マスクを着用しながらの運動は身体に悪影響を及ぼすのか?

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マスクは着用した方が良い

11月中旬以降、新型コロナウイルスによる感染は再び拡大しており、GoToキャンペーンの一部地域の除外・飲食店では時短営業が再度開始される状況の中、マスクの着用は必須の風潮で、着用していない方が不自然な世の中となっています。

新型コロナウイルス感染症は、飛沫を介して広がることが知られているため、マスクを着用することでウイルスの飛散を防ぐことができます。そのため、日常の生活において着用することは必要です。

しかし、少し急ぎの用事があったり、電車の時間に間に合わないから走らないといけない場面では、マスクをしていることで息切れや呼吸苦を感じることもあるのではないでしょうか?
筋トレや有酸素運動などをするときはなおさら、呼吸が行いにくく息苦しさを感じることと思います。

そこで今回の記事では、マスクを着用した状態での運動は身体に良いのか、あるいは悪いのかを検討していきます。

運動中の生理学的変化

運動中のマスク着用により、酸素は不足し、二酸化炭素の割合が増加します。

そのため、低酸素環境となり、高炭酸ガス血症が誘発される可能性が高くなります。

低酸素の環境では多くの生理学的変化を引き起こします。

生理学的変化

  1. 筋代謝の変化
  2. 心肺系ストレス
  3. 脳と神経系
  4. 排泄システムの変化
  5. 免疫メカニズム

今回の記事では、主に①〜③の内容に関してご紹介していきます。

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筋代謝の変化

マスクの着用により完全に密閉されているわけではありませんが、吸気・呼気の閉鎖的な循環となってしまいます。呼気を再呼吸することで、動脈の二酸化炭素濃度が上昇するため、全ての臓器では低酸素環境になります。運動強度が高いほどこの状態になりやすいとされています。

したがって、マスクを使用して運動する方は、不快感・倦怠感・めまい・頭痛・息切れ・筋力低下・眠気など、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者が運動しているのと同様の生理的影響を受けることになります。

症状まとめ

  • 不快感
  • 倦怠感
  • めまい
  • 頭痛
  • 息切れ
  • 筋力低下
  • 眠気

さらに、歩行など2METs程度の軽い運動は、マスクを介した呼吸をするので、酸素の量を減らして二酸化炭素吸入量を増やし、呼吸の仕事量を増やす可能性があります。そのため、より高い負荷で有酸素運動または抵抗運動を行うと、この効果が大きくなると考えられます。

約10分以上の運動における吸気および呼気に対するマスクの抵抗は、呼吸性アルカローシス、乳酸値の上昇、早期疲労感・倦怠感を引き起こす可能性があります。このような症状は、筋肉の損傷、筋線維のタイプ変化や速筋繊維のサイズの変化などの生理学的変化をもたらすだけでなく、心理的にも悪影響を及ぼします。

心肺系ストレス

酸素と二酸化炭素の呼吸循環機能が低下すると、低負荷時でも心拍数と血圧が上昇します。

そのため、呼吸筋へ加わる負荷と肺動脈圧が増加し、心臓への負荷が増加します。

まとめ

呼吸循環機能の低下

心拍数・血圧の上昇

呼吸筋への過負荷
+
肺動脈圧の増加

心臓への負荷が増加

運動によるこれらの変化は健康な方ではわずかに生じるものですが、呼吸循環器系の慢性疾患を有する方では病態生理を悪化させてしまいます。容態が悪化してしまい、入院や服薬の増加につながる可能性がありますので注意が必要です。

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脳と神経系

高炭酸ガス血症は頭蓋内圧を上昇させ、脳灌流を低下・脳虚血を引き起こします。他方では、神経保護作用により興奮性アミノ酸を減少させ、脳代謝を最小限に抑えることがわかっています。

高炭酸ガス血症の低酸素血症の状態では、姿勢の安定性・固有受容感覚・歩行速度の変化・転倒に関して悪影響を与える可能性が高いです。

まとめ

  • 姿勢の安定性↓
  • 固有受容感覚↓
  • 歩行速度↓
  • 転倒の危険性↑

これは、高齢者だけではなく、呼吸器疾患を有する方がマスクを使用して運動していることも当てはまるので注意が必要です。

まとめ

マスクを着用しての運動は、基礎となる慢性疾患の病態生理学的リスク、特に呼吸循環器系のリスクを高める可能性があります。

フィットネスクラブ・ジムでエクササイズをする方は、マスクを着用しているときには低〜中程度の強度の運動をすることをお勧めします。

中等度の適度な運動は、免疫機能を高めて感染を防ぐことにつながる可能性がありますが、高強度の運動では免疫機能に悪影響を及ぼし逆効果になる可能性があります。

私個人の一意見としては、”多少息が上がる・汗ばむくらいの運動・トレーニング・エクササイズは中等度の運動”とし、”しばらく時間を空けないと呼吸が整わない程度の運動を高強度”とするのが良いのではないかと思います。個人それぞれの運動歴・既往歴・基礎疾患を考慮して、臨機応変に運動強度の基準を変えていく必要があります。

身体へ与える様々な影響を考慮すると、慢性疾患のある方においては、マスクを着用せずに、必要に応じてご自宅で一人で運動される方が良いでしょう。特に基礎疾患のない方の場合、運動時にはマスクを着用するよりも『ソーシャルディスタンス(社会的距離)』をおくことの方が、身体にとってはより良い効果をもたらすと考えられます。

また、運動指導などを行う方々は、これらの副次的作用を考慮した上で、運動強度の設定・運動をする環境設定を行うようにしていきましょう!

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参考文献

  1. “Exercise with facemask; Are we handling a devil’s sword?” – A physiological hypothesis:Baskaran Chandrasekaran, Shifra Fernandes, Med Hypotheses, 2020
  2. Dixit S. Can moderate intensity aerobic exercise be an effective and valuable therapy in preventing and controlling the pandemic of COVID-19? Med Hypotheses. 2020;143
  3. Stevens D., Jackson B., Carberry J., McLoughlin J., Barr C., Mukherjee S. The impact of obstructive sleep apnoea on balance, gait and falls risk: a narrative review of the literature. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2020

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