評価として参考にしていただければと思います!
また、Compression Testや頸椎の屈曲・伸展可動域なども組み合わせ多角的に評価すると良いでしょう!
参考文献
Orthopedic Physical Examination Tests: Pearson New International Edition: An Evidence-Based Approach: Chad E. CooK, Eric Hegedus, 2013
コメント
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