歩行時の痛みを評価する上で考えるべき3つのポイント

エクササイズ資料

エクササイズの方法・解説・代償動作・難易度調整について動画と解説資料にまとめた資料になります。

エクササイズに対する知識を深め、臨床で実践・応用することのできる、これまでに無い全く新しいエクササイズ解説資料になっています。

詳細はこちら【エクササイズ・コレクションのご案内】をご参照ください。

歩行時痛を評価する上で考慮するべきポイント3つの記事トップ画像 評価方法

スポンサードサーチ

歩行の評価

歩くときに、からだのどこかに痛みを感じてしまうという方は、臨床において非常に多く見受けられます。

特に、荷重されている足部・足関節、膝関節において痛みを感じてしまうことが多いですが、歩行を評価することに苦手意識を感じているセラピスト・トレーナーの方は多いのではないでしょうか。

歩く女性の足裏

それはおそらく、『歩行の時に診るべきポイントを絞れていないこと』であったり、『どのように診たら良いのか分からない』ということがあるからだと考えております。

歩行を評価する上で重要なポイントは3つあります。

①痛みの原因組織を鑑別する
②痛みを引き起こすメカニカルストレスを評価する
③メカニカルストレスを引き起こす動作機能不全を評価する

今回の記事では、歩行の評価において考慮するべきポイントをこの3つに絞って詳しく解説していきます。

痛みの原因組織を鑑別する

まず歩行を評価する前に大切なことは、『痛みの原因組織を鑑別すること』にあります。

これが評価できていない場合、後に続く評価ポイントを追えなくなってしまいます。

これに関して詳しく解説してしまうと、本題とは外れた内容になってしまうため、ここでは簡単に解説いたします。

女性の膝前面を押さえるセラピスト

痛みを鑑別するために必要な情報としては、痛みの場所、痛みの質、痛みの生じる関節位置や動きになります。これらを問診や触診、自動・他動運動、姿勢・動作の評価を行うことで、痛みを生じている組織を鑑別していきます。イメージとしては、痛みの場所から考えられる組織を除外していくようにすると良いかと思います。

痛みの質を把握することで、関節性の痛みなのか、筋性の痛みなのか、神経性の痛みなのかをある程度予測することが可能となります。ただ、あくまでも推測に過ぎないので、その他の圧痛所見や動きを評価していく必要があります。

・痛みの場所
・痛みの質
・痛みの生じる位置と動き

膝関節内側部に痛みを有する方を例にしてみます。
痛みの質について聞いた場合、表層に痛みがあるのであれば筋性や関節性・神経性の痛みが考えられますが、深部に痛みがある場合ですと関節性の痛みの可能性が高くなります。その上で、痛みが再現される動きを評価していきますが、外反ストレスで痛みが生じる場合は内側部の軟部組織の伸張性の疼痛が考えられますし、内反ストレスで痛みが生じる場合は関節性の疼痛が考えられます。その後で、圧痛所見を確認し、鵞足部や内側広筋で筋性の痛みを除外したり、関節裂隙を評価して半月板などを除外したりします。さらに、スペシャルテストを用いて評価することで原因組織を鑑別することが可能となります。ここでは100%の確証を持つ必要はなく、ある程度の見立てをつけれれば良いのではないかと考えております。

スポンサードサーチ

痛みを引き起こすメカニカルストレスを評価する

次に、『組織に対して痛みを引き起こすメカニカルストレスを評価する』必要があります。

これを評価することで、“なぜ痛みが生じているのか?”が分かりますので、その後の治療・介入や病状の説明の際に適切な対応を行うことができます。

痛みの原因組織を鑑別した際に姿勢や動作における再現痛があった場合、それが歩行のどのタイミングで生じているのかが重要です。

川辺をウォーキングをする男性

大きく分けるとしたら、前に脚をついて体重をかける瞬間(ヒールコンタクト〜ミッドスタンス)と、脚を後ろへ蹴り出していく瞬間(ターミナルスタンス〜トゥーオフ)になりますが、どちらのタイミングで痛みが生じるのかを問診することが大切になります。

・前に脚をついて体重をかけるとき
・脚を後ろへ蹴り出していくとき

先程と同様、膝内側部の痛みを例にします。
痛みの原因組織が内側半月板であったとしますが、この場合ですと荷重での膝内反ストレスが加わることで痛みが生じている可能性が高いです。

これが『歩行のどのタイミングで痛みが生じているのか?』になりますが、前に脚をついて体重をかけるときなのか、あるいは脚を後ろへ蹴り出していくときなのか、患者・クライアントの主観的な感覚とセラピストの客観的評価を擦り合わせる必要があります。

