スポンサードサーチ
足関節前面インピンジメントに対する評価方法
今回の記事では、足関節背屈時に足関節前面のインピンジメント症状が生じる場合の評価方法を解説していきます。
足関節前面のインピンジメントは臨床的には多くみられます。
しかし、意外と難渋するケースもあり、どのように評価するべきかを知らない方が多いです。
本当に硬さの問題なのか?、不安定性はないのか?を鑑別する必要があります。
内反捻挫の既往が多く足関節の不安定性がある場合、代償的に周囲組織の過緊張が生じたり、あるいは骨・関節のアライメント異常をきたすことでインピンジメントが生じることがあります。
足関節の変形がなくインピンジメントが生じている場合、この段階で症状が改善することができれば、後に変形することを少しでも防ぐことができるかもしれません。
そのため、私個人的には非常に重要な局面であると考えています。可動性の評価、スペシャルテスト、不安定性、筋機能の順に解説していきます!
足関節背屈の可動域評価
症状が誘発される動作の確認、足関節背屈可動域は必ず評価しましょう。
足関節背屈制限が確認された場合、それが前方組織の問題なのか、あるいは後方組織の問題なのかを確認する必要があります。
「え…?前方組織の問題もあるの?」と思われた方も多いかもしれませんが、臨床場面では前方組織の問題であることも比較的多いです。
前方組織の問題として考えられるのは、前脛骨筋腱・長母趾伸筋腱・長趾伸筋腱・短趾伸筋腱、距骨前脂肪体、下伸筋支帯の問題などです。
- 前脛骨筋腱
- 長母趾伸筋腱
- 長趾伸筋腱
- 短趾伸筋腱
- 距骨前脂肪体
- 下伸筋支帯
筋緊張や圧痛が確認されたり、前方組織をつまみながら背屈をして症状が軽減する場合、前方組織の問題が考えられます。
後方組織としては、腓腹筋・ヒラメ筋・後脛骨筋・腓骨筋群、アキレス腱、Kager’s脂肪体の問題などが考えられます。
- 腓腹筋
- ヒラメ筋
- 後脛骨筋腱
- 長母趾屈筋腱
- 長趾屈筋腱
- 腓骨筋群
- アキレス腱
- Kager’s脂肪体
自動・他動背屈時に触診をしながら、前方組織と後方組織のどちらの緊張が先に生じるのか?を評価すると、ある程度鑑別できます。
当てずっぽうでとりあえず介入して効果判定をするのでも良いかもしれませんが、それによって無駄な時間を浪費する可能性や、何よりも患者さん・クライアントさんの身体を悪くするリスクさえあることも踏まえると、しっかりと評価をしてから介入した方が良いでしょう。
足関節背屈時の関節の動きを評価する考え方に関しては、こちらの記事をご参照ください。
これ以外に行うべき評価を知らないという方は、以下の内容は覚えておくと役に立つと思いますので、ぜひ参考にしてみてください!
スポンサードサーチ
荷重位での足関節背屈可動性の評価
非荷重位での関節可動域を評価することはしても、荷重位での評価を行わないケースが多いように思います。
歩行やランニング、階段の昇降動作では、基本的に足が地面に接している状態で下腿が前傾することで、足関節背屈の動作が行われます。
これを踏まえると、荷重位、つまり足が地面に接した状態での足関節背屈動作を評価することは非常に大切なことです。
評価テストとしては、Knee to Wall あるいは、Weight Bearing Lunge Testと言われるものとなります。
- 壁から拳1個分離した場所に足を置き、片膝立ちの姿勢をとります
- 体重を前足にかけていきます
- 膝が壁に触れることができなければ陽性です
- この時、足部回内・外転の代償をしないように注意しましょう
動作を行なってもらう時に、『足部が外転していたり、過回内させることで背屈可動性を代償していないか?』に注意しましょう。
壁に膝が触れる事が可能であるが、代償動作がありそれを口頭指示で改善されない場合も陽性となります。
スペシャルテスト
Forced Dorsiflexion Testは、足関節背屈時の、足関節前面に感じるつまり感・引っかかり感、痛みなどを評価するときに用いるテストになります。
Sensitivity | Specificity | LR+ | LR- | |
---|---|---|---|---|
Forced Dorsiflexion Test | 95 | 88 | 8.06 | 0.06 |
このテストは、陽性尤度比が8.06、陰性尤度比が0.06と高い値を示しております。
テストにより痛みが出現したら足関節前面のインピンジメントがあり、痛みがなければインピンジメントではないと言い切っても良いくらいのテストになります。
痛みを再現するテストになりますので、相手の不快感は強くなる点においては注意しながら行いましょう。
Forced Dorsiflexion Test
