SLAP損傷(上方関節唇損傷)に対する評価方法:4つのスペシャルテスト

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肩関節前方不安定症の評価

SLAP損傷(Superior Labrum Anterior Posterio Lesion)は、肩関節に加わるストレスよって関節唇上部が損傷してしまう病態です。

一般的には、オーバーヘッドスポーツにおける反復動作が問題となることがあります。
オーバーヘッドスポーツの動作とは、野球での投球動作、バレーボールでのスパイク動作、テニスでのサーブ動作などが該当します。

その他、外傷や肩関節過伸展、重たい荷物を持ち上げた時、転倒で手を着いた時などさまざまな場面で生じる可能性があります。

SLAP損傷は、他の病態と併発していることや、腱板断裂・肩関節不安定症といった病態と非常に似ていることから、鑑別診断が難しい場合があります。
そこで、スペシャルテストを用いたスクリーニング検査を行い、適切な病態把握・介入を行えるようにしていく必要があります。

今回の記事では、様々なスペシャルテストを複合的に考慮し、最も信頼性のあるスペシャルテストの組み合わせをご紹介していきます。

感度・特異度・尤度比

SLAP損傷に対するスペシャルテストは数多く存在しているため、どのテストから行うべきかの判断が難しいです。また、それぞれのテスト単独では感度・特異度・尤度比が低く出てしまうため、複数のテストを組み合わせることがオススメされます。

以下の表は、感度(Sensitivity)・特異度(Specificity)・尤度比(Likelihood Ratio:LR)のまとめになります。
これを参考にして、最も良いスペシャルテストを選択する必要があります。
※LR+:陽性尤度比 / LR-:陰性尤度比

Sensitivity Specificity LR+ LR-
Passive Distraction Test 53 94 8.83 0.11
Compression Rotation Test 43 89 6.36 0.68
Yargason Test 20 92 2.91 0.59
Anterior Apprehension Test 74 45 2.29 0.51
Speed Test 20 88 1.73 0.57
Relocation Test 61 47 1.36 0.53
Active Comression Test 66 36 1.1 0.5
Biceps Load Ⅱ Test 55 53 1.2 0.85
Relocation or Active Compression Test 72 73 2.67 0.38
Compression Rotation Test &
Active Compression Test &
Biceps Load Ⅱ Test
22 95 4.40 0.82
Passive Distraction Test &
Active Compression Test
70 90 7.00 0.11
Compression Rotation or
Apprehension or
Speed
80 28 1.1 0.71
Compression Rotation Test &
Apprehension Test &
Speed Test
25 92 3.13 0.82

”Passive Distraction Test”や”Compression Rotation Test”は、特異度および陽性尤度比が高いので、単独での使用も可能だと考えられます。

ただ、他のテストと組み合わせた方が多角的な評価が行えます。その方が評価の信頼性は高くなるでしょう。

組み合わせとしては、”Compression Rotation Test”・”Active Compression Test”・”Biceps Load Ⅱ Test”の組み合わせと、”Passive Distraction Test”・”Active Compression Test”の組み合わせが良いです。

テストを行う順番としては、まずPassive Distraction Testを行い、その次に両方の組み合わせに含まれるActive Compression Test、次にCompression Rotation Test、Biceps Load Ⅱ Testと行うのが良いのではないかと考えられます。

では、それぞれのテスト方法を解説していきます。

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Passive Distraction Test

Passive Distraction Testは、単独の使用も可能な結果が得られていますが、複数のテストを組み合わせた方がより良い評価になります。

そのため、そもそも『SLAP損傷なのか?』を鑑別するための第一選択として、非常に有効になります。

テスト方法

  1. 背臥位にて肩関節150°外転・肘関節伸展させます
  2. 上腕骨が回旋しないように安定させます
  3. 前腕を回内させます
  4. 前方または後方に痛みが生じる場合は陽性です

