胸腰筋膜の機能解剖:中葉・前葉と外側縫線
腰痛との関係

胸腰筋膜中葉・前葉・外側縫線の機能解剖第4弾のタイトル 解剖学&運動学

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胸腰筋膜の中葉

第4弾の今回は、胸腰筋膜の中葉(Middle Layer of ThoracoLumbar Fascia:MLF)の機能解剖をご紹介していきます。

胸腰筋膜は前・中・後の3つの層に区分されています。

胸腰筋膜の3層
後葉は2つの膜層で構成されており、表層膜 (広背筋腱膜)と深層膜が存在します。

中葉は、傍脊椎筋と腰方形筋の間を通過するfascial bandとなります。

前葉は、腰方形筋の前方を通過し、後方では腰方形筋と腸腰筋の間を通過します。

今回は、中葉と外側縫線の機能解剖と腰痛との関係を解説します。

MLFの特徴

MLFは、腰方形筋と傍脊椎筋の間に位置します。

MLF腱膜は、腹筋群で産生された張力と腰椎の間の主要な繋がりを形成する役割をします。

腹横筋(Transversus Abdominis:TrA)腱膜の内側連続体、横突間靭帯の外側連続体とされています。
つまり、MLFは横突起先端から生じる、厚くて非常に強力な腱膜構造です。

MLF

  • 上縁:第12肋骨
  • 下縁:腸腰靭帯と腸骨稜
  • L2尾側からTrA腱膜の外側に生じる
  • Th12・L1・2横突起間は腰肋靭帯(弓状コラーゲン帯)により強化される

TrAと内腹斜筋(Internal Oblique)は、MLFになる腱膜内で接続します。

腱膜が脊柱起立筋外側縁のPRS深層に結合する領域では、外側縫線と呼ばれる組織の肥厚が生じます。

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MLFの構造

MLFの横突起先端は厚さ約0.62mmですが、他の場所では0.11-0.34mmあります。
棘突起付近のPLF表層膜の平均の厚さは約0.56mmになります。
そのため、MLFはPLFよりも厚いということです。

中葉における多くのコラーゲン線維は、横突起に到達するまでにわずかに尾外側へ方向付けられます。(水平より10-25°低い線維方向)

中葉は、腹側筋系から背側筋系を分離する筋間中隔に由来します。

TrA腱膜は腹側筋を覆い、PRS後壁は背側筋を覆います。
腰方形筋の上皮筋膜がMLFの3番目の構成要素にあたります。

外側縫線

PRS(深層膜)外側縁において、腸骨稜から第12肋骨まである密性結合組織の肥厚した複合体です。

これは、TrA腱膜(腹側筋)と背側筋の傍脊椎鞘の接合部を示します。

腹部筋膜構造が傍脊椎筋を囲む支帯に結合する領域で形成されます。
TrA・内腹斜筋の腱膜鞘と、傍脊椎鞘の外側縁の結合は、密性結合組織の隆起結合を形成します。
この点において、追加の結合組織膜は、腱膜とPRSの外側縁の間に現れます。
この構成により、腰椎筋膜下三角(Lumbar Interfascial Triangle:LIFT)と呼ばれる、外側縫線に三角形状構造を形成します。

この結合組織複合体を通じて、外側縫線は腹部筋膜帯によって生成された張力をPRS前後面に向かって消散させています。

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胸腰筋膜の前葉

TLF前葉は薄く膜性です。(0.06–0.14mm)

外側縫線から伸びており、腰方形筋の前を通過して、腸腰筋と腰方形筋の付着部の間の横突起遠位端に向かって付着します。

胸腰筋膜と腰痛の関係

腰痛患者の2例におけるTLFの免疫組織科学検査において、凍結肩に見られるものに匹敵する筋線維芽細胞の密度を示す研究結果があります。

筋線維芽細胞は収縮力が増加した結合組織細胞であり、デュピュイトラン拘縮や凍結肩などの病的な筋膜性拘縮の原因となります。

筋線維芽細胞の短期収縮能力は骨格筋線維と比較してかなり弱いですが、細胞収縮の漸増的加算と周囲のコラーゲンマトリックスのリモデリングは、長期にわたる組織の”拘縮”につながる可能性があります。

腰痛の一部の症例は、TLFの硬化と関連している可能性があり、そのような状態はある意味“凍結腰”として説明できます。

筋線維芽細胞の活動を刺激するための最も強力な生理学的薬剤の1つは、サイトカイン腫瘍成長因子(TGF)-β1です。

高い交感神経活動は、TGF-β1発現の増加に伴う傾向にあるため、TLFの硬化と弾性の損失の要因となる可能性があります。

他の寄与因子は、遺伝的要因・炎症性サイトカインの存在、および頻繁な微細損傷の存在です。

微細損傷を繰り返している慢性腰痛疾患では、心理社会的因子を考慮していくかと思いますが、このような拘縮様の症状も含まれる可能性があります。

そのため、慢性腰痛疾患においては、このような組織学的変化も考慮された方が良いでしょう。

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参考文献

The thoracolumbar fascia:anatomy, function, and clinical considerations:F.H. Willard, A. Vleeming, M.D. Schuenke, L. Danneels, R. Schleip: Journal of Anatomy, 2012

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