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Scapula Dyskinesia – 肩甲骨 –
『肩甲骨の運動異常=Scapula Dyskinesia(スキャプラ ジスキネジア)』とはなにか?を論文を元に3部構成でご紹介していきます。
今回が第1弾となりますが、特に肩甲骨の解剖学と運動学、特に肩甲上腕リズムに着目していきます。
一般的に、「肩甲骨の動きが悪い」「肩甲骨が硬い」と言われる、思い込んでいるという方は多いかと思いますが、本当にそうなのでしょうか?
「肩甲骨はがし」という言葉も世の中で広まってしまっていますが、本当にそのような言葉を使ってしまって良いのでしょうか?
今一度、肩甲骨について考える良い機会になればと思っています!
下記に参考文献を掲載しているので、ぜひご興味ある方はぜひご覧ください。
Scapula Dyskinesisについての理解を深め、より分かりやすくまとめているアップデート記事を掲載しております。こちらにも目を通していただけますと幸いです。
肩関節・肩甲帯
肩甲上腕関節は、軸骨格(体幹)と上肢の間の入り口になります。
関節窩と上腕骨頭は、関節の多平面運動を可能にするために、複雑な相乗的な方法で動作をしています。
関節安定性と動作の自由度の間のバランスは、静的要因(骨形態・靭帯)と動的要因(筋)によって調節されています。
肩甲上腕関節は、身体の他のボール&ソケットの関節(股関節)と比較してもより不安定でありますが、前述の要因により複数の運動面で相対的な安定性が得られます。
病気では、患者の多くは機能損失と痛みを訴え、回旋筋腱板・肩関節包・インピンジメントが最も一般的な原因となります。
対照的に肩甲骨の障害は、評価に関する認識と専門知識不足のためにしばしば無視される傾向にあります。
このレビューでは、Scapula dyskinesia=肩甲骨運動異常 “肩甲骨の異常な解剖学的構造および動態” が強調され、
- 肩甲骨機能の生体力学的原則の理解を改善し
- 異なる疾患過程における病態生理学に関する研究をし
- 病気の管理に利用可能なリハビリテーション制度の輪郭を描く
以上のことを目的としています。
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肩甲骨の解剖学
肩甲骨は、Th2-Th7レベル間の胸郭後面にある複雑な三角形の骨です。
- 肩甲下筋と前鋸筋の付着部として機能する凹面がある
- 烏口突起は上前外側面から生じる
- この部位には小胸筋・上腕二頭筋短頭・烏口腕筋が付着する
- 肩甲上腕関節の肩甲骨部分の関節窩が含まれる
- 上腕二頭筋長頭と上腕三頭筋長頭が付着する、関節上結節・関節下結節がある
- 肩甲棘・肩峰・棘上窩・棘下窩が含まれる
- 肩甲棘と肩峰には僧帽筋や三角筋が付着し、棘上窩と棘下窩にはそれぞれ棘上筋・棘下筋が付着する
- 下外側後面には小円筋・大円筋・広背筋が付着する
- 肩甲挙筋・菱形筋群が付着する
肩甲骨の関与する関節
様々な筋の付着に加えて、2つの関節を構成します。
1つ目の関節は肩鎖関節であり、烏口突起に付着する菱形靭帯と円錐靭帯・肩鎖靭帯を組み込んだ肩鎖関節包によって支持されます。
- 胸郭から上腕骨が離れても上肢を支え続ける
- cervicoaxillary canalを保護する
- 体幹部から上肢へ力の伝達を行う
※cervicoaxillary canal
⇒肩甲骨(後)・鎖骨(前)・第一肋骨(中央)に囲まれた神経管が通過する領域
2つ目の関節は肩甲上腕関節であり、前方の安定性はSGHL・MGHL・IGHL・CHLの4つの靭帯、後方の安定性は後方関節包によって支持されます。
2つの関節に加えて、考慮すべき肩甲骨と胸郭の間の関節があります。
