コア(core)とはなにか

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コアとは

コアは、腰椎-骨盤-股関節複合体(Lumbar-Pelvic-Hip Complex:LPHC)として定義されています。

LPHCには29の筋が付着しています。
効率的なコアは、機能的な動筋・拮抗筋の長さ-張力関係を維持することができ、LPHCにおけるフォースカップル(force-couple)の関係を維持しています。長さ-張力関係やフォースカップルの関係を維持することは、機能的動作中のLPHCにおける最適な関節運動を維持することが可能になります。

これは、効率的で最適な神経筋作用を与えることができ、機能的動作中の全ての運動連鎖における最適な加速・減速、動的安定化を可能にしています。

また、身体中心の安定性を確保することで、効率的な上肢・下肢の動作をすることも可能になります。

コアは統合された機能的単位として活動し、全ての運動連鎖で協調的に力を産生・減弱・吸収させる、床反力を移行させる、異常な力・外力に対して動的に安定化させるように作用します。

コアの機能的解剖学

コアは、LPHCの筋が関与しています。

腰部の筋では横突棘筋群・脊柱起立筋群・腰方形筋・広背筋、腹部の筋では腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋、股関節の筋では腸骨筋・中殿筋・大殿筋・ハムストリングが含まれます。

まとめ

腰部

  • 横突棘筋群
  • 起立筋群
  • 腰方形筋
  • 広背筋

腹部

  • 腹直筋
  • 外腹斜筋
  • 内腹斜筋
  • 腹横筋

股関節

  • 腸骨筋
  • 中殿筋
  • 大殿筋
  • ハムストリング

それぞれの筋は機能的動作において、1つの面上の求心性収縮による力産生だけではなく、全ての面上の遠心性収縮による力の減弱・減速と動的安定化を考慮するべきです。

そして、1つの筋が単独で作用してもLPHCに効果的な安定化が得られる訳ではありません。協働することで、安定化・神経筋コントロール機能を向上させることができます。

ではそれぞれの筋について解説していきます。

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腰部

腰部の筋では、横突棘筋群・脊柱起立筋群・腰方形筋・広背筋の4つが含まれます。

横突棘筋群

横突棘筋群は、回旋筋、腰棘間筋、腰外側横突起間筋、半棘筋、多裂筋が含まれます。

これらの筋は小さく、動作へ貢献するメリットとしては少ないです。主にタイプⅠ線維で構成されているため、主に腰椎の安定化・姿勢保持に寄与します。

横突棘筋群

  • 回旋筋
  • 腰棘間筋
  • 腰外側横突起間筋
  • 半棘筋
  • 多裂筋

横突棘筋群には、他の大筋群と比較して約2〜6倍の数の筋紡錘が存在すると言われています。そのため、機能的動作中では腰椎分節間における屈曲や回旋をコントロールすることに作用し、腰部の固有受容感覚・情報を中枢神経系へ送ります。

横突棘筋群の中で最も大切なのは多裂筋であり、腰椎分節間の安定化に大きく貢献しています。

脊柱起立筋群

起立筋群は、内側から棘筋・最長筋・腸肋筋が含まれます。

腰背部の筋肉のイラスト

起立筋群

  • 棘筋
  • 最長筋
  • 腸肋筋

起立筋群は、動的な分節間の安定化と、機能的動作における屈曲・回旋に対して遠心性収縮によるコントロールに作用します。

腰方形筋・広背筋

腰方形筋は、中殿筋・大腿筋膜張筋と協働して、前額面上の安定化に寄与します。

腰方形筋のイラストです。骨盤から肋骨に付着していることがわかります。

広背筋は、全ての背部筋の中で最も大きなモーメントアームを有する筋であり、上肢とLPHCを繋いでいるため、LPHCに大きな影響を与えます。

腹部

腹部は、腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋の4つで構成されています。

腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋

これらが効率的に作用する時、LPHCにおいて矢状面・前額面・水平面の安定化に筋が作用します。

腹部

  • 腹直筋
  • 外腹斜筋
  • 内腹斜筋
  • 腹横筋

腹直筋・外腹斜筋

腹直筋は、機能的動作中の動的安定化に作用し、特に伸展に対する遠心性のコントロールに作用します。

外腹斜筋は、機能的動作中の反対側回旋・同側側屈に対しては求心性に、伸展・回旋・側屈に対し遠心性のコントロールに作用します。

内腹斜筋

内腹斜筋は、同側回旋・反対側側屈の求心性に、伸展・回旋・側屈に対し遠心性のコントロールに作用します。

内腹斜筋は胸腰筋膜の後葉に付着を有しており、収縮することで胸腰筋膜を外方へ引っ張ることで張力を高め、胸腰椎の側方変位や回旋に対する安定化に寄与します。

腹横筋

腹横筋は、腹部の中の筋では最も重要であると考えられています。

腹横筋は、腹腔内圧(Intraabdominal Pressure:IAP)を増加させるために作用し、腰椎の回旋・側方変位に対する動的安定化に寄与しています。

研究によると、腹横筋にはフィードフォワード機構が備わっており、四肢の動きの一瞬前には腹横筋の収縮が見られます。(これは多裂筋にも同様に確認されます。)

