胸腰筋膜の後葉(PLF)の機能解剖
表層膜と深層膜:広背筋・下後鋸筋との関係

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胸腰筋膜後葉の機能解剖第3弾のタイトル 解剖学&運動学

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胸腰筋膜の後層

第3弾の今回は、胸腰筋膜の後葉(Posterior Layer of ThoracoLumbar Fascia:PLF)の機能解剖をご紹介していきます。

胸腰筋膜は前・中・後の3つの層に区分されています。

胸腰筋膜の3層
後葉は2つの膜層で構成されており、表層膜 (広背筋腱膜)と深層膜が存在します。

中葉は、傍脊椎筋と腰方形筋の間を通過するfascial bandとなります。

前葉は、腰方形筋の前方を通過し、後方では腰方形筋と腸腰筋の間を通過します。

今回は、後葉の表層膜と深層膜の解剖をご紹介していきます。

PLFの表層

PLFの表層膜は、コラーゲン線維の組織に基づいて3つの副層に分かれます。

表層
表層の副層は、平均厚さは75μm、波状コラーゲン線維が平行で、弾性線維がほとんどありません。

この層は、広背筋の薄い上皮層に由来します。

中間層
中間の副層、平均厚さ152μm、広背筋腱膜に由来しています。

弾性線維はなく、同じ方向に配置されたまっすぐなコラーゲン束で構成されます。

深層
深層の副層は、PLFの深層からPLFの表層を分離する疎性結合組織で、平均厚さ450μm、PLFの表層と深層の間にあるSPI腱膜で構成されます。

この深層の副層により、PLFの表層と深層の間を滑ることができます。

広背筋

広背筋は広範囲で扇型の筋であり、その腱膜はPLF表層膜に寄与します。

広背筋腱膜は、その遠位の付着部に基づき4つの領域に分割されます。

広背筋腱膜
①上縁(胸部付着部)線維
下位6つの胸椎棘突起と棘上靭帯に関与する

②Trasitional線維
第1・2腰椎棘突起と棘上靭帯に達する

③Raphe線維
外側縫線に付着し第3-5腰椎棘突起と棘間靭帯に達する腱膜線維

④Iliac線維
腸骨稜に達する
下縁(肋骨線維)が下部1〜3肋骨に付着する

広背筋の線維の角度は、水平から約20-40°の傾斜で頭外側から尾内側へ変化していきます。
上方ではより浅い角度から、下方ではより緩やかな角度まで進行していきます。

これらのコラーゲン線維角度は、胸腰筋膜(ThoracoLumbar Fascia:TLF)に付着する筋線維を説明する角度と混同するべきではありません。
この腱膜の厚さは、腰椎領域において約0.52-0.55mmありますが、胸郭領域ではかなり薄くなる特徴があります。

下後鋸筋

下後鋸筋(Serratus Posterior Inferiot:SPI)は通常、第9-12肋骨の下外側縁に付着された4つの薄い長方形の筋シートで構成されます。

医学的にこの筋は、広背筋腱膜の深層に達する薄い腱膜に変わり、下位2つの胸椎・上位2-3腰椎棘突起と関連する棘間靭帯に達します。

Bogduk & Macintosh(1984) はSPIが広背筋腱膜に付着するのを発見し、Vleemingら(1995)は深層にのみいくつか付着することを発見しました。

表層膜の解剖における研究

表層膜の上縁と下縁の既存の説明は、大きなばらつきがあります。

Wood Jones (1946) 表層または深層を区別しなかったが、後葉が上方へ伸びて頭板状筋を覆うことを説明した
Bogduk & Macintosh (1984) 後葉の表層膜が僧帽筋と菱形筋の下を通過することを発見した。
下方ではPSISに付着し、下後鋸筋の下にある腱膜と大殿筋の起始が融合する。
Barker & Briggs (1999) 後葉が頭板状筋に達する間に、僧帽筋と菱形筋に融合する上層の拡張を述べた。
Barker TLF後葉の表層膜(広背筋腱膜)は、菱形筋を覆うものと連続することにも注目した。