Forced Dorsiflexion Testの実施手順になります。
事前に背屈の関節可動域を評価しておき、可動範囲を想定しながら行うことをオススメします。
- 足根洞を押さえて、強制的に足関節背屈を加えます
- 背屈させるときの速度は速めにしましょう
- 疼痛が出現したら陽性となります
このテストの手順①、足根洞を押さえる時点で痛みが出てしまうかもしれません。
足根洞は短趾伸筋腱が停止する部分になりますので、この場合は短趾伸筋に問題があると考えられます。
スポンサードサーチ
距骨の不安定性の評価
Forced Dorsiflexion Testで疼痛が誘発されない場合、非荷重位での足関節背屈では症状が誘発されず、荷重位での足関節背屈で症状が誘発されるかもしれません。
ここで問題となるのは、足関節の不安定性、特に距骨の不安定性が考えられます。
まず、内反ストレステスト(Medial Talar Tilt Stress Test)を行い、可動範囲・不安定性を確認します。
次に、内反ストレステストを、距骨をつまみながら行いましょう。
動かしている序盤〜中盤で、距骨が内反することが確認できるかもしれません。
この場合、不安定性(インスタビリティー:Instability)が生じていると考えて良いでしょう。
- 内反ストレステストを距骨をつまみながら行います
- 序盤〜中盤で距骨が内反する場合は陽性です
- 左右差を比較しましょう
症状が片側の場合は、左右差を確認することで、より顕著に確認できるでしょう。
遠位脛腓靭帯結合の不安定性の評価
遠位脛腓靭帯結合は強固な靭帯結合であり、一度弛緩してしまうと安定させることが困難な部分です。
多数あるいは重度の捻挫既往歴がある場合、遠位脛腓靭帯結合に問題が生じてしまっている可能性があります。
これを確認するためには、内果に対して外果を後方へ押し込んだときの”動きの量”を評価しましょう。
明らかに動きの量が多い場合、不安定性があると考えて良いかもしれません。
- 股関節を約20度内旋させます
- 内果を固定し、外果を背側へ垂直に押し込みます
- 動きの量が多い場合は陽性です
症状が片側の場合は、左右差を確認することで、より顕著に確認できるでしょう。
股関節を20度内旋させることで、内果と外果の関節面の傾斜を垂直にすることができます。こうすることで、斜めではなく垂直に外果を押し込むことができます。
スポンサードサーチ
足関節底屈筋の遠心性コントロール機能不全
上記の評価をしたけれど、どれも断定しにくいレベルの結果で要因がはっきりしない場合は、『足関節底屈筋の遠心性コントロール機能不全』の可能性があります。
”歩行時のターミナルスタンス”・”段差降段時の後ろ脚”・”切り返し動作”において瞬間的なアライメントを切り取ると、足関節背屈位で地面に向かって荷重が加わっています。
この時、からだの反応としては足関節底屈モーメントを発揮させることで、釣り合いを取っています。これがない場合、”ストン”と地面に膝が着いてしまいますので、必ず働いている”力”です。これが適切なタイミングで、適切な出力をしていない場合、最大荷重時のみで足関節前面にインピンジメント症状をきたす可能性があります。
つまり、『足関節背屈が過剰である』という事が考えられます。
日々繰り返しこのような動作が行われていれば、いずれは不安定性の評価で陽性となる可能性が高いですが、発症してから日数が浅い場合はこのようなことも考えられます。
これを評価する方法は、2つあります。
- 台の上で片脚で爪先立ちをしてもらい、ゆっくりと力をコントロールしながら足関節背屈位まで下降させる
- 爪先立ちのまま歩行する
2番目の方は簡便に行えますが、患者さん・クライアントさん自身では状況を把握しにくい特徴があります。
反対に1番目の方は、ご自身の状況・力の入り具合を確認しやすく、そのままエクササイズとしても使用できるためオススメです。
まとめ
簡単にまとめようと考えていたのですが、意外と長くなってしまいました。
不安定性の評価以降は個人的な考えになりますが、意外と見逃しがちな部分であり、臨床場面ではこのような場合が比較的多いかもしれません。
モビライゼーションやエクササイズをしてもらっているのにも関わらず、インピンジメント症状が改善されない場合は非常に参考になる内容だと自負しておりますので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
また、足関節底屈筋の機能不全があるということは、それよりも上位の問題(膝関節・股関節・骨盤帯)の問題も考慮した方が良いかもしれません。
動作として見た時に、足関節だけで動いているわけではありませんので、全身的な問題を考慮した方が良い結果が得られると感じます。
スポンサードサーチ
コメント