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からだには5つの横隔膜が存在する?
これまでに、身体には3つの横隔膜がある説や4つある説が既にありますが、今回の記事では『横隔膜・骨盤隔膜・口腔底・胸郭出口・小脳テント』の5つの横隔膜が存在することについての論文をご紹介していきます!
「そんなに横隔膜があるのか…」と感じてしまいますね。
非常に興味深い内容ですので、ぜひ皆様にも目を通していただきたいと思い記事にまとめてみました!
- The diaphragm:横隔膜
- Pelvic diaphragm:骨盤隔膜
- Floor of the mouth:口腔底
- Thoracic outlet:胸郭出口
- Tentorium of the cerebellum:小脳テント
これらの組織は、Fasciaを介して構造的に接続しているだけではなく、神経学的にも繋がっていると述べています。
横隔膜と骨盤隔膜
呼吸や咳嗽などの時、横隔膜と骨盤隔膜は連動しています。
吸気の場合、横隔膜が収縮し下降するに伴って、骨盤隔膜も下降します。反対に、呼気の場合は横隔膜が上昇し、骨盤隔膜も上昇します。
吸気
横隔膜が下降→骨盤隔膜が下降
呼気
横隔膜が上昇→骨盤隔膜が上昇
この横隔膜と骨盤隔膜の連動性はMRIでも確認されており、①生存するため・②腹腔内圧(IAP)のコントロールにおいて重要な活動になります。
吸気の一瞬前において、骨盤隔膜の活動に合わせて腹横筋や内腹斜筋も活動することは、様々な研究で証明されています。
つまり、骨盤隔膜は骨盤内の臓器を支え、腹腔内圧の上昇に抵抗する重要な役割を果たすだけでなく、呼吸機能にも影響しているということです。
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神経系のつながり
横隔膜を支配している横隔神経は、C3-5神経根から走行しており、横隔神経細胞は頸髄腹側角に集まり周囲組織からの情報を受け取ります。
横隔神経は腕神経叢・頚神経叢の全て(C1〜Th1)に関与することが示唆されています。
このことから、横隔神経は鎖骨下神経(C5-6)と吻合している可能性があります。横隔神経の不全が生じた場合は鎖骨下筋が収縮され、第一肋骨が挙上し肋鎖領域での胸郭出口症候群(Thoracic Outlet Syndrome:TOS)を引き起こす可能性があります。
上記は”横隔膜→腕神経叢の問題”でしたが、反対に”腕神経叢の問題→横隔膜の機能不全・横隔神経の不全”を引き起こす可能性もあるということです。故に、腹腔内圧のコントロールが適切に機能せず腰痛に…といったように、症状が至る所に出てくることが考えられます。
さらに、横隔神経は迷走神経とも吻合しており、横隔膜の脚領域を支配しています。そして、求心性・遠心性神経を介して内側縦束に、求心精神系を介して三叉神経核にも接続します。
つまり、横隔膜の機能不全は頸部・口底・硬膜・眼に問題を引き起こす可能性もあるということが示唆されるということです。
(※内側縦束:中脳と、三叉神経や眼神経・舌下神経・頸椎基部(C1-C3)をつなぐ線維で構成されている。中脳・間脳から腰椎(L4)からさらに遠位に至る可能性のある重要な接続経路のこと。)
呼吸・腹腔内圧のコントロールで頸部の問題が改善されるケースは少なくないため、頸部の問題を引き起こすことは分かりますが、口・硬膜・眼の話となるとなんとも言えないですね。そこまで深追いしなくても良いのではないでしょうか。
横隔膜と口腔底
通常の呼吸では、横隔膜が収縮するよりも前に、オトガイ舌筋や舌骨舌筋などの口底筋群が先に収縮します。これらの舌筋は、呼気時に後方・吸気時に前方へ移動することで、呼吸中に舌を動かすように作用しています。
つまり、横隔膜だけではなく、口腔・舌の活動によって換気を補助しています。
呼吸中に吸気相が長いほど、これらの口内収縮領域の電気的応答が大きくなります。
呼吸器疾患を有する場合、この密接した関係にひずみが生じ、結果的に呼吸だけではなく咀嚼・嚥下にも問題が生じる可能性があるということです。
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Fasciaの繋がり
横隔膜と全身をつなぐ一連の結合組織の層として、Fasciaも関与しています。
一つのFasciaは横筋膜であり、胸内筋膜の延長線上を覆い横隔膜に関連しています。これは、深層・中層の頸筋膜を起点とし、腹横筋・腹直筋白線を覆い、恥骨部および鼠蹊部に達します。
もう一つの重要なFasciaはThoracolumbar Fascia(TLF:胸腰筋膜)であり、仙骨から胸郭領域を経由し頸部領域に至るまで後方に発達しています。TLFには、広背筋・僧帽筋・大臀筋・外斜筋筋や、寛骨と仙骨(仙骨は骨盤底のシステムに属している)をつなぐ靭帯などが関与しています。
まとめ
横隔膜は身体にとって重要な役割をしているということは理解していましたが、これだけ様々な視点から考えることは、さらに臨床的な視点を広げることにも役立ちますね。
徒手的なアプローチやエクササイズ・トレーニング指導の際にも、骨盤底・口腔底の関与を忘れずに呼吸や腹腔内圧のコントロールを行うことができれば、より効果的なものになるのではないでしょうか。
論文の後半では、5つの横隔膜を考慮した徒手のアプローチ方法が紹介されています。大変興味深い内容なのですが、私自身の考えと一致しないため記事内では記載していません。
否定している訳ではありませんので、詳細が気になる方は本文をご参照いただければと思います。
結論では、筆者はこのように述べております。
The diaphragm muscle should not be seen as a segment but as part of a body system.
横隔膜を1つのセグメントとして部分的に介入するべきではなく、身体システム全体を診て介入するべきだと述べています。
本当にその通りだと考えています。横隔膜だけに限った話ではないと思います。「この筋肉が硬いから」「姿勢が悪いから」「腹筋が弱いから」といったように、全体を診ているようでそうでないことを相手に伝えている方は意外といるかもしれません。
逆に全体を診すぎてしまい、局所を診ていないことにならないよう気をつけていきたいところですね!
こちらは、同じ著者による横隔膜の徒手による機能評価をまとめた記事になりますので、併せてご参照ください!
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