この肩甲胸郭関節では骨の関節は発生しませんが、3次元平面での広大な”gliding”運動を可能にしています。
肩甲骨と周囲筋の役割は、関節窩の位置を動的に制御して、肩甲上腕関節運動での最適な生体力学的運動を可能にすることです。
Scapula Dyskinesia – 肩甲骨の運動学 –
肩甲骨の機能
肩甲骨は4つの生体力学的役割を果たします。
- 上腕骨の回転中心である
- 上腕骨の胸壁へのアンカーである
- 肩関節屈曲・外転の両方において、肩峰が上腕骨の動きを妨げ続けるためインピンジメントは生じない構造である
- 体幹から上肢へ力が伝達される手段である
上肢の運動連鎖の肩甲骨の不可欠な部分を考えると、肩甲骨の位置・関節窩の位置は, 肩の動きの各平面内の自由度を決定します。
これを可能にするためには、肩甲骨が次のように移動できることが大切です。
- 挙上 / 下制
- 前突 / 後退
- 内旋 / 外旋
- 上方回旋 / 下方回旋
- 前傾 / 後傾
肩甲上腕リズム
肩関節屈曲・外転の動きが起こるためには、肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節が調和して動くことが重要になります。
Inmanらによって、上腕骨の最初の屈曲30度と外転60度について、肩甲骨はこれらの動きの力を最適化するために安定した位置を見つけようとすることが述べられました。
場合によっては、動きの主な領域である肩甲上腕関節で肩甲骨が固定されたままになるか、肩甲骨が肩甲上腕関節を支持するために内外側へ移動します。
この研究は、動作の初期段階において、『肩甲骨の運動は人特有であり、ばらつきが見られる』と結論付けました。
動作初期の肩甲骨の最適な位置は、setting phaseと呼ばれています。
いったん肩屈曲・外転の動きがこれらのレベルを越えると、肩甲骨の運動ははるか均一になり、肩甲上腕と肩甲胸郭の間の動作の比率は2:1、例えば上腕骨15度の拡張では肩甲上腕で10度・肩甲胸郭で5度生じます。
最近の研究では、肩甲骨の運動の変動が少ないパターンが示唆されており(比率が1.6:1といった見解もある)、主要な構成要素は上方回旋であり、その後に後傾・外旋が続きます。
研究では、僧帽筋上部と下部の筋活動は前鋸筋とともに肩甲骨運動に大きな影響を与え、運動異常を引き起こす筋であることが強調されています。
肩甲骨の生体力学を解剖学との関連で考慮すると、そこに含まれる運動面・関与する筋が異常な運動機能につながる可能性のある膨大な組み合わせであることが明らかです。
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まとめ
今回は、肩甲骨の解剖学と運動学に関する内容でした。
肩甲骨・鎖骨の役割が明確化されており、非常にわかりやすい内容であったと思います。
肩甲上腕リズムは、ヒトそれぞれで動き方が違い、一定したリズムで動かない可能性もあるということは興味深い内容だったと思います。
Scapula Dyskinesisについての理解を深め、より分かりやすくまとめているアップデート記事を掲載しております。こちらにも目を通していただけますと幸いです。
【胸郭と肩甲帯の運動連鎖:胸郭のアライメントに対する肩甲骨の連動と代償】という記事も掲載しておりますので、こちらも併せて目を通していただけると理解を深めらると思います。
コメント
[…] こちらの記事でそれぞれ、”①肩甲骨の解剖学と運動学・機能”の内容と、”②肩関節・頸部・姿勢と肩甲骨の関連”をご紹介していますので併せてご参照ください! […]
[…] こちらの記事でそれぞれ、”①肩甲骨の解剖学と運動学・機能”・”②肩関節・頸部・姿勢と肩甲骨の関連”・”③Scapula Dyskinesiaの評価方法”をご紹介していますので併せてご参照くだ […]