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モビライゼーションは本当に必要か
※本記事では、モビライゼーションを徒手による操作としています。
患者・クライアントさんに対面して身体評価を行い、硬い部分をマッサージやストレッチする治療・施術を行う、というようなことがルーティン化していませんか?
軟部組織モビライゼーションや関節モビライゼーションを行うにあたり、評価をしないでいきなり行う方はほとんどいないでしょう。評価をした結果、硬いから治療・施術することを悪いと言っているわけではないので、そこは注意して読み進めていただければと思います。
本記事では、『“本当に硬いのか”を、一度立ち止まって考えてみるべきかもしれない』ということを述べていきます。
これは、“骨・関節のポジションによって、硬いと感じてしまっている可能性がある”ことが理由となります。
例として、股関節を考えていきます。
股関節の屈曲や内旋方向へ動かした際に、股関節前面のつまり感や痛みが生じてしまい、End Feelは軟部組織性の柔らかい感じではなく、関節包の制限による硬い感じであったとしましょう。寛骨臼に対して大腿骨頭の可動性を評価した時に、尾側滑りの可動性に問題があったとします。この評価結果から、大腿骨頭尾側滑りの関節モビライゼーションを実施するかもしれませんが、ここで一度再考します。
もし仮に、寛骨が前傾・前方回旋している状態であった場合、相対的に股関節屈曲位になり、股関節周囲の靭帯の影響により大腿骨は内旋するため、屈曲および内旋の制限が生じる可能性があります。
また、股関節屈曲位での内旋では、大腿骨頭は尾側(下方)滑りの動きを呈します。寛骨のアライメントによっては、股関節内旋は股関節関節包下部と坐骨大腿靭帯緊張によって制限されてしまうと考えられます。
このことから、寛骨に対する大腿骨のモビライゼーションを行う前に、寛骨を後傾・後方回旋させる筋を使用したエクササイズを行ってみるのも良いと考えることができます。
エクササイズを行ってみることの重要性
もし仮にエクササイズを行った結果、関節の可動域や疼痛・動作が改善された場合、モビライゼーションの必要性はなかったと言えます。
エクササイズをすれば改善するにも関わらずモビライゼーションをしていたとしたら、周囲筋や関節包・靭帯などの軟部組織にストレスを加えていた可能性があります。モビライゼーションをすることで、一時的には症状が軽減される可能性はありますが、『関節の不安定性』や『筋スパズム』を作り出してしまうことも考えられます。
エクササイズを行うことのメリットとしては、自分でセルフケアを日々継続して行うことができることにあります。身体のコンディションが良くない日は、自分一人で症状を改善することができます。また、モビライゼーションは他動的に動かされるだけですが、エクササイズは自動運動で行われる為、神経系との関係や運動学習の観点からも得られる効果は高いでしょう。
・日々継続して行うことができる
・運動学習の観点からもメリットが大きい
身体のコンディションが良い状態を持続できる期間も長くなるでしょう。
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エクササイズ実施時に注意するべきポイント
セルフエクササイズを、適切な筋を使用して、適切なポジションで、適切な動きで行えているのかという点に関しては少々難しいポイントであります。
全て完璧に行えていないといけないわけではありませんが、許容範囲内で実施可能かどうかは重要視していきたいところではあります。そのため、多少の代償動作は許容しつつも、しっかりと効果が得られるセルフエクササイズを選定する必要があります。
・どのような姿勢で行うか
・どのような動かし方で行うか
また、いきなりエクササイズを行って良い感覚が得られる方もいれば、マッサージやストレッチなど何かしら“刺激”を加えた後の方が、筋を使う感覚や姿勢保持のしやすさ、身体の動かしやすさが良い方もいます。
このように何のエクササイズが必要で、どのような順序・組み合わせで実施するかが大切なポイントになってきます。
そして、筋・筋膜や関節のモビライゼーションが必要な方もいます。先にモビライゼーションを実施した方が、筋・関節からの求心性フィードバックの入りやすさが良い可能性があります。ただし、モビライゼーションした後には必ずエクササイズを行った方が良いでしょう。
まとめ
冒頭でもお伝えしましたが、モビライゼーションが悪いという話をしているのではありません。モビライゼーションの効果は高く有効である為、それを行う前に「自分の身体をコントロールしながら動かす練習をすることで何とか改善できる術はないか?」という考えも必要だということです。
これを考えていくことが一番のリスク回避であり、患者・クライアントさんにとってもメリットが大きいように感じます。
エクササイズ・モビライゼーションの何が必要で、何が必要でないか、組み合わせるのであればその順番をどうするのかを見極めるのが専門家の役割ではないでしょうか。
こちらの記事では、可動性と安定性についてまとめておりますので、ぜひ併せてご参照ください。
本記事についてご相談やご質問等がある場合は、お問い合わせフォームや匿名でできる質問箱などをご利用ください。
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