距骨下関節の解剖学的バリエーション

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距骨下関節の解剖学的バリエーションのトップ画像 解剖学&運動学

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距骨下関節

踵骨は、最長で最大の足根骨です。

距骨と関節を形成し、これを距骨下関節と言います。

足部・足関節の骨と関節の名称のイラスト

距骨と関節をなすため、踵骨には関節面がありますが、その関節面の大きさや形態は個人差があり、個人間でも違うことがあります。

関節面の形状に違いがあれば、動作においても大きな差を示すことは容易に考えられます。

今回は、踵骨における距骨関節面のバリエーションをご紹介し、それを踏まえた上での評価・介入をしてくことを検討していきます!

距骨下関節の動き

距骨下関節では、足部の内反・外反の動きが起こります。

足関節回外・回内の動きのイラスト

そのため、重心の側方動揺の制動に関与し、歩行においても非常に重要な役割を担います。

距骨下関節の関節面

距骨下関節の関節面には3つの関節面があります。

  • 前距骨関節面
  • 中距骨関節面
  • 後距骨関節面

歩行における距骨下関節の役割

二足歩行への進化に伴い、人間の足は踵骨の隆起を含み、それが距骨下関節軸の傾斜を約42°に増加させました。

この隆起は、内側縦アーチの形成にとって極めて重要になります。
特に、載距突起は内側縦アーチの頂点にありますので、距骨下関節の重要な位置を占めています。

足部内側縦アーチのイラスト

距骨下関節の運動軸は三平面軸であり、『前後の滑り』、『回内外』、『内外転の滑り』を示します。

あらゆる方向に大きく動きますので、足部の状態や靴・地面の状態に適応することができます。

また、距骨下関節は第1列や横足根関節にも影響しておりますので、歩行の接地から蹴り出しまで一連の流れにおいて非常に重要な役割をします。

例えば、距骨下関節が回外位であれば、第一列の可動性は減少しますので、蹴り出しでの安定性は増加します。

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距骨下関節の関節面のタイプ

距骨下関節の関節面には、3つのタイプがあります。

3つの異なるFacets Type

  1. long continuous facet (1つの長い連続の関節面)
  2. separate facet (2つの別々の関節面)
  3. Only one continuous facet (1つの連続した関節面)

2面での構成は他の構成よりも安定している

2つの関節面での構成は、典型的により高い角度の距骨下関節軸と、より鋭い交差角度と関連しています。

特徴は、後距踵関節面と関連して、距骨を“骨性の三脚”の上に位置させ、距骨頭の過剰な動きを防ぐことです。

そのため、2面構成はより安定しており、この構成に関連する病理学的変化の証拠は少ないとされています。

不安定な関節は、不均等な体重分布の結果として外傷・事故、またはその他の生体学的ストレスを受ける可能性が高くなります。

踵骨の関節面の3つのタイプとサブタイプ

踵骨における、前距骨関節面・中距骨関節面・後距骨関節面の3つのタイプ分類と、そのサブタイプの分類をご紹介していきます!

A:前距骨関節面と中距骨関節面が別々の関節

このタイプは、踵骨上で2つの前関節面が存在している形態です。
つまり、前・中・後距骨関節面の3つに分かれているということです。

サブタイプの分岐は、前距骨関節面と中距骨関節面が分離している、その距離によって分けられています。

  1. 前距骨関節面と中距骨関節面の距離が2mm以下
  2. 前距骨関節面と中距骨関節面の距離が2-5mm
  3. 前距骨関節面と中距骨関節面が5mm以上
  4. 前距骨関節面のみの前関節面
    (中距骨関節面がない)