肩関節150°外転できずテストが行えない場合、以下のテストを行うようにしましょう。

Active Compression Test

Active Compression Testは、SLAP損傷が疑われる時だけでなく、肩鎖関節の問題が疑われる時にも有効なテストになります。

Active Compression Testは、別名:O’Briens Test(オブライエンテスト)です。

テスト方法

  1. 座位にて肩関節90°屈曲・10〜15°水平内転させます
  2. 自動運動で肩関節内旋・前腕回内してもらいます
  3. セラピストは下方へ徒手抵抗を加えます
  4. 次に肩関節外旋・前腕回外位にて同様に徒手抵抗を加えます
  5. 内旋時に疼痛があり、外旋時に疼痛が減少・消失していれば陽性です

この時、疼痛の深さに関して問診する必要があります。
あくまでも目安になりますが、表層の場合は肩鎖関節、深層の場合は関節唇の問題が考えられます。

疼痛の質

  • 表層部分での疼痛である場合:肩鎖関節
  • 深層部分での疼痛である場合:関節唇

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Compression Rotation Test

Compression Rotation Testは、TypeⅡのSLAP損傷を鑑別するのに有効なテストになります。

※TypeⅡとは、関節唇上方と上腕二頭筋腱が関節唇から剥離し、上腕二頭筋腱が不安定になっている病態です

Compression Rotation Testは、別名:Crank Test(クランクテスト)です。

テスト方法

  1. 背臥位にて肩関節90°外転・肘関節90°屈曲させます
  2. 肘を関節窩に向かって上腕骨軸上に圧縮を加えます
  3. 肩関節を内旋・外旋させます
  4. 疼痛の再現・クリック・キャッチングがある場合は陽性です

ほとんどの場合、内旋よりも外旋で疼痛が生じやすいと言われます。

また、外旋位から内旋へ動かし始めるタイミングは症状が生じやすいタイミングのように感じます。

Biceps Load Ⅱ Test

ここまでの評価は、肩関節にストレスを加えるテストでした。
Biceps Load Ⅱ Testでは、上腕二頭筋腱に直接ストレスを加えていきます。

テスト方法

  1. 背臥位にて肩関節120°外転・最大外旋させます
  2. 肘関節90°屈曲・前腕回外させます
  3. 肘関節を屈曲させるように指示し、セラピストは徒手抵抗を加えます
  4. この時に疼痛が生じるor増悪する場合は陽性です

Yargason Testとは肢位が違い、純粋に上腕二頭筋腱のみにストレスを加えることができるため、有用な評価だと考えられます。

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まとめ

SLAP損傷が疑われる際に行うべきテストは、Passive Distraction Test、Active Compression Test、Compression Rotation Test、Biceps Load Ⅱ Testになります。

まとめ

  1. Passive Distraction Test
  2. Active Compression Test
  3. Compression Rotation Test
  4. Biceps Load Ⅱ Test

どのテストも肩関節外転が90°以上になりますので、損傷直後の炎症期でそこまで達しない場合があると思います。
どの評価もストレスを加えるものになりますので、炎症期の段階で無理に行い症状を増悪させないように気をつけましょう。

これらのテストは、動作時の痛みが長期間持続している場合や、引っかかり感などが生じている場合に行うと良いかもしれません。ある程度経過を見ながら、スムーズに改善されない場合は疑いをかけて評価していきましょう。

また、最初にもお伝えしましたが、他の症状との鑑別が難しい症状です。
腱板損傷や肩関節不安定症に関する評価方法は、こちらの記事をご参照いただければと思います。

参考文献

  1. Physical examination tests of the shoulder:a systematic review and meta-analysis of diagnostic test performance:Gismervik et al. BMC Musculoskeletal Disorders 2017
  2. Combining orthopedic special tests to improve diagnosis of shoulder pathology:Eric J. Hegedus, Chad Cook, Physical Therapy in Sport16, 2015
  3. Which physical examination tests provide clinicians with the most value when examining the shoulder? Update of a systematic review with meta-analysis of individual tests, Eric J Hegedus, Br J Sports Med 2012
  4. The Passive Distraction Test: A New Diagnostic Aid for Clinically Significant Superior Labral Pathology, John A. Schlechter, D.O., Stacy Summa, P.A.-C., and Benjamin D. Rubin, M.D., Arthroscopy: The Journal of Arthroscopic and Related Surgery, Vol 25, No 12 (December), 2009
  5. Orthopedic Physical Examination Tests: Pearson New International Edition: An Evidence-Based Approach: Chad E. CooK, Eric Hegedus, 2013

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