肩甲上神経絞扼障害の原因と症状

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肩甲上神経

今回の記事では、肩甲上神経絞扼障害の原因と症状をご紹介します。

まずは、肩甲上神経の機能解剖を最低限知る必要があります!

肩甲上神経の運動枝は棘上筋と棘下筋を支配し、感覚枝は腱板筋、肩甲上腕関節周辺の靭帯、肩鎖関節に与えられています。

肩甲上神経

運動神経
棘上筋・棘下筋を支配する

感覚神経
腱板筋群・肩甲上腕関節靭帯・肩鎖関節を支配する

肩甲上神経の絞扼や損傷は、スポーツを行う人に多くみられ、肩関節複合体への繰り返されるストレスが原因となります。

肩甲上神経絞扼の原因

肩甲上神経絞扼障害は、肩甲切痕とその上を覆う上肩甲横靭帯の間を通過する肩甲上神経が、肩甲切痕や上肩甲横靭帯の解剖学的破格により絞扼されて生じる病態です。

肩甲切痕の破格がある場合、特に狭い形状の場合であると、肩甲上神経絞扼障害の発生率を高くする可能性があります。通常の解剖学書籍ではU字型で書かれていることが多いですが、特にV字型や骨孔の肩甲切痕の場合は神経を絞扼する可能性が高くなります。

また、野球やバレーボール、テニス、水泳など、上肢挙上動作を頻回に繰り返すスポーツ選手において生じる可能性が高いです。
その理由としては、解剖学的破格に加え、上肢を動かす際に肩甲上神経は最小限の滑走運動のみを行い、上肢の運動によって肩甲切痕の狭く鋭い部分に押し付けられることが想定されます。繰り返される運動によっては神経を刺激し、肩甲骨上神経絞扼を引き起こすわずかなストレスを加えることで生じることが考えられます。

こちらの記事では肩甲切痕の破格を詳しく紹介していますので、ご興味のある方はぜひご参照ください!

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上肩甲横靭帯

肩甲切痕の上を上肩甲横靭帯(Superior Transverse Scapular Ligament:STSL)が覆っており、この空間を肩甲上神経が走行しています。

肩甲上神経絞扼障害の危険因子の1つとして、完全骨化した上肩甲横靭帯があります。

肩甲切痕の破格の記事でも紹介しましたが、上肩甲横靭帯が完全骨化して肩甲骨に骨孔が形成され、その間を肩甲上神経が走行する破格(約10%)が存在します。この場合、症状がない方でも肩甲上神経の絞扼が生じている可能性が高いです。そのため、どこかのタイミングで症状が生じるかもしれませんし、症状が生じないままかもしれません。

肩甲上神経絞扼障害の症状

肩甲上神経絞扼障害の主な症状をまとめます。

症状

  • 肩後面・側面の鈍痛
  • 上腕・前腕への放散痛
  • 頸部への放散痛
  • 肩関節外転・外旋動作の機能不全
  • 棘上筋・棘下筋の萎縮

これらの症状が生じる可能性があります。

肩甲切痕・上肩甲骨横靭帯での肩甲上神経絞扼を疑う指標としては、棘上筋・棘下筋の萎縮が主だと考えています。
特に、既往歴・運動歴に問題がなかった場合や、カフエクササイズを実行しているのにも関わらず変化がみられない場合が該当するでしょう。

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まとめ

肩甲上神経絞扼の原因をまとめます。

原因まとめ

  1. 肩甲切痕の破格
  2. 上肩甲横靭帯の骨化
  3. 頻回に繰り返される上肢挙上動作

①と②は解剖学的問題なので、どうにも対処することができません。

介入できるポイントとしては、上肢挙上動作の機能改善になるでしょう。

肩甲骨を含む胸郭の動きを適切に行えるよう、可動性の問題があれば介入し、ご自身でコントロールしながら身体を動かせるようエクササイズを行なっていくことが必要になります。

これにはパッケージ化されてプロトコルがないため、その人それぞれに合わせて対応していくことが良いでしょう。

肩甲切痕の破格に関しては、こちらの記事をご参照ください。

参考文献

  1. Variation in morphology of suprascapular notch as a factor of suprascapular nerve entrapment:Michał Polguj, Marcin Sibiński, Andrzej Grzegorzewski, Piotr Grzelak, Agata Majos, Mirosław Topol, Int Orthop. 2013
  2. MORPHOLOGICAL VARIATIONS OF THE SUPRASCAPULAR NOTCH:CLINICAL RELEVANCE IN SUPRASCAPULAR NEUROPATHY VIS-A-VISOSSIFIED SUPERIOR TRANSVERSE SCAPULAR LIGAMENT:Roopali D Nikumbh, Dhiraj B Nikumbh, Anjali N Wanjari., International Journal of Anatomy and Research,Int J Anat Res 2017
  3. Ossification of the suprascapular ligament: A risk factor for suprascapular nerve compression?:R. Shane Tubbs, Carl Nechtman, Anthony V. D’Antoni,International Journal of Shoulder Surgery – Jan-Mar 2013
  4. Variations in suprascapular notch morphology and its clinical importance:Krishna Gopal, Alok Kumar Choudhary, Jolly Agarwal, Virendra Kumar, International Journal of Research in Medical Science, 2015
  5. SUPRASCAPULAR NOTCH VARIATIONS AND ITS CLINICAL SIGNIFICANCE:Aradhyula Himabindu, B. NarasingaRao, Nihar Sannala,Int J Cur Res Rev, Nov 2013

コメント

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