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股関節

股関節周囲筋は、腸骨筋・中殿筋・大殿筋・ハムストリングが主に関与します。

腰部や腹部の筋と協働して、股関節の動作を行なっています。

腸骨筋

腸骨筋は、OKC(Opne Kinetic Chain)では股関節屈曲・外旋、CKC(Closed Kinetic Chain)では股関節屈曲、腰椎伸展・側屈・回旋に作用します。

腸腰筋のイラスト。腰椎から大腿骨に走行します。

股関節伸展・内旋、腰椎伸展・側屈・回旋に対して遠心性のコントロールに作用します。

表層起立筋群と協働し、L4-5には前方剪断力を生じさせます。これに対して、深層起立筋群・多裂筋・腹横筋・内腹斜筋が作用することで、L4-5を安定させています。

腸骨筋が硬い状態は、大殿筋や多裂筋・深層起立筋群・内腹斜筋・腹横筋の”抑制”を引き起こし、LPHCの動的安定化は得られにくくなってしまいます。

中殿筋

中殿筋は、機能的動作中の下肢・骨盤帯の前額面上の安定性に作用します。

中殿筋のイラスト

CKCでは大腿骨内転・内旋のコントロールを行いますが、適切に作用しないと大腿筋膜張筋-腸脛靭帯や腰方形筋が代償する可能性があります。

また、腰部・腹部の筋が適切に機能していない場合、骨盤帯の挙上が生じてしまい、相対的に中殿筋が活動しにくい場合もあります。

大殿筋

大殿筋は、OKCにおいて股関節伸展・外旋を加速させる求心性の作用を有します。また、CKCでは股関節屈曲・内旋を減速する遠心性のコントロールに作用します。

股関節伸筋群:大殿筋・ハムストリングのイラスト

大殿筋は、股関節だけではなく仙腸関節の動的安定化にも大きく寄与します。

機能的動作中に大殿筋が適切な活動をしない場合、骨盤帯の不安定性や神経筋コントロールの低下に繋がり、それが筋のインバランス・不適切な動作パターン・傷害に繋がります。

ハムストリング

ハムストリングは、膝関節屈曲・股関節伸展・脛骨回旋に求心性の作用を有します。反対に、膝関節伸展・股関節屈曲・脛骨回旋には遠心性のコントロールに作用します。

ハムストリング:半腱様筋・半膜様筋・大腿二頭筋のイラスト

ハムストリングは仙結節靭帯に付着するため、大殿筋と同様に仙腸関節の動的安定化にも大きく寄与します。

コアトレーニングの概念

機能的活動を行うのを可能にする基本的な筋力・神経筋コントロール・筋持久力を向上させることだけに焦点を当ててしまい、脊柱を安定化させるために必要な筋を考慮しないことが往々にしてあります。

仮に四肢の筋が強くコアが弱い場合、上肢・下肢の動作を効率的に行うための胴体の安定化が不十分になってしまいます。つまり、コアが弱いと非効率的な動作となり傷害につながる可能性があります。

コアスタビリティのトレーニングは、LPHCにおける筋力・神経筋コントロール・筋持久力・筋パワーの向上を目的とします。神経筋コントロールや安定化は、全ての運動連鎖における効率的なポジションによって提供され、運動連鎖を通じて最適で効率的な神経筋機能を獲得することができます。

神経筋の効率化は、静的・動的な姿勢アライメントと安定化に作用する筋機能の適切な協働によって確立され、身体に加わる重力や床反力、正しい関節・面・タイミングで生じるモーメントを減速させることが可能となります。

仮に、神経筋システムが非効率であれば、機能的動作中に課せられた要求に応じることができなくなります。神経筋システムの効率性が低下するにつれて、適切な力や動的安定化を維持するための運動連鎖の能力が大きく減少すると考えられます。

機能的動作中の不適切な姿勢保持により、代償的な動作パターンにつながると考えられます。そして、収縮性組織・非収縮性組織に機械的ストレスを増加させ、微細損傷・異常な生体力学的ストレス・傷害につながる可能性があります。

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まとめ

今回の記事では、コアの機能解剖学とトレーニング概念を解説しました。

コアを腰部・腹部だけのイメージでお持ちではなかったでしょうか?
骨盤帯や股関節を含むLPHCがコアであると定義することが多いため、専門家の方々が同じ認識を有していることは最低限必要であると考えます。

ある方は腰部・腹部で話をし、もう一人の方はLPHCで話をしていたら、噛み合わない部分も生じてくるでしょう。

そして、どんなトレーニングでもコアは重要であり、コアを使わないトレーニングはないということです。トレーニングの中でも、LPHCの位置・動作に焦点を当ててトレーニング内容・肢位・負荷を調整することで、コアの安定化としてのトレーニング要素は増えると考えられます。

つまり、無理な姿勢・負荷量でのトレーニングは、代償性の動作パターンを強調することしかせず、身体を”機能的”に向上させることは難しいかもしれません。

コメント

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