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ACLに対する評価
ACLに対するスペシャルテストは、数多く存在しています。
そのため、どのテストを選択して行うかは非常に重要なことだと感じています。
病院勤務ではない方々は、膝関節の不安定性を訴える方に対してスペシャルテストを用いて評価し、状況によっては病院への受診を進めていくことも必要だと感じます。
スペシャルテストやその他の身体所見以外に、レントゲンやMRIなどの所見を含め多角的に評価を受けていただくことが、今目の前にしている方のためになることと思います。
これらの考えを含めて今回は、ACL損傷の疑いがある方に対して行うべきスペシャルテストをご紹介していきます。
感度・特異度・尤度比
その数多くのテストの中から、感度(Sensitivity)・特異度(Specificity)・陽性尤度比(LR+)・陰性尤度比(LR-)の要素を考慮していきます。
上記の4項目で優れている、『Lever Sign』・『Lachman Test』・『Anterior Drawer Test』・『Pivot Shift Test』の4つのテストをご紹介していきます!
Test | Sensitivity | Specificity | LR+ | LR- |
---|---|---|---|---|
Lever Sign | 85.71 | 91.11 | 7.71 | 0.16 |
Lachman Test | 91.42 | 95.55 | 20.57 | 0.09 |
Anterior Drawer Test | 80.00 | 93.33 | 12.00 | 0.21 |
Pivot Shift Test | 51.42 | 100 | Inf | 0.49 |
これらのテストを順にご紹介していきます!
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Lever Sign
まずは、簡単に行えるLever Sign(レバーサイン)をご紹介していきます。
膝関節を軽度屈曲位から開始できるため、急性期で痛みがある状態だとしても比較的行えるテストになります。
- 背臥位の状態で、膝関節は伸展させます
- かかとは検査台に付けた状態で、脛骨近位1/3後面の下に拳を置きます
- 大腿遠位1/3の部分を背側に押します
- かかとが検査台から浮かず、膝が伸展しない場合に陽性となります
ACLが断裂していない場合、足にかかる下向きの重力に対抗し、かかとが検査台から浮き上がり、膝関節は伸展します。
ACLが断裂している場合、重力に対抗できず、脛骨が大腿骨上で前方にスライドするため、かかとは検査台に留まります。
Lever Signでは、ACL線維の中でもPLBが対象となるテストです。
Lachman Test
次に行うのは、Lachman Testになります。
このテストでは、膝関節は20-30度の軽度屈曲位で行われるため、痛みがあったとしても容易に行える評価となります。
- 背臥位で、膝関節を20-30度屈曲させます
- 検査者は片方の手を下腿近位の後方、もう片方の手を大腿遠位の前方に置きます
- 脛骨を前方に引っ張り出します
- 脛骨の前方変位が大きい場合、End Feelがやわらかく何も感じない場合に陽性となります
脛骨の前方変位の大きさは、左右差を比較して判断しましょう。
Lever Signと同様、膝関節屈曲角度が少ないため、ACLの線維の中でもPLBが主に対象となるテストです。
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Anterior Drawer Test
次に行うのは、よく知られているAnterior Drawer Test(ADT)になります。
膝関節は屈曲位で行われるため、疼痛によりその肢位にすることができない可能性があります。
- 背臥位にて、膝関節を90度屈曲させます
- 検査者は、評価側のつま先の上に座り固定します
- 脛骨大腿関節裂隙の直下の下腿近位を把持します
- 下腿を前方に引き出します
- 過度な脛骨前方への引き出し、End Feelが欠如している場合に陽性となります
脛骨の前方変位の大きさは、左右差を比較して判断しましょう。
膝関節は屈曲位で行われるので、ACLの線維の中でもAMBを対象としているテストです。
Pivot Shift Test
このテストの目的は、膝の前外側回旋不安定性を評価することです。
疼痛を強く誘発したり、靭帯損傷の重症度を高めてしまう危険性もあるため、注意深く行なっていきましょう。
- 背臥位にて、膝関節伸展位に保持します
- 片方の手で踵骨、もう一方の手で脛骨近位外側を把持します
- 膝関節を屈曲させるときに、脛骨を内旋させながら、外反と軸圧を加えます
- 膝関節が30-40度屈曲するに従い、大腿骨が相対的に外旋して脛骨が亜脱臼すると陽性になります
特異度が100と高いため、偽陽性が少なく、陽性であればACL損傷の疑いが非常に高いと考えられます。
ただし、一つのテストだけで決めつけるのではなく、多角的に評価していくことが必要と考えられます。
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まとめ
特に急性期の炎症症状で、疼痛が強い場合は、テストが陽性だとしても鵜呑みにはしないようにしましょう。
また、テストだけではなく、レントゲンやMRIの所見も含めて、確定診断をしていく方が良いと考えられます。
4つのテストはどの順番で行っても良いですが、なるべく痛みの少ない肢位を選択すると良いでしょう。
膝関節は約25度屈曲位がLoose-Packed-Position(最大緩みの肢位)であるため、Lachman Testが最も取り組みやすいと考えられます!
ACLの機能解剖と損傷のメカニズムに関してはこちらの記事をご参照ください。
参考文献
- Flynn TW, Cleland JA, Whitman JM. Users’ guide to the musculoskeletal examination: fundamentals for the evidence-based clinician. United States: Evidence in Motion; 2008.
- Baxter R. Pocket guide to musculoskeletal assessment, second edition. Elsevier Science 2003.
コメント
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