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病歴・既往歴は最大のヒントになる
病歴は、潜在的な病理学的問題を発見するのに役立ちます。
これまで経験した痛みの種類と症状の発症を正確に説明してもらうことは、機械的な筋骨格系機能障害と病理学的問題を鑑別するために必要です。
内臓からの関連痛は、局在性ではなくびまん性で、鈍い痛みであり、症状の特徴が曖昧であると説明されています。この痛みは一定のことが多い傾向にありますが、リズミカルにピークを迎え、その後軽減することもあります。内臓の平滑筋壁の痙攣に起因する痙攣性疼痛は、平滑筋壁がリズミカルに収縮したり弛緩したりすることで、痙攣感覚の強さが変化します。
胃腸炎・便秘・月経・胆嚢疾患・尿管閉塞はすべて、このタイプの痙攣性疼痛を引き起こす原因となっており、腹部症状を経験することもあれば背部にも及ぶこともあります。”下肢の痙攣性疼痛”・”足の鈍重感”・”脱力感”・”活動に伴うピンや針で刺されるような感覚”を訴え、安静にすると速やかに緩和される場合は、末梢血管障害を示唆していることがあります。
症状の種類に関する情報は、患者の痛みの原因が内臓系なのか筋骨格系のものなのかを判断する上で、鑑別に役立たない可能性が高いですが、症状の発症に関する情報は鑑別に役立つことがあります。
機械的な筋骨格系機能不全による症状の悪化や軽減は、体幹や四肢の位置変化や特定の動作に関連している可能性があります。そのため、身体の姿勢や動きに関係なく症状が一定の場合、または安静時に症状が現れる場合、セラピストは症状の原因として病理学的問題を疑うべきでしょう。
この点は、患者が最も激しい痛みを夜間に訴えている場合には特に重要です。夜間の痛みが主訴である場合、他にも病理学的問題の兆候に関する情報に注意する必要があります。
内臓からの症状の発症は、内臓の機能に応じて変化します。
例えば、症状の変動は、食習慣または腸・膀胱の機能に関連しているかもしれません。食品全般あるいは特定の食品を摂取することで症状の発現が促進されたり、逆に患者の症状が軽減されたりすることもあります。例えば、十二指腸潰瘍による疼痛は、食後2時間前後で始まり、食物やアルカリを摂取することで緩和される場合があります。他の障害では、膀胱の膨満感や便秘に伴って症状が悪化したり、実際の排尿や排便に関連していたり、逆に排尿や排便後に痛みが軽減することもあります。
- びまん性の鈍痛
- 症状の特徴は曖昧
- 内臓が機能する特定場面での発症
- 身体の姿勢や動きに関係なく症状が変化しない
- 安静時に症状がみられる
症状の発症が潜行性である場合、または原因不明の症状が治療の過程で潜行的に発症する場合、セラピストは病理学的問題に注意する必要があります。患者・クライアントが多関節における潜行性の症状を発症している場合、セラピストは純粋な機械的な筋骨格系機能不全を示す多部位とは対照的に、炎症性疾患(関節リウマチ・全身性エリテマトーデスなど)の存在に注意する必要があります。
問診
一般的な健康に関する問診は、病理学的問題に関する重要な情報かもしれません。
”発熱”・”悪寒”・”吐き気”などの症状が1-2週間以上続く場合は、潜在的な感染症または新生物の可能性を示唆しています。”原因不明の体重減少”・”食欲不振”・”倦怠感”・”排便習慣の変化”・”直腸または膣からの出血”も、腫瘍性障害の初期兆候になります。特に、今後脊椎に転移するかもしれない臓器において癌の既往歴があり、患者が疾患の存在を除外するために医師の診察を受けていない場合、セラピストは直ちに適切な医師へ紹介を行う必要があります。
患者が現在治療を受けている、または治療を受けたことに関する問診をすることが重要です。
癌や特定の心血管疾患を含むさまざまな病気には、再発する可能性があります。患者が服用している薬とそれに対応する副作用を調べることで、倦怠感・めまい・立ちくらみ・便秘などの特定の症状について説明できる場合があります。
家族歴についても問診することは重要です。特定の疾患には、癌・特定の心血管疾患・糖尿病・腎臓病などの家族性の傾向があります。
病歴・既往歴における問診時のポイントを各器官ごとにまとめていますので、ぜひ以下の表をご参照ください!
これらの問診が適切な臨床情報を明らかにしない場合でも、病態の進行に影響を与える可能性のある病気の発症を除外するために、数週間ごとに問診を繰り返す必要があります。年齢や性差、職業などの一般的な情報も加味して考慮することも必要となります。
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身体検査
身体検査の所見は、セラピストが病理学的問題を疑うことにもつながります。
最も重要な要因は、症状の誘発に関連しています。
前回の記事でもご紹介しましたが、機械的な筋骨格系機能不全による症状の変化は、患者の姿勢や動作の変化に関連しています。
したがって、触診、Active ROMやPassive ROM、MMT、スペシャルテストによって症状の再現・増加・減少ができない場合、治療者は病理学的問題を疑うべきだと考えられます。
しかし、身体検査における症状の変化は、病理学的問題の可能性を絶対的に除外できるというわけではありません。
例えば、腰椎椎間板の感染症では、姿勢や動作の変化によって痛みの強さが変化する重度の腰痛が生じることがあります。また、転移性病変(新生物)による二次的な脊椎椎体骨折でも、同様の所見が得られることがあります。このような場合には、安静時には症状の軽減がみられないため、病歴・問診と身体所見の両方から他の評価を考察することで、セラピストは適切な判断・臨床的診断を下すことができるでしょう。
触診
骨や軟部組織の触診からも、患者・クライアントの状態に関する重要な臨床情報を得られることがあります。リンパ節が触知可能であれば、感染症や新生物の可能性を示唆しています。
リンパ節を触診すべき部位としては、大腿三角部(特に鼠径靭帯周辺)・腋窩・鎖骨上・頸部前後部になります。
触診でも血管障害が認められることがあります。下肢では大腿動脈・膝窩動脈・足背動脈・後脛骨動脈、上肢では上腕動脈・橈骨動脈を評価しましょう。
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まとめ
筋骨格系以外の様々な構造に対するスクリーニング評価を、日々の臨床において行なっていく必要性があると感じますね!
血管・リンパ節の触診、腹部の視診・触診は、日常的に臨床へ取り入れることであらゆるリスクを考慮することができるのではないでしょうか。
病理学的問題を除外するための身体検査の中で重要な要素は、『ROM(Active・Passive)』・『MMT』・『スペシャルテスト』・『圧痛所見・触診』を慎重かつ正確に実施することだと考えます。
今回の記事でも長々とご紹介しましたが、何よりもまず先に”問診”を丁寧に行うことが重要だと感じます。ここが抜けてしまうと、症状の原因と評価結果の相関が弱くなりやすいです。介入もうまく行かず、患者・クライアントへの説明も不足してしまうために、良い結果は得られないでしょう。
さらに、介入が開始されてもなお症状の改善を伴わない場合、あるいは明らかな筋骨格系機能不全が期待通りに介入に反応しない場合には、病理学的問題を考慮した方が良いかもしれません。患者の症状の機械的または病理学的問題について疑念がある場合には、医師との連携を怠らないようにしていきましょう!
こちらの記事では、内臓からの関連痛のメカニズムと領域を解説していますので、併せてご参照ください。
こちらの記事では、骨盤内疾患に関する関連痛と症状をまとめています!
こちらの記事では、後腹膜領域(腎臓・前立腺)と消化器系疾患の関連痛と症状をまとめています!
コメント
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