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MTSSの鑑別評価
運動により生じる下腿の痛みを、『MTSSなのか?』『神経絞扼による影響なのか?』を鑑別していくための指標になります。
- 『圧痛あり&安静時痛あり』は、MTSS or 疲労骨折を示唆します。
- 『圧痛あり&安静時痛なし』は、神経絞扼症候群を示唆します。
- 『圧痛なし&安静時痛なし』は、膝窩動脈絞扼症候群 or 慢性労作性コンパートメント症候群を示唆します。
MTSSは、深層後面コンパートメント症候群の診断と重複する可能性があります。
これを分けることにおいて重要なポイントは、深層後面コンパートメント症候群と比較した場合、運動後の痛みが長期間持続することにあります。
そして、MTSSを以下と区別することが重要です。
- 疲労骨折
- 慢性労作性コンパートメント症候群
- 坐骨神経症状
- 深部静脈血栓症(DVT)
- 膝窩動脈の絞扼
- 腫瘍
- 動脈内線維症
- 感染
MTSSとの鑑別で気をつける2つのポイント
以下は、シンスプリントと誤って診断されることがある2つの状態です。
①下腿前面(外側)の痛みは、コンパートメント症候群である可能性があります。
コンパートメント症候群の症状には、下肢の痛み・感覚異常・足関節や足部の筋力低下が含まれます。
②下腿の痛みは、疲労骨折である可能性もあります。
これは、シンスプリントよりもはるかに深刻な怪我です。
疲労骨折の痛みは限局性で、5cm未満の圧痛が確認されます。鋭利痛で触れるだけでも痛みがあるため、簡便に見つけることができます。
夜間の就寝により骨に加わる負担が一時的になくなるため、翌朝の起床時には痛みが軽減することが多いでしょう。シンスプリントの場合は、不動により軟部組織が一晩で硬くなってしまい、翌朝に状態が悪くなっていることがあります。
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タイプ分類
MTSSは、3つのタイプに細分化されています。
- タイプⅠ
脛骨の微小骨折・皮質骨折 - タイプⅡ
筋膜接合部での骨膜炎 - タイプⅢ
慢性コンパートメント症候群
シンスプリントを診断するために画像検査は必要ありませんが、エコーのよる評価を行うことが役立つ可能性があります。
損傷が疲労骨折に発展した場合、X線により確認できることがあります。CTでは、疲労骨折と脛骨内側ストレス症候群の違いを示すことができます。MRIでは、腫瘍・浮腫を除外することもできます。
診断手順
病歴・既往歴と身体検査に基づいて診断を下すことが最も論理的な手順です。
問診
病歴・既往歴で、痛みの発症と場所に関する情報を把握しましょう。
脛骨内側縁遠位2/3に沿って運動誘発性の痛みがある場合はMTSS診断が疑われます。
アスリートに対しては、何が痛みを悪化させ、緩和したかを問診すると良いでしょう。
運動中または運動後に痛みが引き起こされ、休息すると症状が軽減される場合、MTSS診断が疑われます
また、けいれん・灼熱感・圧迫されるようなふくらはぎの痛み・足をピンや針で刺されたような感覚異常の有無を確認しましょう。
これらの症状は、慢性労作性コンパートメント症候群の兆候です。MTSSと併発する可能性もあるため注意しましょう。
上記の症状が存在しない場合は、MTSSが疑われます。
触診
脛骨内側縁を触診した時の痛みが生じる部位を確認しましょう。
『圧痛がない場合』や『痛みの範囲が5cm未満である場合』は、他の下腿の怪我(疲労骨折など)が存在する可能性があり、MTSSではないと鑑別することができます。
MTSSに典型的ではない他の症状が存在する場合、例えば内側縁に沿った”目で確認できる腫れまたは紅斑”は、他の下腿の損傷を考慮する必要があります。
触診により5cm以上の痛みが確認され、非定型症状がない場合は、MTSSと診断されます。
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評価のポイント
疲労骨折とは異なり、痛みは特定のポイントに集中せず、脛骨内側縁の5cm以上の領域でみられます。
痛みを伴う領域では、筋肉の付着部ではなく下腿深筋膜が脛骨内側縁に付着しています。
内反膝や外反膝など膝の形態的特徴・脛骨の捻転(外捻・内捻)・大腿骨の前捻・内側縦アーチの機能異常・脚長差ついて評価することは非常に重要です。さらに、足関節や距骨下関節の可動性も評価する必要があります。
臨床においては、ハムストリングと大腿四頭筋のインバランスや、”コア”のスタビリティ・モーターコントロールを評価する必要があります。
また、運動時に履いている靴が”磨耗していないか”確認すると良いでしょう。
靴の状態を確認することで、動作におけるバイオメカニクスの異常と一致するパターンが明らかになるかもしれません。
特に、歩行におけるバイオメカニクスを考慮することは非常に重要なことだと感じます。
MTSSスコア
MTSSスコアは、実用的な方法で損傷の重症度を測定する新しい患者報告型のアウトカム尺度です。
研究結果では、MTSSスコアは有効で信頼性が高く応答性があります。
MTSSスコアは15項目で構成されています。
- 現在のスポーツ活動
- 現在のスポーツ活動の量
- 現在のスポーツ活動の内容
- スポーツ活動を行っている間の痛み
- スポーツ活動中の痛みの発症までの時間
- スポーツ活動全体の痛み
- スポーツ活動全体の痛み
- スポーツ活動後の痛み
- 立っているときの痛み
- 歩いているときの痛み
- 階段を上り下りするときの痛み
- 一般的な日常活動
- 安静時の痛み
- 夜間の痛み
- 触る痛み
これらをまとめると、『安静時の痛み』『ADLを行う際の痛み』『スポーツ活動における制限』『スポーツ活動を行う際の痛み』の4項目からなる単純な尺度になります。
これらから得られる結果は、患者の視点からMTSSの重症度を測定し、痛みの領域における各項目の重要度、日常生活動作およびスポーツ活動の制限を裏付けています。
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参考文献
- Winters, M. Medial tibial stress syndrome: diagnosis, treatment and outcome assessment (PhD Academy Award). Br J Sports Med. 2018
- Lohrer, H., Malliaropoulos, N., Korakakis, V., & Padhiar, N. Exercise-induced leg pain in athletes: diagnostic, assessment, and management strategies. The Physician and sports medicine. 2018
- Moen, M. H., Tol, J. L., Weir, A., Steunebrink, M., & De Winter, T. C. Medial tibial stress syndrome. Sports medicine. 2009; 39(7): 523-546.
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