ただこの段階では、“膝内反ストレスがかかるから痛みが生じている”ということまで分かれば良いとします。次の段階で、なぜ内反ストレスが生じてしまうのかを考えていきます。

メカニカルストレスを引き起こす動作機能不全を評価する

痛みが生じている組織、痛みが生じるメカニカルストレスが把握できたら、最後は『メカニカルストレスを引き起こしてしまう動作の機能不全が何かを評価する』ことが必要になります。

膝内反ストレスにより痛いのであれば、「膝が内反しないように止めれば良いんでしょ?」「広筋群使って膝を安定させれば良いんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、それだけでは不十分です。

なぜこの評価が必要かと言いますと、『膝に問題が生じている原因は、膝に無い可能性が非常に高い』からです。これは膝に限った話ではなく、ほぼ全ての部位に当てはまるものだと考えられます。

つまり、ある部位にストレスを加えている原因となる“他部位の機能不全”を見つける必要があります。

疑問・質問

これまでと同様の例で解説します。
内側半月板由来の膝内側部痛は膝内反ストレスによるものだとしておりますが、この内反ストレスが生じてしまう原因は大きく分けて2つ、足部の問題と骨盤帯・股関節の問題があると考えられます。足部の問題として、距骨下関節が過回外位に置かれている場合だと、足部外側での荷重が増大するために膝は外方へと移動しやすい(いわゆる膝内反)状況となります。骨盤・股関節の問題として、骨盤帯が外方へ移動・股関節内転位で荷重される場合は、荷重のラインが膝内側部を通過するため、膝内側部へのストレスが増加する(相対的な膝内反)こととなります。

かなりざっくりとした解説にはなりますが、上記の2つのケースを考えると膝へ介入するのか、あるいは、足部や骨盤帯・股関節へ介入するのかは一目瞭然だと思います。膝へ介入したとしても他部位の機能不全が改善されていなければ、その方が歩けば症状は惹起されることが想定されます。せっかく介入して痛みが軽減・改善されたとしても、それを維持できる期間は一時的なものでしかありません。

このことから、メカニカルストレスを引き起こす動作機能不全を探すことは非常に重要であります。セラピストの専門性といっても過言ではないでしょう。

・メカニカルストレスを引き起こす動作機能不全を探す
この内容に関してもう少し深く掘り下げた記事を過去に過去に掲載していますので、ご興味のある方はぜひご参照ください。

スポンサードサーチ

まとめ

歩行を診る上でのポイントを掴めたでしょうか。

最初はなんとなくでも構いませんので、このように考える癖をつけていくのが良いかと思います。

100%正しい評価をすることはなかなか難しいので、とにかく数多く考えることで自分の中の引き出しを増やすことができれば、思考が止まることなくあらゆる仮説を立てることができます。その的中率を高めていけるよう、私自身も日々研鑽しております。

①痛みの原因組織を鑑別する
②痛みを引き起こすメカニカルストレスを評価する
③メカニカルストレスを引き起こす動作機能不全を評価する

歩行を診る上で大切なことを解説している記事は他にもありますので、ぜひこちらの記事も併せて目を通していただけますと幸いです。

歩行における足部・膝関節・股関節・骨盤・胸郭の運動連鎖まとめ:距骨下関節が過回外する原因
足部・足関節・膝関節・股関節・骨盤・胸郭の関節運動連鎖を考察し、距骨下関節が過回外してしまう原因を紐解いています。この記事を読んでいただくことで、特に歩行における運動連鎖に着目しているため、歩行時の見るべきポイントを絞ることができます。身体を1つのシステムとして捉える必要性もお分かりいただけます。
歩行の全体像を把握するために視るべきポイント
歩行分析を行う際に視るべきポイントを、胸郭・骨盤・足部に分けて解説しています。歩きを見ることに苦手意識をお持ちの方も多いのですが、まずはなんとなく見ることが大切です。局所を見るよりも3つのポイントに絞って、全体をボヤッと見ることで、歩行の全体像を把握することにつながります。
歩行における上行性運動連鎖と下行性運動連鎖の鑑別評価の方法
歩行観察・分析において、上行性運動連鎖と下行性運動連鎖のどちらで考えて介入したよいか分からないケースは多くあります。本記事では、骨盤帯・股関節と足部の関係から、上行性と下行性の運動連鎖を鑑別するための評価ポイントを解説していきます。着目するポイントは足部の向きと骨盤の後方回旋です。

コメント