B:前距骨関節面と中距骨関節面が融合している関節面

このタイプは、前距骨関節面と中距骨関節面が合わさった、1つの関節面になります。

そのため、前距骨関節面と中距骨関節面が合わさった前関節面と後距骨関節面の、2つの関節面を有する踵骨になります。

  1. 前距骨関節面と中距骨関節面が完全には合わさっていない状態
  2. 前距骨関節面と中距骨関節面が完全に合わさり、1つの滑らかな関節面を示す

C:1つの関節面

このタイプは、前関節面と後関節面が合わさり、完全に1つの関節面になっています。

  • 前距骨関節面・中距骨関節面・後距骨関節面が1つに合わさった関節面

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距骨下関節のバリエーションと割合

Type Aが26%、Type Bが74%、Type Cが0%という結果となりました。

距骨下関節のタイプ別割合の表です。

Type A Type B Type C
26% 74% 0%

次に、サブタイプの分類の割合を示します。

50人の踵骨のうち、13人がType Aの明瞭な前部と中央の関節面を持つのに対し、37人はType Bの前部と中央の接合した関節面を持つ結果となりました。

どれも、Type Cの単一ではない3つすべて結合することで形成された関節面をもつ人はいませんでした。

Number % Left Right
A1 11 22 7 4
A2 1 2 1
A3 1 2 1
A4
B1 20 40 12 18
B2 17 34 7 10
C
Total 50 100 26 24

距骨と隣接する踵骨上の関節面は、前面と後面は別々に言及されていますが、中央の面は前面の続きとして定義されています。

正確な診断と治療を行うために、これらの違いを明確にして理解することが必要となってきます。

しかし、これらの違いを示す評価項目等はないため、直接距骨下関節を動かして評価していくことが重要と感じます。

距骨下関節への介入

距骨下関節の解剖学的なバリエーションを念頭に置き、評価・治療を行なっていくと良いでしょう!

距骨下関節の運動軸は三平面軸になりますが、動作では主に回内・回外の動き行うためその可動性を評価していくと良いでしょう。

距骨下関節の評価

  • 距骨と踵骨を把持します
  • 距骨を固定し、踵骨を動かします
  • 回内・回外方向へ動かし、その動きの量を評価していきましょう

『回内・回外のどちらかの方向へ動かない』という方が多いのではないでしょうか?

足部としては、距骨下関節は回外位の方が安定しますが、動きの量としては回内方向に制限があることもあります。
この場合、距骨下関節が回内しないために、中足部・前足部が過回内を引き起こしてしまうことも考えられます。

これを踏まえて、距骨下関節への治療方針をまとめます!

距骨下関節の治療

  • 制限のある方向へモビライゼーションを行う
  • 内側縦アーチの保持に関与する筋の機能改善を行う
  • 外側縦アーチの保持に関与する筋の機能改善を行う

まずは、”関節がしっかりと動くのか” が重要となりますので、制限があれば取り除きましょう。

その上で、歩行やその他の動作において足部機能を改善するために、内側・外側縦アーチを保持する筋の機能改善を行なっていく必要があります。

後脛骨筋・長母趾伸筋・長趾屈筋長腓骨筋・短腓骨筋・前脛骨筋・長趾伸筋

さらに、距骨下関節・周囲の筋機能へ問題を与える部位への介入も行うと良いでしょう!

その他の部位への介入

  • 中足部・前足部への介入
  • 脛骨回旋への介入
  • 股関節・骨盤帯への介入

上記は例になります。
その他の問題点があれば、その部位へ徒手的介入や運動でのアプローチなどが提供できると良いでしょう。

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テーピングでの注意点

足関節外側側副靭帯の損傷の後で、テーピングを施行することがあると思います。

足関節の内反捻挫のイラスト

装具やシーネで固定することが必要なケースもありますが、距骨下関節へのテーピングを行うことで、痛みが軽減したり歩容が改善されることもあります。

特に、距骨下関節を回外位で保持するようなテーピングは、距骨下関節における骨での安定性が増加するために、靭帯への負担が軽減されることが考えられます。

距骨下関節の解剖学的バリエーションを考慮すると、この時のテーピングの巻き方が人それぞれ違うと思われます。

それは、左右でも違うことが想定されるため、方向を変えながら何度か巻き、その人にあったテーピングの巻き方を行えると良いでしょう!

こちらの記事では、歩行における距骨下関節の動きと下肢〜骨盤〜胸郭の運動連鎖をまとめていますので、ぜひご参照ください!

参考文献

Morphological Study on Patterns of Talar Articular Facets of Human Calcanei:MINI MOL P., NAZMEEN SILOTRY, HARITHA KUMARI N.,International Journal of Medical and Clinical Research, Volume 3, Issue 3, 2012

コメント

  1. […] 距骨下関節の解剖学的バリエーション介入において考慮する点距骨下関節の解剖学的バリエーションを解説していきます!踵骨の前・中・後距骨関節面には個人差があり、それによって […]