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頸部痛を診る
頸部痛とは、少なくとも1日以上持続する片側または両側の上肢への痛みを伴う、または伴わない頸部の痛みと定義されています。
前回の記事では2020年12月に出されたシステマティックレビューをもとに、頸部痛の分類・有病率・レッドフラッグに関してまとめてあります。
第2弾の今回はその続きで、既往歴や評価項目・画像診断・予後と経過に関してまとめた記事になります。
第3弾では、患者さんへの情報提供や運動療法・徒手療法などに関してまとめていますので、併せてご参照ください。
ではいきましょう!
既往歴
既往歴の中で特徴的なのものとして、外傷に関連した頸部痛(多くの場合、交通事故)を経験していることです。これは、頸部痛を有する患者のサブグループに該当します。
安静時痛や動作時痛の重症度が高いと予後が悪くなることが考えられます。
仕事に関連した頸部痛(例:週末や仕事を休んでいる間に頸部痛が減少するなど)の患者は、予後が悪いと考えられるため、頸部痛患者のサブグループとみなされます。
この仕事関連の予後不良因子は多岐にわたっています。
頸部由来の頭痛(典型的には頸部痛の後に発症し、首の動きによって増悪することが多い頭痛)の患者が、頭痛患者のサブグループなのか、頸部痛患者のサブグループなのかは明らかではありません。
このサブグループの予後および予後因子に関するデータは不足しているのが現状です。
神経学的症状または感覚障害(感覚喪失または反射の変化など)を有している頸部神経根症状も頸部痛患者のサブグループとみなされます。
特に、肘まで放射状に広がる感覚障害と痛みの両方を有することは高い特異性を示しており、頸部神経根症と診断(Rule-in)できると考えられます。
これらの神経学的症状や感覚障害を伴わない放射性の症状があると、GradeⅡの頸部痛とみなされます。頸部神経根症の患者の予後は良好で、大多数の患者は4〜6ヶ月以内に回復することが期待されます。
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Physical Examination
身体検査は、姿勢評価・触診・ROM・MMT・深部腱反射の検査・感覚の検査・スペシャルテストからなります。
これらの身体検査のうち、どの検査を行うかは、病歴から得られた所見と、それらの所見が示唆する診断によって決まります。
身体検査の目的は、その最初の診断を確認したり、除外したりすることにあります。
頸部痛患者に対する一般的な身体検査の診断的価値については、ほとんど知られていません。
また、頸部痛患者と外傷性頸部痛、仕事関連の頸部痛、頸部由来の頭痛の患者を区別するための、特定のテストの診断的価値についても情報がありません。
ガイドラインでは、頸部神経根障害の初期診断を確認したり、除外したりするために、特定の検査を行うことを推奨しています。
最もよく知られているスペシャルテストは、Spurling Test・Traction Test・Upper Limb Tension Test・肩関節外転テストです。
いくつかの研究では、Spurling TestとTraction Testの両方が比較的高い特異度を持っていることが示されおり、Spurling Testでは89~100%、Traction Testでは90~97%と評価として有用性が高いと考えられます。
そのため、どちらの評価も最初の仮説を確認するのに有用であると考えられます。(high Specificity and a Positive test rules In the diagnosis; SpPIn)
一方で、Upper Limb Tension Testは感度が87~93%と高いため、頸部神経根障害を除外するために使用することができます。(high Sensitivity and a Negative test rules Out the diagnosis; SnNOut)
こちらの記事では、頸椎由来の上肢痺れ・放散痛の評価方法をまとめていますので、併せてご参照ください!
画像診断
様々なガイドラインでは、頸部痛を有する方は画像診断を受けないことを推奨していますが、それにもかかわらず、画像診断は特定の病理学的疾患の確認や除外のために使用されることが多くあります。
骨折の診断には、感度が96~99%のCTスキャンを使用するのが最適だと考えられています。MRIは頸椎椎椎間板ヘルニアの診断に有効であり、感度と特異度は95~97%と高い値を示しています。このように、どちらも検査も特定の疾患に対しては有効だと考えられます。
しかし、重度の外傷がない限り、画像診断は通常は推奨されていません。
MRIを用いた画像診断を受けた1,211人の比較的健康で無症状の参加者を対象とした研究では、参加者の87%以上が「椎間板の膨隆」を呈し、5.3%が脊髄の圧迫を呈しています。
また、33の文献で無症候性3,110人のMRI画像所見を年代別で比較した研究では、椎間板の膨隆は40代で50%、椎間板の突出は40代で30%、椎間関節変性は60代で50%も確認されています。
このように、様々な年代においても画像上の問題というのは無症状の人にも見受けられるため、画像診断のみで状態を判断するということは最適でないでしょう。
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予後と経過
頸部痛を有する方の50~85%が完全に回復しないと推定されており、頸部痛にはエピソード性と再発性があるとされています。
経過を追ったシステマティックレビューでは、急性頸部痛患者は発症後6.5週間で平均疼痛スコアが45%低下したが、その後はそれ以上の疼痛の低下は見られなかったことが報告されています。
つまり、その間には徒手的介入や運動を用いた、個人に適した治療を受ける必要性があるということです。その介入によっては、疼痛の予後が大きく左右されるということが考えられます。
頸部神経根症状を有する患者の予後は、神経根症状のない頸部痛患者よりも良好です。このような研究結果ですが、個人的には意外だと感じます。
神経症状のない、いわゆる原因が明らかでない頸部痛の場合、慢性化しやすいということなのかとも捉えられますね。慢性化してしまうと、さらに明確な原因が分かりにくくなってしまうということも考えられます。
一般的に、予後不良に関連する要因がいくつか挙げられています。
- これまでの頸部痛の経過
- 腰痛の併発
- 頭痛の併発
- 健康状態の悪さ
- 心理的要因(不安・心配・不満・抑うつなど)
- 仕事に関連した症状(仕事の満足度の低さ・身体的要求度の高い仕事)
また、予後が良好な因子は3つほど挙げられています。
- 年齢の若さ
- 積極的な対処法
- 楽観的な思考
あくまでの一般的なものなので、必ずしも当てはまるものではありません。1つの指標といった程度に捉えておくと良いかと思います!
参考文献
- Arianne P Verhagen, Physiotherapy management of neck pain, Journal of Physiotherapy, 2021
- Nakashima H, Yukawa Y, Suda K, Yamagata M, Ueta T, Kato F. Narrow cervical canal in 1211 asymptomatic healthy subjects: the relationship with spinal cord compression on MRI. Eur Spine J. 2016
- W.Brinjikji, P.H. Luetmer et al., Systematic Liteature Review of Features of Spinal Degenertion In Asymptomatic Populations, AJNR Am Neurotadiol, 2015
コメント
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