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ブリッジ動作
臨床現場で業務をされている方であれば、お尻上げの運動(ブリッジ動作)を行うケースが度々訪れるのではないでしょうか。
もはや、このエクササイズをあまり使わないという方は、あまりいないのではないかとも考えられます。身体の動かし方を学習・練習する上では、非常に重要なポイントが凝縮している運動であると感じています。
痛みが強くて身体を動かすのも辛い状態でも、お尻上げの運動はできるという場合もありますし、運動を行うことで動作時の痛みが軽減することもあります。
お尻上げの運動は、腰椎・骨盤帯・股関節の動きをそれぞれ分離させる必要があります。起こりやすい間違い例としては、お尻を持ち上げる時に腰の方が先に浮いてしまう動きです。
これをしてしまうと、目的としている股関節伸展の動作がメインで行えていませんし、骨盤帯も前傾したままとなって腹部の適切な収縮を感じることが難しくなってしまいます。
修正するためには、腰椎・骨盤帯・股関節の動かす順番を変えることや、“使うべき筋肉が活動している”ということをご本人が感じとることが重要となってきます。
そこで今回の記事では、ブリッジ動作(お尻上げ運動)の手順・方法、エクササイズのプログレッション方法を解説していきます。
ペルビック・ティルト(Pelvic Tilt)
エクササイズの導入段階では、『ペルビック・ティルト(Pelvic Tilt)』という運動が適しています。
この運動から始める利点は、仰向けの姿勢をとっていただいた際に、腰の部分が床面から浮いてしまっている方の場合、それを修正することから始められるということです。開始姿勢の段階で腰が浮いてしまっていては、お尻を上げる動きの時にも腰で持ち上げてしまう可能性が高いので、まずは背中・腰全体が床面に接するように骨盤(Pelvic)を後傾させる必要があります。
・仰向けで膝を立てた姿勢をとります
・息をゆっくりと吐きながら骨盤を後傾させます
最初は、姿勢を保持して呼吸を繰り返すだけでも良いでしょう。以下の確認事項がクリアできていれば、一呼吸ずつ骨盤の動きを行うようにレベルを上げていきます。
・足底全体(特に踵骨)で床面を押す感覚があるか
・背中〜腰全体が床面に着いている感覚があるか
・お腹・太もも裏・お尻に収縮感があるか
・腹部前面が浮き出ていないか
・上肢〜頸部に過剰な緊張がないか
・呼吸は楽に行えているか
上記の確認事項がクリアできていなければ、お尻を持ち上げる運動というのは適切な動きで行えない可能性があるため、注意した方が良いでしょう。ご本人の感覚的な部分が多いので、随時コミュニケーションを取りながら行うことをオススメします。
確認事項の中でも、特に難しいポイントが『腹部前面が浮き出ていないか』ということです。これは別の言葉でいうと『リブフレア』です。
リブフレアとは、下部肋骨の後方回旋・外旋により肋骨が浮き出ているように見える状態のことです。リブフレアが生じていると下位胸椎〜腰椎が伸展してくるので、結果的にお腹を突き出している状態になってしまいます。適切なフォームでは、肋骨が前方回旋・内旋し胴体の横幅が引き締まっているように見えることとなります。
この時に腹部で活動する筋肉は腹横筋や内腹斜筋であり、肋骨を前方回旋・内旋に引き込むように作用します。 しかし、リブフレアの状態でも「腹部の活動を感じる」と回答する方がいます。この場合、“腹直筋”の活動が強調されており腹部を固めているような状態です。
我々がペルビック・ティルト(Pelvic Tilt)で目的としていることは、腰椎・骨盤帯・股関節の運動を分離することにあります。胸骨〜骨盤に付着している腹直筋が活動するということは、分離運動を阻害してしまうので、なるべく使わない・抑制させたい筋肉であるということになります。
このような動かし方をされてしまう方に出会った場合、「まずは息を吐ききって肋骨を下げましょう」とアナウンスしたり、腰椎屈曲・骨盤後継の動きを誘導したり、胸骨下部を骨盤の方向へ向かって後下方へ圧迫するようにすると運動方向が理解できるかもしれません。
少々長くなってしまいましたが、一見簡単そうな動きのペルビック・ティルトには重要な要素が詰まっているということになります。この動きが問題なく遂行できていれば、股関節伸展の動きを強調するヒップリフト(Hip Lift)にプログレッションしていきましょう。
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ヒップ・リフト(Hip Lift)
次の段階で行っていきたいのが、『ヒップリフト(Hip Lift)』です。このエクササイズは言わずと知れた有名な運動なのではないでしょうか。
ヒップ・リフトに対する個人的な考え方としては、ペルビック・ティルトで行った腰椎屈曲・骨盤後傾を保持したまま股関節伸展動作を行っていくエクササイズだということです。ペルビック・ティルトの姿勢が保持できていないのであれば、我々が改善したい股関節伸展動作を腰椎伸展・骨盤前傾での代償を練習しているだけに過ぎません。
・仰向けで膝を立てた姿勢をとります
・息をゆっくりと吐きながら骨盤を後傾させます
・お尻→腰と順に浮かせます
・腰→お尻と潤に下ろします
ここで重要なのが、お尻を浮かせた後に腰を浮かせるということです。もっとも細かいことを言えば、腰椎の5つある骨を下から順に1つずつ浮かせるように動かすことが重要です。そして、下ろす時は逆に、腰から着いて最後にお尻を下ろすということになります。
確認事項はペルビック・ティルトと大きく変わりません。
・足底全体(特に踵骨)で床面を押す感覚があるか
・お腹・太もも裏・お尻に収縮感があるか
・腹部前面が浮き出ていないか
・上肢〜頸部に過剰な緊張がないか
・呼吸は楽に行えているか
