梨状筋症候群の3つの原因
仙腸関節・腰椎椎間関節と梨状筋・坐骨神経のバリエーション

病態

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梨状筋症候群の原因を考える

今回の記事では、『梨状筋症候群の原因となりうるのは何か?』を私になりに考えたものとまとめていきます!

梨状筋症候群で問題となっているのは梨状筋と坐骨神経ですが、あくまでも梨状筋は原因ではなく被害を受けている部分であると考えられます。

そのため、原因は梨状筋以外の部分にあり、単にマッサージやストレッチを行うことでは改善されないことの方が多いかもしれません。

梨状筋症候群の原因を、大きく3つに分けて考えておりますので、順番に解説していきます!

①仙腸関節由来

まず一つ目に考えられるのが、仙腸関節が原因となっていることです。

梨状筋は、仙腸関節周囲の関節包に付着しているため、仙腸関節の安定性に寄与しています。
つまり、仙腸関節の機能不全により梨状筋が過緊張状態に陥る可能性があります。

これに関して、より深く考えていきましょう!

仙腸関節後方は、L5・S1・S2後枝外側枝が神経支配しています。
仙腸関節への侵害刺激は、L5・S1・S2に支配されているため、梨状筋・双子筋群に反射性攣縮を生じさせます。

そのため、同神経に支配される多裂筋も反射性攣縮を引き起こします。

仙腸関節周囲の多裂筋の反射性攣縮の増強は、仙腸関節自体の感受性を高めることで、より一層梨状筋の反射性攣縮を引き起こします。

これらのループが梨状筋症候群を引き起こすと考えられ、腰痛も同時に引き起こすために症状を分かりにくくする原因の一つになります。

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②腰椎椎間関節由来

次に、腰椎椎間関節が原因となっていることが考えられます。

椎間関節は、脊髄神経後枝内側枝に支配されます。

L5/S1椎間関節に生じたストレスによる侵害刺激は、L5内側枝を介して梨状筋に反射性攣縮を生じさせます。

同神経に支配される多裂筋にも反射性攣縮が生じ、腰痛も同時に引き起こすことが考えられます。

仙腸関節由来のものと考え方は似ていますが、原因となる部位が違うため、介入部位の違いにより症状の改善度合いが変わってくるでしょう!

③梨状筋の破格

梨状筋と坐骨神経の関係には解剖学的バリエーションがあり、もともと症状を引き起こしやすい構造をしていることも考えられます。

現在では、6つのパターンに分類されることがわかっています。

梨状筋と坐骨神経の関係

  1. 梨状筋の下を坐骨神経が通過
  2. 坐骨神経が分断し、梨状筋の真ん中・下を通過
  3. 坐骨神経が分断し、梨状筋の上・下を通過
  4. 梨状筋の真ん中を貫通
  5. 坐骨神経が分断し、梨状筋の上・真ん中を通過
  6. 梨状筋自体が分断し、その間を坐骨神経が通過

6つの分類があるものの、パターン1が約83%、パターン2が約14%で、残りの3〜6が約1%ずつくらいの割合になっております。

そのため、この解剖学的バリエーションが原因となるのは非常に珍しいですが、梨状筋の間を坐骨神経が貫通している場合は、介入方法の次第によっては症状が増悪することも考えられます。

このことは、頭の片隅に置いておくことは非常に重要なことと考えています。

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姿勢との関連

梨状筋症候群の症状の特徴として、長時間の座位保持で症状が出現することが挙げられます。

つまり、不良な座位姿勢は症状を引き起こす可能性があると考えられます。

骨盤が後傾している場合、仙腸関節は不安定となるために、周囲の靭帯や関節包を緊張させることで安定化を図ります。
仙腸関節の靭帯や関節包の緊張を、梨状筋が代償する可能性があります。

ほとんどの症状は左右差があると思いますが、それには骨盤の回旋が関与しています。
骨盤が後傾し左回旋している場合、左側の仙腸関節はより不安定性が増すと考えられます。

また、デスクワークにおける頭頸部や上位胸郭のアライメント(特に左右への回旋)も関与しています。
それは、頭頸部・上位胸郭の回旋を、運動連鎖で腰椎・骨盤帯で代償することがあるためです。

例えば、デスクワーク仕事において、右を向いたり、右へ上半身を捻る動きの頻度が多くなるとします。
そうなると、頭頸部・上位胸郭は右回旋位のアライメントになることは想像つくかと思います。
それを、正中位を保とうとするために、骨盤帯が左回旋することで代償することが考えられます。
(代償は、骨盤帯や下位胸郭で代償することもあるために、一概には当てはまらないと考えています。)

介入方法の検討

これらを踏まえた上で、どのような介入方法が適しているのかを考えていきます。

梨状筋症候群への介入

  • 仙腸関節の安定化に寄与する筋へのアプローチ
  • 腰椎椎間関節の問題へアプローチ
  • 股関節機能不全へのアプローチ
  • 坐骨神経へのアプローチ

これらは、梨状筋症候群の原因に対するアプローチの候補になります。

上記の問題点へのアプローチに加え、その問題点を引き起こしているさらなる要因を評価し、その部分への介入を行うべきだと考えています。

例えば、腰椎への問題を引き起こしているのは、胸郭の機能不全がある可能性があります。
その場合、腰椎椎間関節への介入のみでは、その問題が解決されないため、胸郭への介入が必要であることとなります。

深掘りしていくと、堂々巡りのように問題点だらけになってしまうため、『症状を引き起こす原因』と『その原因となる部位の問題を引き起こしている部分」にターゲットを絞って考えても良いかもしれません。

こちらの記事では、梨状筋症候群の症状の特徴と、評価方法(スペシャルテスト)を解説していますので、是非ご参照ください。

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参考文献

  1. Non-surgical management of piriformis syndrome: a systematic review; F Cramp, O Bottrell, H Campbell, P Ellyatt, C Smith, and B Wilde.
  2. The clinical features of the piriformis syndrome: a systematic review;Kevork Hopayian, Fujian Song, Ricardo Riera, and Sidha Sambandan, Eur Spine J. 2010 Dec; 19(12): 2095–2109.
  3. Deep gluteal space problems:piriformis syndrome, ischiofemoral impingement and sciatic nerve release;Luis Perez Carro, Moises Fernandez Hernando, Muscles, Ligaments and Tendons Journal 2016;6 (3):384-396
  4. 梨状筋症候群における発症機転についての考察 ―初診時理学所見よりみる発症タイプの分類―; 中宿 伸哉, 林 典雄, 赤羽根 良和, 山崎 雅美, 吉田 徹

コメント

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