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表層膜の神経支配

広背筋・下後鋸筋の両方は、腹側枝からの枝によって支配されます。

広背筋は腕神経叢から生じる胸背神経(C6・7・8)によって支配されます。
下後鋸筋は、胸腹肋間神経(Th9-12)の枝から神経支配されています。

神経支配パターンに基づき、下後鋸筋は胸腹部筋に最も密接に関連しています。

菱形筋と僧帽筋を含む表層膜の上方への拡張は、広背筋と同様の起始を共有するため、発達の観点から一貫しています。
表層膜は、”四肢と胴体の間の接合部を繋ぐいくつかの筋を含む連続する筋膜シートの一部”としてみることができます。

PLFの深層

広背筋を取り除くと下後鋸筋(SPI)とその薄い腱膜が露出し、この腱膜構造はPRSに密接に付着しており、この2つは切開にて分離できない構造となっています。

多くの研究では深層筋膜構造を調査し、”PLFの深層膜”という用語をつけました。

Bogdukは、線維密度に基づいて深層膜を説明しています。
線維は水平から20-30°の角度で走行しており、下位腰椎レベルでよくみられ、上位腰椎レベルではわずかになる。

SPI腱膜は、広背筋と深層膜後面の両方と融合し、背中の正中線に向かって突出しています。
深層膜の融合は、深層膜外側から内側への広がりの約半分の距離で発生しています。

SPI腱膜と融合する外側は、深層が傍脊椎筋の外側縁の周りを曲がってPRSを形成しています。

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PLFの深層の接続

PLFの深層における、下縁・上縁・外側縁の部分の解剖になります。

それぞれの部位で、筋・筋膜に達することが考えられています。

下縁

胸腰筋膜下縁は、仙結節靭帯と混ざります。

特にL5-S1レベルにおいては、胸腰筋膜の表層膜が傍脊椎筋の下にある腱膜と切り離せないくらいに合わさり、尾側に続いて殿部筋膜と融合します。
この2つの厚い膜が融合すると、深層膜が非常に強く融合することになります。

また、殿部筋膜との関係は複雑な構造を示しています。

殿部筋膜との関係

  • 外側
    深層膜は腸骨稜上で中殿筋筋膜と融合する
  • 内側
    PSISレベルでは深層膜と表層膜が融合する

上縁

Wood Jones (1946)は、PLF(広背筋・下後鋸筋の付着する深層)が非常に薄くなり、上後鋸筋の下を上方へ向かって通過し、頸部における頭板状筋を覆うfasciaと融合することを説明した。

深層膜が仙骨から頭蓋方向に向かって頭板状筋まで延びており、頸部筋膜の結節線で頭蓋底に融合することが言われています。

外側縁

Spalteholz (1923)は、TLFが傍脊椎筋を腰方形筋から分離する中間層の形成に関与するため、傍脊椎筋の外側縁の周りで連続的に彎曲するよう外側縁を明確に示すと説明した。

Schaeffer (1953)は、TLFが仙棘筋から腰方形筋を分離する筋間中隔である腹側層または深層を形成すると説明した。

傍脊椎の支帯膜状構造(Paraspinal Retinacular Sheath:PRS)は、腰部傍脊椎筋のための区画を作る深層によって形成されます。

つまり、TrA腱膜が結合して外側縫線を形成するのは、この区画の外側縁に沿っています。
TrA腱膜が深層に結合し胸腰筋膜の中葉(Middle Layer of ThoracoLumbar Fascia:MLF)を形成した後で深層に達し、深層後面と混ざることで後部で腱膜の間に延びていきます。

参考文献

The thoracolumbar fascia:anatomy, function, and clinical considerations:F.H. Willard, A. Vleeming, M.D. Schuenke, L. Danneels, R. Schleip: Journal of Anatomy, 2012

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