ヒップ・リフトの動きで使いたい筋肉は、股関節伸展筋群である大殿筋やハムストリング近位部です。ここに収縮感を感じられない方は非常に多く、特に大腿遠位前面・後面や下腿後面の筋肉が代償的に使われてしまいやすいです。筋肉名で言えば、大腿四頭筋やハムストリング遠位部、腓腹筋が該当します。
これらの筋肉が使われてしまうということは、日常的に膝関節や足関節で股関節伸展動作を代償しているということが考えられます。そして、足底全体からやや踵骨寄りで床面を押すことができていないことが考えられます。
修正するためには、まず足底のどの部分で踏んでいるか場所を確認し、その後に床面を踏む・押す方向を確認することをオススメします。
床面を踏む・押す方向というのは、『床面に対して真っ直ぐ押せているのか?』ということです。上記の代償をしてしまう方の多くは床面に対して尾側〜背尾側へ押す傾向にありますが、この力の入れ方・踏み方・押し方であると、膝関節伸展の動作が強くなり、自然と足趾への荷重が促されてしまいます。セラピストは足底に手を入れることで力の加わっている方向を確認し、それを修正し運動を学習していただく必要があります。
床面を押す場所・方向を確認してもなお大殿筋やハムストリングの収縮を感じられない場合は、ご本人に触れていただき“筋肉に力が入っている状態”を確認してもらうと、その途端に分かるようになることもあります。または、セラピストが筋肉を直接タップしてみるのも一つの手段ですが、できる限りご本人の中での感覚変化を起こしていきたいと考えているため、優先順位は低くなります。
このように、適切な動作・筋活動が両方行えていることが重要であると考えています。
シングル・レッグ・ブリッジ(Single Leg Bridge)
両脚で実施できれば、次のステップとしては片脚でのブリッジ動作『シングル・レッグ・ブリッジ(Single Leg Bridge)』にすることです。
日常生活の中で、両脚の股関節伸展動作を行う場面というのはそこまで多くありません。もちろん活動レベルにもよりますが、歩行では片脚スタンスでの股関節伸展動作が行われます。この時の、腰椎・骨盤帯の代償動作を抑制し、純粋な股関節の可動が非常に重要となるため、片脚でのブリッジ動作を行う必要があります。
今回ご紹介するのは、レッグ・ロック・ポジション(Leg Locked Position)で行うブリッジ動作です。[別名:レッグ・ロック・ブリッジ(Leg Locked Bidge)]
レッグ・ロック・ポジションというのは、片側の股関節を屈曲位にすることで、腰椎伸展・骨盤前傾が起こりにくいポジションを作り出しています。腰椎・骨盤帯での代償が生じた場合、股関節屈曲角度が減少し、脚の位置が変わりますのでご本人もセラピストも分かりやすいのがメリットです。
これは、ご本人が膝を抱えるように手で把持することでも行えますが、この方が代償動作を抑制するのは容易に可能となります。エクササイズに慣れてきたら把持するのをやめて、自力で保持する練習をしないと、日常生活の中では活用しきれない可能性も考慮した方が良いでしょう。
・仰向けで膝を立てた姿勢をとります
・片脚を曲げて保持します
・お尻→腰と順に浮かせます
・腰→お尻と潤に下ろします
使う筋肉や床面の押す部分・方向に関しては、ヒップ・リフトと同じですが、片側になると骨盤帯や膝の動きの自由度が高くなるため代償動作に気をつけなければいけません。
・片側の骨盤挙上・側方移動・回旋がないか
・膝が内方や外方へ移動しないか
・脛骨の回旋がないか
・足部外転や足趾過伸展がないか
・足底全体(特に踵骨)で床面を押す感覚があるか
・お腹・太もも裏・お尻に収縮感があるか
・上肢〜頸部に過剰な緊張がないか
・呼吸は楽に行えているか
片側股関節屈曲位であるため、そもそも股関節屈曲の可動性制限がある場合は骨盤挙上や側方移動によって代償する可能性があります。また、股関節伸展の可動性に関しても同様で、制限がある場合は水平面上の代償が生じやすいため確認は必須となります。単純な股関節屈曲・伸展のROM、変法Thomas Testによる股関節伸展制限因子の把握、屈曲時の大腿骨の尾背側方滑りの確認などは必要となってくるでしょう。
可動性の制限が生じている場合は、まずは可動性を改善する必要があります。可動性を制限している場合、該当組織からのフィードバックが適切に行われないため、いくらエクササイズをしても効果が乏しい可能性があります。つまり、セルフケアとして、可動性を改善するためのエクササイズ+片側でのブリッジエクササイズというように、2つ組み合わせる必要性を考慮した方が良いでしょう。
骨盤帯での代償が見られない場合でも、脊柱や膝での代償が生じていないか確認します。特に見落としてしまいがちなのが、脊柱のアライメントになるため、身体の中心線が保持されているかは随時確認していきましょう。
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まとめ
今回は、ブリッジエクササイズの手順・方法とプログレッションについてまとめましたがいかがでしたか?
ブリッジ・エクササイズのバリエーションはこの他にもたくさんあり、もはや無限大なのではないかと感じています。患者・クライアントさんの身体の状況は全員異なるので、それに併せてエクササイズも少し工夫する必要があるでしょう。
例えば、ヒップ・リフトであれば、膝の間でボールを挟んで股関節内転を強調してみたり、膝にゴムバンド・セラバンドを巻いて股関節外転を強調してみるのは簡単にお試しいただけるものです。抵抗のかかり方、それに伴う活動する筋肉も変わるため、目的に応じて変更するのは専門家としての役目でもあると考えております。
この他にもプログレッション方法はありますので、機会があれば今後まとめていきたいと考えております。
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